【ツールに恋して～珠玉のストーリー21選～】生死を彷徨う大怪我、アルベルト・コンタドールの数奇な自転車人生

写真：ランス・アームストロング

「幾多の経験がボクを選手として成長させ、ツール・ド・フランスに勝ちたいという夢を持つようになった」

2007年の初優勝はそんな背景があった。さらに言うならば、前人未踏の7連覇を達成した米国のランス・アームストロング（後にドーピングで全成績抹消）は、すでに一度目の引退をしていて、コンタドールが総合優勝を確実にした最後のタイムトライアルのときに、後ろにつけたサポートカーの中にいた。2年後にはエースの座をめぐって衝突することになるとは、だれもが予想できなかった。

コンタドールは2008年、所属するアスタナチームが過去に巻き起こした複数の薬物騒動を理由に、ツール・ド・フランス主催者からシャットアウト。2009年はマイヨジョーヌ奪還を目指してツール・ド・フランスに乗り込むが、アームストロングが現役復帰してチームメートに。コンタドールはチーム内に最大の敵をかかえながら戦うことになった。

ピレネー山脈の山岳ステージに突入した第7ステージでコンタドールは首位から6秒差に浮上。アルプスの第15ステージでコンタドールがアームストロングを含むライバルに差をつけてゴールしてマイヨジョーヌを獲得した。さらに最後の個人タイムトライアルも圧勝。最終日前日のモンバントゥーでもアンディ・シュレックを逃がすことなく同じタイムでゴールラインを踏み、2年ぶり2度目の総合優勝を決めた。