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サイクル ロードレース コラム 2009年7月23日

【ツール・ド・フランス2009】第17ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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伝説になりたい。スタート前にこんな風に語っていたフランク・シュレク(チーム サクソバンク)は、第17ステージのゴール後には念願通り「伝説の人」となっていた。ツール2度目の区間優勝を手に入れただけでなく、総合では8位から3位へとジャンプアップ。弟アンディも総合2位へと昇格すると、暫定ながら兄弟表彰台を実現させた。パリでの最終表彰台でなく、たとえ大会期間中の暫定成績であっても、兄弟が揃って上位3位に滑り込むのはツール史上初めてのこと。古くはペリシエ兄弟、ボベ兄弟、コッピ兄弟、現役ではフェイユー兄弟やモーリ兄弟、エフィムキン兄弟など数々の兄弟レーサーが存在してきたが、シュレク兄弟は間違いなく、105年にわたるツール・ド・フランスの歴史の1ページを刻んだのだ。

女王ステージと呼ばれる2009年ツール最難関ステージは、4賞ジャージの選手がそれぞれのリードを広げた日でもあった。スタート直後に逃げ始めた20人の先頭集団の中には、またしてもフランコ・ペッリツォッティの姿があった。上下ジャージにバイク、さらにサングラスまで全身赤玉でキメてきた昨ジロ3位は、序盤3つの峠で37ポイントもの荒稼ぎ。2位との差を78ポイントに開き、パリでの総合山岳賞に大きく一歩近づいた。

……ところでジロでのペッリツォッティの総合順位は、近いうちに2位に昇格するかもしれない。この日のステージ中に、ジロ2位ダニーロ・ディルーカ(LPR ブレイクス・ファルネーゼ ヴィーニ)のEPO陽性の一報が飛び込んできたからだ。ちなみにそのジロで総合優勝したデニス・メンショフ(ラボバンク)は、今ツールは序盤で早くも優勝争いから放りだされている。しかもこの日は、力を見せようとエスケープに乗ったものの、途中で2度の落車。左右の太もものジャージが破けるほどの痛々しい姿で、グルペットに乗ってゴール地へとたどりついた。

キング・オブ・スプリンターの証、マイヨ・ヴェールを身にまとったトル・フースホフト(サーヴェロ テストチーム)は、まるで山岳王のような活躍を見せた。この日2番目の峠でアタックを打つと、その後、長時間に渡ってひとり先頭で山を越えていく。ステージ途中に2度登場した中間ポイントは、もちろんスプリントなしの1位通過。6P×2=12ポイントを懐に入れ、マーク・カベンディッシュ(チーム コロンビア・ハイ ロード)を30ポイント差に突き放した。

新人賞首位アンディ・シュレク擁するチーム サクソバンクが強烈な隊列を組み始めたのは、最初の中間ポイントのある平坦なゾーンだった。その後の2級アラシュ峠で集団を分断すると、続く2番目の中間ポイントゾーンではプロトンをさらに小さく細切れにしていく。そして最後から2番目の峠、1級ロム峠の入り口で本命たちによる戦いが勃発した!

まずはフランクがアタックし、続いてアンディが仕掛け、最後にもう1度アンディが加速。するとシュレク兄弟とアンドレアス・クレーデン&アルベルト・コンタドールのアスタナ勢2人が残された。最終峠コロンビエール峠の登りでは、マイヨ・ジョーヌ姿のコンタドールが飛び出す番だった。ただしアンドラ・アルカリスやスイス・ヴェルビエでの山頂ゴール時のような、全てを置き去りにしてしまうような走りは出来ない。兄弟にはすぐに追いつかれて、つまりサクソバンク2+アスタナ1。コンタドールは数的不利に陥ってしまった。

「突き放せない」と感じたコンタドールは、すぐにシュレク兄弟との共存の道を選んだ。しかも表彰台を狙う兄弟との利益は一致していたようだ。兄弟は2位・3位の座に居座るランス・アームストロング(アスタナ)とブラドレー・ウイギンズ(ガーミン・スリップストリーム)を引きずり落としたい。一方のコンタドールは、翌日の個人タイムトライアルで危険人物となりそうなアームストロングとウイギンズから、できる限りのタイム差を奪いたい——。

兄弟は必死にスピードを上げ続けた。3大ツール勝者は兄弟に話しかけ、背中を押し、共に高速でペダルをこぎ続け、うまく状況をコントロールした。そしてフランク・シュレクの区間優勝に兄弟が喜び合い、コンタドールは冷静に区間2位でステージ終了。兄弟は喜びの記者会見に揃って参加し、コンタドールは総合2位以下とのタイム差は前日までの1分37秒から2分26秒へと開くことに成功した。しかもTTで脅威となりうるアームストロング、クレーデン、ウイギンズからは、軒並み3分55秒以上のリードを奪っている。


■フランク・シュレク(サクソバンク)
ステージ優勝、総合3位

ボクらには失うものなんて何もなかった。弟のアンディは総合5位、ボクは8位だったから、アタックするしかなかったんだ。うまく行くか、全てを失うか。そんな覚悟でスタートした。そしてうまく行ったのさ!特に最終3kmは、アンディがボクの区間優勝のために大いに尽くしてくれた。この次は、ボクが彼のために尽くす番だよ。

少しリスキーな戦術だったかもしれない。でも時には、勝ちを手に入れるために危険を冒さなきゃならないのさ。ボクらは今日の勝利に値する走りを見せたと思う。


■アンディ・シュレク(サクソバンク)
総合2位

今朝はナーバスになっていた。このステージがボクにとってどんなに大切なものか分かっていたからね。表彰台に上がりたいなら、今日、タイム差を稼がなきゃならなかった。兄のフランクは100%ボクのために働くと宣言して、その言葉通りの素晴らしい仕事を成し遂げてくれた。兄の調子がいいことは分かっていたんだ。だからボクは加速して、それから兄が追いついてくるのを少し待ったよ。その後は兄弟一緒に走った。作戦成功さ。

コンタドールがアタックしたとき、すぐに張り付いたりはせずに、ペースを保って追いついた。ヴェルビエやアルカリスでは、彼のアタックに反応できなかった。でも今日のボクらは追いつけた。今日のステージに限っては、ボクらの方が強かったんじゃないかな。だって最後の40kmはずっと前を引いていたからね。コンタドールにとっては簡単なステージじゃなかったはずだ。

ボクら兄弟は現在総合2位と3位。明日のタイムトライアルは、ボクらの得意種目ではないけれど……。でも怖くはない。明日失ったタイムは、モン・ヴァントゥーで取り返すさ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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