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野球 コラム 2022年8月30日

【楽天好き】選手のレベルアップを支える庄村康平トレーニングコーチ。「ケガを限りなくゼロに近づけるよう努力する」

野球好きコラム by 松山 ようこ
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庄村康平トレーニングコーチ

選手たちが表舞台で活躍できるよう、裏方から支えるプロフェッショナルなスタッフをご紹介するシリーズ。今回は、前回に引き続いてコンディショニンググループから。同グループで、トレーニングコーチを担う庄村康平さんに話を伺いました。

トレーニングコーチは、選手たちのウォーミングアップから多種多様なエクササイズやランニングといったトレーニング全般を指南する。トレーニングを通して、体力や技術の向上、ケガの予防や回復など、コンディションを整えるという。

いわばパフォーマンス向上というプラスアルファの要素だけでなく、ケガの予防や回復といったマイナスを補うため、庄村さんは1人ひとりの身体的特徴や競技特性に応じて、プログラムを考案するのだ。知られざるサポートだろう。

◆小深田大翔や村林一輝のレベルアップにも寄与

「例えば、とある選手に走塁の改善余地があったとして、コーチから『反応を速く』『こういう走り方で』と要望をいただいて、トレーニングの一環に組み込むこともあります」と庄村さんは明かす。

小深田大翔もそうしたトレーニングを経て、さらに走力を向上させた1人だそうだ。「小深田選手はもともと足が速い選手ですが、見ていて走る時の力の出し方に改善ポイントが見つかりました。そこで一緒に取り組んだ結果、ここ半年で短距離のスピードがぐっと上がりました」と庄村さん。

このように半年という短期間で変化が得られるケースもあるが、中長期的に取り組んで強化していくことも少なくないという。なかでも、高卒7年目の村林一輝は、当初からは見違えるほど身体つきも変わり、走力、瞬発力、爆発力がついたと語る。出会ったのは、庄村さんが二軍でトレーニングコーチを担当しはじめた5年前だ。

「当時、村林選手は高卒2年目。特にウエイトトレーニングが嫌いで『しんどい』『やりたくない』と避けがちだったのですが、プログラムを組んで『やるよ!』と背中を押してきました。もう今では、そんなことがあったことが信じられないぐらい、誰よりも様々なトレーニングに一生懸命に取り組んでいます。積み重ねで大きな進化を遂げた選手の一人と思います」。

◆移動日にはウォーミングアップも工夫。ケガのリスクゼロを目指す

楽天イーグルスは、移動がより長距離となるパ・リーグであるだけでなく、最北の屋外球場を本拠地にしているため、シーズンを戦う上での環境的ストレスは多い。そうしたケガのリスクが高いことを考慮し、折々で庄村さんはコンディショニングの内容を微調整するという。

「例えば、移動はだいたい月・金曜日が多いですが、飛行機に長く乗った後での試合となると、やはりリスクは大きくなります。座りっぱなしだったり、道中に眠ったりすることで、身体が固まるので、股関節や、首周りがいつものように動かせなくなるんですね。そうしたマイナスの要素を取り除くため、移動日はウォーミングアップの仕方を変えるなどといった工夫もしています」。

また、ケガの対応などメディカルを専門とする松永武士トレーナーが以前のコラムで、「ケガのリスクが高まる疲労度については、選手たちのトレーニング関連の数値を、トレーニングコーチが細やかに教えてくれる」と明かしていたが、そうしたコミュニケーションをとっていたのが庄村さんだ。

「選手たちが持つ職人的な『感覚』はものすごく大事です。しかし、それは主観的な情報ですよね。でも、数字は例えば1キロなら誰にとっても1キロと客観的です。だから、僕はできるだけ選手の身体レベルも数値を共通言語にして、選手の主観的な情報に客観的な情報を加えて判断を下したいというのはあります」とその意図を語る。

◆短期と中長期のメリットとデメリットを天秤にかける

さらに疲労回復だけでなく、体力の強化なども同時に行うため、短期で取り組めることと、中長期で取り組むことがせめぎ合うこともあるという。

「シーズンは143試合と長丁場です。そのなかでのトレーニングやランニングは、短期的には疲れが溜まったり、筋肉痛になったりというデメリットがあります。ですが、明日の筋肉痛を嫌がって、トレーニングをしなかったら143試合目には体力が尽きてしまいます」。

「だから1日、1日、目の前の試合をどのようにベストコンディションで戦って、なおかつ中長期的には1年間というスパンで見た時に、どう体力をしっかり維持しながらシーズンを戦い抜くか。そのため、どのタイミングでどういうトレーニングをすれば、選手の状態を高く保ち続けられるかということを常に考えています」。

内々の調べによると、100試合以上を消化してケガ人は12球団でも非常に少ない方であるという。そもそも庄村さんは、自身の少年時代に古いトレーニングを課して満身創痍になったことで、トレーニングコーチの道を選んだといい、その経験からかケガを防ぐことへの思い入れも人一倍強い。

「プロ野球ではデッドボールで骨折といった不運なアクシデントも起こるので、ケガをゼロにすることは不可能かもしれませんが、それを限りなくゼロに近づけるよう努力するのが僕らの向かうべき課題です」。

まさに縁の下の力持ちなのだ。

取材・文:松山ようこ/写真:東北楽天ゴールデンイーグルス提供

松山ようこ

松山 ようこ

フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo

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