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野球 コラム 2021年12月3日

【横浜好き】来季の新コーチとなる日本一メンバー3人の1998年の成績を振り返る。『週刊ベイスターズいいとこどり』

野球好きコラム by 大久保泰伸
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横浜DeNAベイスターズ

12月に入り、本格的なシーズンオフを迎えましたが、ベイスターズの今オフ一番の話題と言えるのが、コーチ陣の一新ではないでしょうか。

チームが最後の日本一となった1998年のメンバーが、なぜコーチングスタッフに入らないのか、という疑問が長く続いていましたが、今回一気に3人の“日本一戦士”の入閣が決まりました。今回は新コーチの紹介も兼ねて、「意外と覚えていない?」それぞれの98年の成績なども振り返ってみましょう。

◆石井琢朗(1軍野手総合コーチ)

1998年成績:打率.314、7本塁打、48打点、39盗塁

今回の人事で最大の目玉と言えるのが、この人の復帰ではないでしょうか。現役時代は球団3人目となる2000本安打を達成し、横浜球団で放った2307安打は今でも球団記録となっています。

入団時は投手で、公式戦でも3年間で28試合に登板して1勝4敗の成績を残しており、NPBでは川上哲治(巨人)以来、史上2人目となる投手として勝ち星を挙げた2000本安打達成者となりました。2009年に広島に移籍し、引退後は広島、ヤクルト、巨人でコーチを歴任して丸佳浩や村上宗隆らを指導。広島と巨人ではリーグ優勝、ヤクルトでも今季の優勝への礎を築いたと評価されています。

98年は「マシンガン打線」の1番打者として、キャリアハイの174安打を放って最多安打、39盗塁で盗塁王のタイトルを獲得。守備でも遊撃手としては最初で最後のゴールデングラブ賞に輝いています。

筆者がもっとも印象に残っているのが日本シリーズ第1戦。初回に先頭打者としていきなりセフティーバントで出塁し、すぐさま二盗に成功。3番鈴木尚典のタイムリーで先制点のホームを踏みました。これで勢いづいたチームは4勝2敗で西武を倒し、石井は6試合で打率.364、3盗塁の活躍で優秀選手賞に輝きました。

◆鈴木尚典(1軍打撃コーチ)

1998年成績:打率.337、16本塁打、87打点、OPS.920

静岡県出身ながら、地元・横浜高校のスラッガーとして甲子園にも出場した鈴木尚典は、17年間の現役生活で打率3割以上を5度記録し、“ハマの安打製造機”と呼ばれました。2008年に引退後は、09年に現在の二軍に当たる湘南シーレックスで育成コーチ、10年に同打撃コーチを務めた後、球団のジュニアチーム監督やBCリーグ神奈川でも監督を歴任し、いずれもチームを優勝に導いています。

前年に初タイトルとなる首位打者を獲得し、背番号を「51」から「7」に変更して迎えた1998年は、3番打者として左右に打ち分ける広角打法で、一発長打に勝負強さも兼ねたリーグを代表する好打者として輝きを放ちました。日本シリーズでは初戦の先制タイムリーの後も、第2戦で4打数4安打を記録するなど、第5戦まで全ての試合でマルチ安打と活躍。6試合で打率.420、8打点、さらに当時のシリーズ新記録となる9得点をマークする活躍でMVPとなりました。

この年でもっとも印象的だったのが、シーズンでの広島・前田智徳との熾烈な首位打者争いです。ともにドラフト4位入団で、イチローより先に背番号「51」でスタートした1歳違いのヒットメーカーの争いは、わずか2厘差で鈴木尚に軍配が上がりました。

◆斎藤隆(1軍チーフ投手コーチ)

1998年成績:34試合登板(先発18試合)、13勝5敗1セーブ、防御率2.94

東北福祉大学からドラフト1位で入団した斎藤隆は先発としてスタートし、1996年には206奪三振で初タイトルとなる最多奪三振を獲得。その後は大魔神・佐々木主浩のMLB移籍後に守護神も務め、2006年からは自らもMLBに移籍。

ドジャーズ、レッドソックスなどでリリーフとして活躍し、MLB7年間で通算84セーブを記録しました。2013年に楽天でNPBに復帰し、15年に現役引退。引退後は野球解説者、MLBパドレスで編成業務などを経て、20年にはヤクルトで一軍投手コーチを務めました。

98年は前年の右肘手術から復帰した年で、中継ぎとして4月に538日ぶりの白星をマーク。シーズン途中から先発に復帰し、野村弘樹と並んでチーム勝ち頭となる13勝でリーグ優勝に貢献しました。日本シリーズでは第2戦に先発し、西武打線を3安打に抑えて、史上9人目となる日本シリーズ初登板初完封の快投で優秀選手に選ばれました。前年未勝利からの見事な復活劇でカムバック賞も受賞しました。

以上の新コーチ3人に加えて、もう1人の“日本一戦士”が三浦大輔監督です。この年から背番号「18」を背負い、自己最多の12勝をマークしたのですが、筆者の印象では“98年メンバー”では、やや印象が薄い感が否めません。

調べてみると、この年は8月に肝機能障害で約1ヶ月の離脱。日本シリーズでは第3戦に先発しましたが、シリーズ前に二段モーションを指摘されたことが影響したのか、3回途中までに6四球を与えるなど72球を費やし、4失点で負け投手になっています。

その後は挽回の機会もなく、悪い印象を残したままシリーズを終えたことが、印象が薄い理由なのかもしれません。1998年に大活躍した3人のコーチが加わった来季は、三浦監督には指揮官として、日本シリーズの大舞台で雪辱を晴らしてもらいたいものです。

文:大久保泰伸

大久保泰伸

フリーライター、編集者。1969年広島市生まれ、現在は神奈川県在住。出版社勤務を経て、20世紀の終わり頃に独立。別冊宝島野球シリーズの執筆、編集や広島などのOBの著書の編集協力などを行い、同社のプロ野球選手名鑑は創刊時から現在まで関わる。記者活動は2009年にベースボール・タイムズ紙の広島担当でスタートし、15年から野球専門サイトのフルカウントで広島、18年からはDeNA担当も兼務した。

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