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【Cycle*2023 UAEツアー:レビュー】レムコ・エヴェネプールが世界王者の貫禄! 今季最大目標のジロ制覇へ、UAEツアーで確かな第一歩となる個人総合優勝 スプリンターナンバーワンはメルリールに
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介UAEチームエミレーツのエース、アダム・イェーツ
最後の最後にきて、ようやくこの男の強さが証明された。今回のホストであるUAEチームエミレーツの総合エースを託されていたアダム・イェーツが、アシストたちのペースメイクを受けて残り6kmでアタックすると、ついていけたのはエヴェネプールとセップ・クス(ユンボ・ヴィスマ)だけ。やがてクスも遅れると、エヴェネプールとの一騎打ちになった。
そして残り3km、最も勾配が厳しくなる区間で再度のアタックを決め、独走に持ち込んだ。エヴェネプールがリーダージャージのキープにシフトしたこともあり、クイーンステージでの栄誉はイェーツに、そしてUAEチームエミレーツにもたらされた。
「さすがに1分以上の総合タイム差を逆転することは難しいと分かっていた。だから、ステージ優勝にフォーカスした。UAEチームエミレーツは常に私を信頼してくれていたし、ホームレースで勝利に導いてくれたことに心から感謝したい」(アダム・イェーツ)
最終日をステージ2位でまとめたエヴェネプールは、個人でのステージ勝利こそなかったものの、序盤戦からの貯金を守り続けてUAEツアーを初制覇。終わってみれば、個人総合2位のプラップとは59秒差がついた。
そのプラップも殊勲の走り。第1ステージをトップグループで終え、翌日にはリーダージャージにも袖を通した。以降は2番手の位置を走り続ける形になったが、ジュベル・ハフィートの上りもうまくまとめて順位をキープした。
「UCIワールドツアーの表彰台にはとても興奮しているよ。温かいオーストラリアでオフトレーニングを積んだことが好影響をもたらしたのだと思う」(ルーク・プラップ)
豊富なタレントを有するイネオス・グレナディアーズにまたひとり、エースクラスのライダーが台頭した。「上りも平坦も得意だから、どんな役目も果たせると思う」と胸を張った現役オーストラリア王者は、エヴェネプールと同じ2000年生まれ。そう遠くない将来、この2人がロードレース界を引っ張っていることだろう。
「ツール・ド・フランスと並ぶ最重要レース」に位置付けていたUAEチームエミレーツは、意地を見せたイェーツが個人総合3位。昨年まで2連覇していたタデイ・ポガチャルに匹敵する強さとはいかずも、モラノのスプリントも含めて、及第点の1週間だったのではないだろうか。
シーズン序盤恒例の中東レースは、これでいったん一区切り。いよいよヨーロッパ各国をメインとしたレースシーンへと移っていく。暖かな土地での脚試しを終えた選手たちは、一様に大きな目標ヘ向かってギアをもう一段階、二段階とアップさせていく。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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