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中川圭太の強みは彼が持つ“渋さ”だけではない。内外野の複数ポジションを守れ、いかなる打順にでも適応できるユーティリティー性もまた、彼の大きな魅力である。今季、ここまで(6月27現在)、2番、8番、9番以外の打順を任され、守ってもレフトとファーストを高いレベルの守備力で無難にこなす。「はっきり言って、打順にはこだわりはないですね。走者がいなければチャンスメイクに徹し、ランナーがいれば塁を進め、ホームに還すことを考える。とにかく、後ろにつなぐ意識でいますから打順は関係ないですね。守備では、毎試合、外野用とファーストミットを2つずつ。グラブをたくさん用意しないといけない(笑)」
中川圭太を語る際、中嶋聡監督との関係性に触れないわけにはいかないだろう。「中嶋監督は厳しくもあり、優しい人。選手に愛情を向けてくださる監督ですね」昨年、一昨年とファームを主戦場としていた中川圭太にとって、中嶋監督と共にした時間は長い。二軍でもがいていた中川だが、中嶋監督からの言葉に救われ、目の前が大きく開けたと言う。「監督から『とにかく思い切りやればいいんだよ』って言われて。結果を追い求め過ぎていた自分に、この言葉は響きましたね。結果よりも、まず悔いのないように思い切ってプレーしようと思った時、気持ちが楽になりました」シンプルだが、物事の本質を射抜く指揮官のひと言で、中川圭太は覚悟を決めたのだ。
ファームで若い戦力の育成に力を注いでいた中嶋二軍監督が監督代行として一軍に呼ばれたのが2020年夏。当時、ファームで4番を張って好調だった中川を、中嶋監督は“無敵の圭太”と称して、一軍でも4番に抜擢した。このことはオリックスファンなら誰もが知るエピソードだ。「僕は“無敵”ではないですが、監督がそう表現してくださるのも、期待の表れだと考えれば有難いですね」と中川は笑う。2年の苦しみを経て、得たものは何物にも替えがたい財産。苦しい時を過ごしてきたからこそ、見えてきたものもあるはず。2022年シーズンも中盤。チームの大きな戦力として存在感を示しつつ、再び輝きを放ち始めたのは確かなこと。“無敵”の境地を目指して・・・。中川圭太の歩みが止まることはない。
取材・文:大前一樹
大前 一樹
1961年兵庫県生まれ。関西学院大学文学部卒業。 放送局アナウンサーを経て独立。今は、フリーアナウンサー、ライターとして活動中。 有限会社オールコレクト代表取締役、アナウンサー講座「関西メディアアカデミー代表」。 「J SPORTS STADIUM2022」オリックス・バファローズ主催試合の実況を担当。
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