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サイクル ロードレース コラム 2011年5月25日

【ジロ・デ・イタリア2011】第16ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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第9ステージのエトナで早くもライバルたちの息の根を止め、ドロミテ3連戦でライバルたちから十分すぎるほどのリードを奪ったというのに、アルベルト・コンタドールはさらなる栄光を貪欲に追い求めた。12.9kmの山道全力疾走で一等賞、マリア・ローザを着ての初勝利。しかも「今日ようやく、ボクのベストを出せたよ」と語ったということは……、あと5日間、どれほどの支配者ぶりを見せ付けるつもりなのだろう!?どうしても勝ちたかったのは、同時に、悲しいモチベーションがあったからでもあった。休養日に飛び込んできたモビスター所属サビエル・トンドの訃報——。同じスペイン出身であり、友人でもあったサイクリストの突然の事故死に、人間コンタドールは深く傷つき、王者コンタドールは勝利を捧げたいと願った。ステージ優勝表彰式でも、マリア・ローザ表彰式でも、天に指を突き上げた。「自転車レースを誰よりも愛している奴だったよ」

むしろステージ序盤は、ライバルたちが攻撃的な走りを見せていた(もはやライバルよりも「総合表彰台の2番目と3番目の位置を争う選手たち」と表現するほうが正確なのかもしれないが、コンタドールが「彼らは総合優勝を絶対に諦めていないはずだよ」と語り、ヴィンチェンツォ・ニバリも「2位争いじゃなく総合優勝のために走っている」と宣言している以上、「ライバル」という言葉を使うことにしよう)。

総合3位ニバリは、スタート直後の下りゾーンを利用して素晴らしい加速を切ると、中間計測ポイントで7分44秒を記録。全165出走者の中で最高タイムを叩き出した。ニバリの3分後にスタートを切ったミケーレ・スカルポーニも、上から数えて9番目の9秒遅れと奮闘した。一方のコンタドールはニバリから13秒遅れ。プレスルームに詰めていたジャーナリストたちが一瞬ざわついた。……ただしこの5.35km地点までがパワーのあるルーラー向け——ジュニア・ユース時代のニバリは世界選手権TTで3位に入っている——の軽い起伏だったとしたら、ここからが本格派ヒルクライマーが威力を発揮できる場所だった。勾配は一気に2.9%から10.3%へと跳ね上がり、最大14%の難関ゾーンが待ち受けていた!

あとは「序盤にできるだけスピードアップしたあとは、一定のテンポを保って走ったんだ」と語るコンタドールの独擅場だった。速いリズムでくるくるとペダルを回し、軽やかに山道を駆け上がるマリア・ローザとは対照的に、ニバリやスカルポーニに序盤の勢いはもはや無かった。なにしろ中間ポイントからゴールまでの約7kmだけのタイムを比較すると、コンタドールが当然のように全プロトン中のトップタイムを記録し、「すでに脚にエネルギーが残っていなかった」スカルポーニを42秒、ニバリを47秒も引き離している。

……それでもコンタドール以外の164出走者の中では、やはりニバリが最高のゴールタイムをた叩き出しているのだが!とにかくコンタドールが強すぎたのだ。全出走者で唯一の28分台(28分55秒)で駆け上がり、最終的には区間2位のニバリから34秒、区間3位のスカルポーニから38秒もの大量リードを奪った。総合差はますます広がり4分58秒……。ちなみにグランツール過去5勝のうち、2位以下に最もタイム差をつけたのは2009年ツール。2位アンディ・シュレクとの最終的な差は4分11秒だった。

「マリア・ローザ」争いでは今日は敗者となったニバリとスカルポーニだが、しかし、「表彰台」争いに関しては勝者と言えるかもしれない。ドロミテ3連戦で急速に追い上げてきた総合4位ジョン・ガドレは、2人から50秒前後の遅れをとった。第15ステージの大逃げで総合5位に飛び込んできたミケルニエベ・イトゥラルデは「どうせ山岳TTで遅れるから」と言っていた通り、総合6位に後退。代わりに区間4位の好走でホセ・ルハノが総合5位にジャンプアップしてきたが、表彰台までは3分半以上の距離がある。昨年プラン・デ・コロネスの山岳TTを制し、この日も素晴らしい走りを見せたステファノ・ガルゼッリは、とっくの昔に総合争いからサヨナラしている。つまりスカルポーニとニバリは、後ろを気にせずに思う存分、総合表彰台の2番目と3番目の位置を争うことができそうだ。

また「ステージ中盤の勾配がひどくきつかった……」と語った別府史之は、33分19秒で山道を上り終えた。ただでさえ長く辛い第15ステージは、突然訪れた不調のせいでより一層苦しんだが、体調は徐々に戻りつつある。「昨日の休養日でしっかり休み、それから今夜もゆっくりと休めるから、残りステージはこれで大丈夫」と語る別府は、第17・18ステージで再び自分のチャンスを試すつもりだ。


●アルベルト・コンタドール(サクソバンク・サンガード)
区間勝利、マリア・ローザ

上へ向けて徐々にテンポを上げていくよう心がけた。最初の1kmは非常にきつかったが、その後はリズムをつかんで、全力を尽くした。でも最初のタイムチェックポイントでニバリから13秒遅れていると聞いたから、さらにリズムを上げた。今日は信じられないような走りができた。ようやく今日、ボクのベストが出せたと思っている。マリア・ローザを着て区間を勝てるというのは、ツールやブエルタでリーダージャージを着て勝ったときもそうだったけれど、本当にスゴイ出来事なんだ。自転車選手にとってはこれ以上の名誉はないほどだよ。

この先も毎日のように峠が登場するから、アタックするチャンスもあれば、アタックされるチャンスもあるだろう。でも下りアタックに関してはそれほど心配していないんだ。もしニバリがアタックしても、ボクは上手く対応できるだろう。タイム差は十分に続けることができたし、この差をこの先も守っていかなきゃならない。ライバルたちはまだ優勝を信じているし、タイムを取り戻したいと願っているはずなんだ。戦いはまだまだ続く。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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