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サイクル ロードレース コラム 2017年6月28日

【ツールに恋して~珠玉のストーリー21選~】映画スターのように立ち振る舞ったイタリアきっての伊達男、マリオ・チポッリーニ

ツールに恋して~珠玉のストーリー21選~ by 山口 和幸
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※本企画は2017年に実施されたものです。予めご了承ください。

世界中の自転車ファンを魅了して止まないTour de France。男たちの激闘の裏に隠されたHUMAN DRAMAに僕らは胸を打つ。ここに紡ぐ珠玉のストーリー21選があなたに届くとき、聞こえるのはきっと、ツールへの恋の予感。

【STAGE 18】スーパーマリオ、マリオ・チポッリーニ(イタリア)

身長189cmという大柄な身体で、両手を広げてガッツポーズでゴールするのだから迫力は十分。そして映画スターのように精悍なマスクで、女性ファンに言わせるとそのセクシーさにシビレてしまうらしい。

レースではゴールスプリント勝負の方程式を確立した。チポッリーニが勝ちをねらいに行くのは大集団のスプリント合戦となる平坦ステージだ。残り距離が少なくなるとチームのアシスト役に集団の先頭をハイペースで引かせ、他選手がアタックすることを阻止する。そしてチポッリーニが最も得意とする残り距離までけん引役のアシスト選手に先導させ、最後は爆発的なパワーでライバルを蹴散らせてトップフィニッシュするのだ。

現在のゴールスプリント勝負のチームプレーを定着させたのがこのチポッリーニなのである。

そんなスーパーセクシーマリオだが、パリ・シャンゼリゼには一度もゴールしていない。ジロ・デ・イタリアでは完走してもツール・ド・フランスは完走していないということだ。

大型選手なのでアルプスやピレネーの上りを得意としていないこともあるが、チポッリーニの場合はちょっと確信犯だ。ツール・ド・フランスは序盤に平坦ステージが連続するのが定番であり、そこで区間勝利を荒稼ぎしてしまったら、山岳を前にして帰宅してしまうのだ。それというのも、イタリアに帰国しやすいステージを見計らったようにチポッリーニはやめてしまうのである。

その説を裏付ける証拠もある。

ツール・ド・フランスは総合優勝や区間優勝、各賞ジャージなどいくつもの栄冠があるが、23日間を走り抜いて世界で最も華やかなシャンゼリゼにゴールするというのも勲章である。だから力及ばずリタイアした選手には夢破れた悲壮感が漂う。

ところがチポッリーニにはそれがまったくない。リタイアした翌日にツール・ド・フランスのスタート地点にきらびやかな私服で登場し、若い女性に囲まれて映画スターのようにたちふるまっているチポッリーニを何度も目撃している。つまり「オレの仕事は昨日で終わったからお役御免さ」という感。

翌日には地元イタリアに戻り、つかの間の休養ののちに次のターゲットのために練習を開始する。それがプロなのだ。2002年にはこうして秋の世界選手権を制覇。名実とも世界最強スプリンターとしての名を轟かせることになった。

ジャージの色に合わせて自転車やアクセサリーをカラーコーディネートした最初の選手もチポッリーニだ。さらにはジュリアス・シーザーの衣装でスタート時のサイン舞台に登場したこともある。規則違反の特注ジャージは日常茶飯事。当然のように罰金が科せられるが、ファンが喜ぶのだからやめるわけはなかった。

引退するときも派手だった。2005年の春に引退記者会見を行い、その年のジロ・デ・イタリアの初日にド派手なピンク色のスキンスーツを着用して引退走行を行った。2008年に一時的に現役復帰したが、すぐに撤回。その後はチーム運営やフレームメーカーとしての経営に手腕を発揮。いまでもその豪快さとダンディーぶりは変わっていない。

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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