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今永昇太(カブス)
今、アメリカでは日本人投手たちの活躍がこれまでになく注目されている。メディアやファンだけではない。メジャーリーガーなどの選手やコーチたちからも、「手本に」と一挙手一投足が見られているのだ。それはスーパースターの大谷翔平だけではないという。
そう語るのはMLB公認アナリストで、メジャーリーガーからも絶大な支持を寄せられるロブ・フリードマン氏。『ピッチングニンジャ』のニックネームで知られるMLBアナリストで、弁護士で実業家という経歴を活かし、インフルエンサーとして野球界をもり立てる活動にも勤しむ。
フリードマン氏によると、MLBで活躍している日本人投手たちは「最高のロールモデルとなり、マウンド上での支配力を再定義しつつある」という。
◆今永昇太は体格に恵まれない投手たちの希望
例えば、今永昇太(カブス)は昨季、29試合に登板して15勝3敗、防御率2.91、174奪三振をマークし、チーム最多投球回(173回1/3)で勝ち頭の大活躍。メジャー移籍初年度にして、オールスターゲームにも選出され、瞬く間に「シカゴの顔」になった。
これまでアメリカでは大柄な投手が剛速球を投げて、打者をねじ伏せるのがエースのステレオタイプだった。ましてや高速のボールが全盛期のただ中にあって、今永のようにMLBでは小柄な投手が、150キロにも満たないストレートを軸に、次々とタフなアメリカの打者から三振を奪い、剛腕投手のように活躍したのだ。
高身長に恵まれない、剛速球を持たない投手たちにとって、まぎれもなく新しい基準を示したという。
ちなみに同氏は、今永のストレートはMLBでも最高の直球の1つと絶賛する。つまりストレートであっても高速なら良いのではなく、スピン率やその球が持つ変化などが重要でもあるとしている。
◆投球メカニクス改善プログラムの名前は『菊池ドリル』
また、菊池雄星(エンジェルス)は、その投球メカニクスが非常に効率的だと注目され、その一部がトレーニングメニューになっているという。菊池は投球に入るときに、軸足のかかとを少し浮かせる動きをするが、その動きが体重移動をスムーズにして地面からの力を効果的に指先に伝えられるのだそうだ。
「菊池がメジャー移籍してきた当初、私は彼がいわゆる典型的な技巧派サウスポーだと見ていました。実際、そのようなCMが初年度のマリナーズでも作られていましたしね。でも次のシーズン、彼は例の効率的なメカニクスを身に着けて、球速を見事にアップさせ、本格派投手のような姿で帰ってきました」。
ノースカロライナ州にある投手専門のトレーニング施設『スレッド・アスレチックス』では、メジャーリーガーを始め、多くの投手が自身のメカニクス改善のために『菊池ドリル』に取り組んでいるという。
また、同氏は菊池が昨オフに移籍したエンジェルスには、新球種『スウィーパー』の開発に関係が深い『シームシフテッド・ウェイク』という物理現象を発見したバートン・スミス教授がいるため、これからスウィーパーを投げる可能性にも言及していた(前回コラム参照)。
それは的中し、先の春季キャンプで菊池がお披露目したスウィーパーは、現地で話題になっている。
※投球メカニクス:野球における投球動作の仕組みや技術の総称で、投手がボールを投げる際の一連の身体の動きやフォームを表す。省略してメカニクスと呼ぶこともある。
◆山本由伸のトレーニング方法を学ぶMLBの投手たち
日本ではお馴染みの山本由伸(ドジャース)のトレーニングも、メジャー移籍初年度から注目の的だったという。山本はウェイトトレーニングを行わず、やり投げの練習器具「ジャベリン」を使った方法はじめ、独自のエクササイズで知られる。
山本も投手としては小柄ながら、160キロものストレートや、150キロものスプリッターを投げるのだ。その秘訣をメジャーリーガーたちが、こぞって学ぼうとしているという。
同じドジャースのチームメイトで、エース格の投手タイラー・グラスノーも、山本の無駄のないメカニクスを彼のトレーニング方法から学んでいるという。
他にも、同氏がインタビューした中には、2024年にヤンキースの守護神を担ったルーク・ウィーバーが「同じにはならないけれど、山本の素晴らしいメカニクスを自分用に改良して取り入れた」と明かしているそうだ。
フリードマン氏は、日本人選手たちが独自性を追求する姿勢や献身性は、日本に根付く職人魂に通じると感嘆する。「それは単なるアスリートではなく、本物の職人としての姿勢です。野球への敬意、創造性と正確性を組み合わせる能力、そして絶え間ない向上心が日本人投手たちを何者にも代えがたい存在にしています」と敬う。
日ごろ、日本ではメジャーに「憧れる」という見方が強調されがちだが、その一方でメジャーでは日本人投手を「手本に」している動きもあるのだ。
文:松山ようこ
松山 ようこ
翻訳者/ライター/インタビュアー。主にスポーツやエンタメ分野にて実績多数。野球はプロ野球からMLB、他にもマイナースポーツからオリンピック大会まで、国内外の競技場や大会での現地取材を数多く経験するスポーツ好き。アスリートはじめ、一般人から著名人まで幅広くインタビューし、日本語と英語ともに記事やコラムにする。訳書『ピッチングニンジャの投手論』『ベイダータイム』。 ※『ピッチングニンジャの投手論 PitchingNinja's analysis of Japanese MLB Aces』 ※『VADER TIME ベイダータイム: 皇帝戦士の真実 』
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