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バスケット ボール コラム 2019年12月26日

大阪薫英女学院、きん差のゲームを救ったのは新制度の国体が育てた「楽しい子」

ウインターカップコラム by 平野 貴也
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大阪薫英女学院・宮城

年齢制限を変えた新生国体が育てた「楽しい子」がピンチを救った。ウインターカップ2019第72回全国高校バスケットボール選手権大会の女子準々決勝が26日に行われ、前回準優勝の大阪薫英女学院は、66−62で聖カタリナ学園を破り、準決勝に進出した。

大きな点差がつかずに進んでいく、緊張感のある試合だった。大阪薫英女学院は、序盤で17−12とわずかに先行したが、振り返ってみれば、得点で上回ったのは、第1ピリオドだけだった。リードをしても、相手が付いて来る。安藤香織コーチは「相手によく守られました。中でもっとやれるかなと思ったけど、リバウンドもこぼれ球は相手に抑えられてしまった」と振り返った。森岡奈菜未と塩谷心海(ともに3年)のツーセンターがゴール前で縦並びになって高い軌道のパスを通してゴール下へ攻め込むのが攻撃の基本線だが、聖カタリナ学園の小柳亜結、松岡歩菜(ともに3年)がマークとパスコースの封鎖を徹底。安田茉耶(2年)のドライブも聖カタリナ学園の森美月(3年)に止められた。ゲーム最多23得点を挙げた森岡は、少しゴールから離れてドライブで勝負をしたり、外角の選手にパスを回したりと攻撃に幅を持って攻めることで攻略を図ったが、相手も簡単にはリズムを作らせてくれず、粘り合いの展開になった。

大阪薫英女学院がリードを広げられなくても安定して戦い続けられたのは、元々、大差で勝つゲームにはならないという事前予測と、こちらも守備では負けていないという土台を持っていたからだ。安藤コーチは「最後まで、こうなるとは言っていました。粘り合い。ちょっと点差が開いたら、すぐに追いつかれるという展開で、気持ちは嫌だったと思いますけど、よく我慢してやってくれました。(相手のエースの)森さんに頑張ってプレッシャーをかけ続けていましたし、向こうに守られてしまったけど、うちも守れていたと思います」と話した。守備面の貢献度が高かったガードの中村真湖(2年)は「相手は4番(池松美波、3年)と5番(森)が外からドライブをして来るので、私と安田で付いてレイアップと3ポイントを止めようと思っていました。攻撃よりもまず守備。前半、得点は伸びなかったけど、守備では我慢してやれた」と手応えを示した。

大阪薫英女学院にとって、この粘り合いの展開の中での不安要素は、3ポイントシュートが得意な外角のスコアラー、福田希望(3年)のファウルトラブルだった。ミスマッチの守備で頑張ったが、ファウルが増えた。しかし、代役の1年生が異なるプレーでチームに元気を与えた。圧倒的なドリブルスピードが武器の宮城楽子(1年)だ。名前は「らくこ」と読む。きん差の第4ピリオドでニコニコと笑顔でプレー。ドライブでシュートを落としたが相手のファウルを誘うなど思い切ったプレーを見せると、上級生も笑顔を見せた。エースの森岡は「大きかったですね。昨日の試合もあれで競りそうな場面で宮城のドライブや3ポイントでチームが勢いに乗った。1年生が活躍してくれることが、一番チームが勢い付くことと感じるし、今日はそこに助けられた」と後輩の思い切ったプレーに感謝していた。

安藤コーチも「楽しんで、と声をかけたとおりにやってくれたので、福田を戻さなくても良かった。チームを救ってくれましたね。1年生で思い切りよくやっていたのに、大会に来る前は、少し元気がなかった。だから、あなたの名前は、何? 泣く子? 苦しい子? と聞いて『楽しい子』です、なんていう話をしてきました。コートに入れて、少し緊張するかなと思ったら、どーんと行ってくれたので、度胸がありましたね。怖いもの知らずで、良かったと思います」とルーキーの働きに笑顔を見せた。

大阪薫英女学院は、夏のインターハイで4強入りをしているが、宮城はユニフォームを着ていなかった。主力に混ざるようになったきっかけは、インターハイ後の国民体育大会だった。国体の少年の部は、今年から年齢制限を変更。これまではU−18で3年生が主力として出ていたが、出場機会の少ない1年生(と2年生の早生まれ)を対象としたU−16となった。この大会で準優勝した大阪府代表でプレーしたのが、宮城だった。

「大会に来る前は(試合でこのチームの)ユニフォームを着るのが初めてで、緊張しましたけど、ここに来たら思い切りやるようにしました。めちゃくちゃ楽しかったです。3年生は、この大会が最後。3年生にも楽しんでもらいたいと思って、笑顔は心がけて、楽しくプレーしようと思いました。国体でプレータイムをもらって、思い切りやれましたし、速攻のドライブとかは自信があります」(宮城)

下級生が戦える全国大会という新たに生まれた希少な舞台で、宮城は飛躍のきっかけをつかんだ。インターハイから固定された先発5人が戦う印象の強かったチームだが、生まれ変わった国体を機に、もう1人、流れを変える駒が増えた。

翌27日の準決勝では、夏のインターハイを制した女王、桜花学園高校と対戦する。森岡は「厳しい試合になると思うけど、薫英らしいバスケットをしたい。10回やって何回勝てるかと言えば、相手の方が能力もキャリアも上だけど、チームでやってきたものや、この大会にかける思いは変わらない。しっかり粘って、勝ちに行きたいです」と意気込みを語った。夏以降に加わった新たな力も得て、女王に勝てるか。大一番に挑む。

文:平野貴也

平野貴也

平野 貴也

1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。

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