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サイクル ロードレース コラム 2017年6月22日

【ツールに恋して~珠玉のストーリー21選~】「パンダ」の愛称で親しまれたフランス自転車界の人気者、ローラン・ジャラベール

ツールに恋して~珠玉のストーリー21選~ by 山口 和幸
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※本企画は2017年に実施されたものです。予めご了承ください。

世界中の自転車ファンを魅了して止まないTour de France。男たちの激闘の裏に隠されたHUMAN DRAMAに僕らは胸を打つ。ここに紡ぐ珠玉のストーリー21選があなたに届くとき、聞こえるのはきっと、ツールへの恋の予感。

【STAGE 15】積極果敢なアタックが信条、ローラン・ジャラベール(フランス)

フランス南部のラングドック地方はかつてオック語という独特の原語を使っていた地域で、なまりのきついフランス語を話す人たちが多い。ローラン・ジャラベールはこのラングドックにあるマザメという小さな町で生まれ育った。

ちょっと田舎者っぽい独特の口調。濃いまゆ毛が特徴で、愛嬌のある顔立ちから「パンダ」というニックネームで親しまれ、フランス自転車界の人気者だった。ただしその才能が開花したのはフランスチームを離れてから。1992年にフランスのトウシバチームからスペインのオンセにエース待遇で移籍した。フランスのトップ選手が海外チームに所属するのはあまり例がなかった時代である。

1992年にようやくツール・ド・フランスに初出場し、第6ステージのルーベ~ブリュッセル間で初優勝を果たすと、最終的にポイント賞のマイヨベールを獲得した。ジャラベールはたぐいまれなるスプリント力を持っていたのである。さらに世界選手権でもイタリアのジャンニ・ブーニョに続いて2位に入った。

3度目のツール・ド・フランス出場となった1994年は、スプリンターとしてのジャラベールにフランスファンの期待がかけられた。ところが第1ステージのゴールスプリント時に信じられない事件が起こった。

ゴールまでの直線路、ジャラベールは他の強豪スプリンターとともにゴール勝負に加わった。ジャラベールが絶妙のタイミングで右フェンス際を猛ダッシュで抜け出したと思った瞬間、フェンス内側でカメラを構えて写真を撮ることに熱中していた警官に激突したのだ。体は宙を舞い、フレームは真っ二つに折れ、骨折した顔面からは真っ赤な血がしたたり落ちた。そのシーンを目撃しただれもが、現役復帰は無理だと思った。

この悲運は一時的にジャラベールの選手活動を白紙にさせたが、フランス人に欠けている不屈の闘志をかき立てるには十分な仕打ちだった。そして、ジャラベールが上りにも強いオールラウンダーになるきっかけともなった。

復活してからのジャラベールは勝ちまくった。1995年はミラノ~サンレモ、フレッシュ・ワロンヌ、パリ~ニース、そしてブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝。7月のツール・ド・フランスでは区間1勝とポイント賞を獲得。さらにフランス人として最高位となる総合4位でフィニッシュした。

こうなるとフランスのファンは総合優勝の期待をかける。2000年のツール・ド・フランスでは途中でマイヨジョーヌを獲得したものの、ランス・アームストロングにたちうちできるわけもなく、マイヨジョーヌを失うことになる。

2001年にはデンマークのメモリーカードに移籍した。そしてビャルネ・リース監督の下で新たなポテンシャルを発揮した。スプリンターからオールラウンダーへ、さらには山岳スペシャリストへの転換だ。2001年と2002年に上り坂で山岳ポイントを稼ぎまくり、山岳賞を連取することになる。

序盤からの積極果敢なアタックが信条だった。アームストロングも追撃を見送ることがあって、テレビ画面を独占した。沿道では「ジャジャ」という愛称がいたるところにペイントされ、赤い水玉模様を着た眉毛の濃いパンダもあちこちに描かれた。

総合優勝に最後までからむことはなかったが、確実に存在感を見せつけてファンの期待に応えた。かつてのスプリンターがアクシデントを乗り越え、2年連続で山岳王となったことは、「やればだれだってできる!」ということをアピールするに十分な功績。総合優勝から遠ざかっているフランス国民の希望の星になった。

2002年に惜しまれながらも引退。

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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