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サイクル ロードレース コラム 2011年5月9日

【ジロ・デ・イタリア2011】第2ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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どこかで見たことがあるような……、まさにデジャヴな表彰台ではなかろうか。大会最初のスプリントゴールを制したステージ勝者は、アレッサンドロ・ペタッキ。そしてマリア・ローザには、素直に笑えないマーク・カヴェンディッシュ。そう、2009年の第2ステージで、同じ光景をわれわれは既に目撃している。

暑い1日だった。ヨーロッパでは4月序盤から季節はずれの高温が続いているが、この日はまるで夏のようだった。しかも第2ステージは今ジロ最長距離の244kmを走ったおかげで、プロトンは5時間45分もの長期間に渡って灼熱の太陽にさらされた。「ちょっと日焼けしちゃったよ」とアルベルト・コンタドールが語ったほど!しかし、こんな暑さにも負けず、距離にも負けず、セバスティアン・ラングがスタート直後にたった1人飛び出した。

孤独な逃げは、以降、なんと219kmにも渡って続くことになる。後方集団はのんびりを決め込み、タイム差は最大20分近くまで開いた。おかげで2011年大会最初の峠をラングは悠々と先頭を通過することができ、自動的に大会最初のマリア・ヴェルデを手に入れた。2008年ツールでマイヨ・ア・ポワ・ルージュを3日間着用した経験を持つラングにとっては、2色目の山岳賞ジャージとなった。

ひとまず目標を達成したラングが、静かに回収されたのはゴール前25km付近。すでに隊列を組み、スピードコントロールに着手していたスプリンターチームたちに、主導権は委ねられるはずだった。が、吸収と同時に8人がカウンターアタック。グランツールの通常ステージ初日に、ちょっとばかり熱い追走劇が繰り広げられることになった。それでも1年前に大会最初のスプリントゴールを制したタイラー・ファラー擁するガーミン・サーヴェロや、もちろんカヴェンディッシュ率いるHTC・ハイロードが、執拗な追跡を見せる。そして先頭集団に落車のアクシデントが発生したことも手伝ってか、追走劇はラスト8kmで終わりを告げた。あとはグランツールの伝統に則って、大集団ゴールスプリントへと向かって行くだけだった。

必死にもがく集団の中から、真っ先に頭ひとつ抜け出したのはHTC・ハイロードが誇る優秀な発射台、マーク・レンショーだ。カヴェンディッシュは至極快適に、前から2番目の椅子に座っていた。あとはタイミングよく飛び出すだけ……でカヴには十分なはずだった。ところがカヴェンディッシュの後輪にぴったりと入っていたペタッキが、先制攻撃を仕掛けてしまったのだ!

2009年大会の第2ステージを制したとき、ペタッキはこんな風に語っていた。「何日も前から、どうやったらカヴェンディッシュを倒せるのか考えてきた。そして分かった。ボクに唯一の勝機があるとしたら、ロングスプリントを打つことしかない」と。あの時と作戦は同じだった。つまりカヴェンディッシュが本格スプリントを切る前に、ラスト200mよりも遠くからスプリントを切る事。作戦を忠実に実行した2年前は、300mのロングスプリントでカヴを驚かせた。今年はもっと短距離決戦で、ラスト225mからの先制逃げ切りだ。しかも、すぐに追いかけたカヴェンディッシュを、まずはフェンス際にゆるやかに追いやり、さらには右にオープンスペースを求めたカヴと一緒に右側に流れ、ライバルの動きを完全に封じ込めた。……そのせいでフィニッシュラインを越えた直後のカヴェンディッシュは、「進路妨害」を叫んだ。ただしペタッキの証言では、「フェンス際に完全に閉じ込めようと思えば出来たがやらなかった」し、「フィニッシュのために右側に動いたけれど彼の動きにはまるで気がつかなかった」とのこと。レース審判も違反なしとの判断を下し、ペタッキ1位、カヴェンディッシュ2位が確定した。

37歳の大ベテラン、ペタッキは通算22回目のジロ区間優勝を記録した。ただし、本人にとっては27回目の勝利。実は喘息治療薬サルブタモールの過剰摂取を理由に、2007年大会に上げた5勝は剥奪されている。しかしその5回とも、ゴールラインを先頭で駆け抜けたのは間違いのない事実であり、ペタッキは「剥奪されても、あれはボクの5勝なんだ」と主張する。またグランツールにおける通算区間勝利は48となった(剥奪の5勝は含まず)。

一方、25歳にしてすでに3大ツールで23勝も上げている若きスプリンターは、2位のボーナスタイム12秒を手に入れ、チームメートのマルコ・ピノッティからマリア・ローザを引き継いだ。ちなみに「現役最速スプリンター」がグランツール最初の大集団スプリントを勝ち取るのは極めて稀である。通算8回のグランツール参戦で、しょっぱなから勝てたのは2009年ツールだけ。つまりこの日勝てなかったのはそれほど一大事でもなく、2010年ブエルタ2日目も今回のようにむっすりしたままリーダージャージ表彰式に臨んでいる。今季いまだに2勝しか上げられていないカヴの歯車が、ぴったりかみ合うのは果たしていつなのか。2011年ジロのスプリントチャンスは、あと4回しか残っていない。


●アレッサンドロ・ペタッキ(ランプレ・ISD)
ステージ優勝

チームメートはステージの間中、ボクのために大いに仕事をしてくれた。それに報いることが出来て本当に嬉しい。自分はスプリントで何も間違ったことはしていないと信じている。でももしも、ボクが間違ったことをしていたんだとしたら、それに対して謝罪したい。スプリントフィニッシュのために一方に動いたけれど、彼が動いたことには全く気がつかなかった。唯一、彼がフェンス側にスプリントを切ったことには気がついた。でもボクはフェンスに押し付けてはいない。彼を壁際に完全に封じ込めてしまうことだってできたんだ。でも、ボクはそんな手は使わなかったよ。

彼の反応は至極当然だと思う。だって負けたんだから。でもボクだったら、あんな行動にはでずに、マリア・ローザをエンジョイしたと思うんだけどな。彼はまだ若いし、まだまだ色々なことを学び取る必要があるんだろうね。カヴェンディッシュはこの先もたくさんのステージを勝つ。このジロでもおそらく勝つだろう。


●マーク・カヴェンディッシュ(HTC・ハイロード)
マリア・ローザ

ペタッキの違反を訴えたことに対しては、申し訳ないことをしたし、謝罪したい。でもボクの反応は、ああいった状況では仕方のなかったことなんだ。ペタッキは素晴らしい人物だし、素晴らしいチャンピオンだ。彼には敬意を払っている。でもラスト200mで、彼は3度も方向転換をした。通常ならあんな風に動いた選手を、審判は失格にするはずなんだ。ボクはほんの少しスプリントのラインを変えただけでも、いつだって失格にされてきたよ……。ボクに対する先入観のせいだろうか?成功に対する代償なのかもしれないね。人間と言うのは、頂点へと上り詰めた人物を、王座から引きずり下ろそうとするものだから。

チームは素晴らしいことを成し遂げた。もう1日チーム内にマリア・ローザを留めおくことが出来たなんて本当にステキだし、明日のステージをピンクジャージで走れるのは信じられないような気分だよ。出来ればあと2日間は守りたい。明日もゴールスプリントに持ち込むことは可能だと思う。もちろん、それほど簡単には行かないだろう。でも再戦の可能性はある。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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