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AKI猪瀬さん
2021シーズンから導入される低反発球。これによりメジャーの野球は大きく変わることが予想される。解説でおなじみのAKI猪瀬さんに導入の背景やそれによる変化について語ってもらった。また、今シーズンの注目チームや注目選手も教えていただいた。
フライボール革命に対抗する投手のトレンド
打球に角度をつけ、打ち上げることで本塁打を量産する「フライボールレボリューション」というバッター側のトレンドに対して、投手は高めのフォーシーム系の強いボールと、縦変化のカーブや縦のスライダーを投げるのがトレンドになっています。
一方、ツーシームを使うピッチャーは毎年減ってきています。ただ、今シーズンはツーシームという変化球で、人類史上初めて170キロのボールを投げるかもしれないと言われているセントルイス・カージナルスのジョーダン・ヒックスという、とんでもない化け物がトミー・ジョン手術から戻ってきます。
また、ロサンゼルス・ドジャースのダスティン・メイなど、ツーシームで160キロを出すようなピッチャーがどんどん出てきているので、もしかすると高めのフォーシームと縦割れの変化球ではなく、80年代、90年代に隆盛を誇っていたツーシーム系のボールが、今季を境に復権してくるかもしれません。
2021年は低反発球の導入による新たなトレンド元年
メジャー全体で見ると、なんといっても2021年の注目はホームラン狂騒時代に終止符を打つべく、メジャーリーグ機構が低反発、飛ばないボールの導入を正式に発表したことです。このボールは体感で1~2mぐらい距離が出ないと言われています。
ホームランはお客さんを球場に呼ぶ最大のツールですが、このツールを捨ててまで、なぜ低反発球を導入するのかというと、MLBの機構側は今の三振かホームランかというトレンドを良くないと考えているからです。
三振かホームランかの繰り返しだと、野球というスポーツの魅力が大幅に減ってしまっています。ツーベースが出て、セカンドへスライディングしてエキサイトする。また、スリーベースをもっと多くすれば、もっとスリリングなシーンが増えます。
そこで、ホームランが減っても構わないから、1回から9回まで、常にフィールド上に動きのある野球を、新しいトレンドとしてファンに届けたいという思いが機構側にはあるのです。
バリー・ボンズらのステロイド時代から、30年弱続いてきたホームラン狂騒時代に、今年別れを告げます。ここからまた新しいトレンドが始まってくると思いますで、その最初の年をぜひ見届けてほしいと思います。
ホワイトソックス、70歳の老将がやんちゃな孫たちをどう活かすか
アメリカン・リーグの注目チームはシカゴ・ホワイトソックス。去年までの戦力でも十分だったんですが、ストーブリーグでも要所要所にいい選手を獲得できています。
去年も「いい」と言われていたチーム状態から、さらに上積みされた確実な戦力を誇っているので、今年のアメリカン・リーグで、僕個人として最も注目のチームだと思います。
また、非常に若い勢いある選手が揃っているチームに、70歳を超えるトニー・ラルーサ監督をわざわざ連れ戻した。弁護士の免許も持っている知的な名将が、若い選手たちをどう料理していくのか、非常に楽しみです。
マリナーズはオーナーの失言で若手有望選手が活躍する?
アメリカン・リーグで台風の目になりそうなのは、マエケンがいるミネソタ・ツインズも面白いですが、本当に下馬評が低い中で、今年もしかしたらと言われているのは、菊池雄星がいるシアトル・マリナーズです。
マリナーズは現時点で、メジャーリーガーという戦力は乏しいですが、メジャー予備軍と言われている「トッププロスペクト」、有望選手の宝庫と言われています。こういう選手たちが一気に上がってくると、マリナーズが台風の目になる可能性もあります。今回、筆頭オーナーの愚かな発言(有望な若手の年俸調停やFA時期を遅らせるため、意図的にメジャー昇格を遅らせているなど)があり、解雇になって、新しいオーナーになりました。
新しい球団の首脳陣の中には、オーナーの発言を1つ1つ、つぶしていかないといけないという思いがあるので、イメージよりも早くマイナーから優秀な若手選手をどんどん上げてくると思います。「これがファンや、メディアに対してのマリナーズのアンサーだよ。本当にあの発言はごめんなさいね」という答えが、若手選手をごそっと上げて、チームを活気づけようということが最大のメッセージになると思います。
ドジャースvs.パドレスが2021年のドル箱カード
ナショナル・リーグはワールドシリーズ連覇がかかっているロサンゼルス・ドジャースが本命だと思いますが、個人的に注目チームはダルビッシュ投手が入ったサンディエゴ・パドレスです。
パドレスの先発5枚は、トレバー・バウアーが入ったドジャースの5枚と比較しても遜色ありませんし、野手陣に関してはスター選手が多いのはドジャースよりはパドレス。そう考えると僕はパドレスがストップ・ザ・ドジャースになると感じでいます。
パドレスの場合は、「ダルビッシュが入りました」「ブレイク・スネルも来ました」「フェルナンド・タティスと大きな契約をしました」といったところが注目されますが、クローザーにもちゃんと人を入れていますし、韓国球界からキム・ハソンもポスティングでしっかり獲得しています。
ベースになるようなところもしっかり補強できているので、ナショナル・リーグでは、やはりパドレスを一番推したいです。
それにしてもナショナル・リーグ西地区は熱い。レギュラーシーズン、パドレスとドジャースの直接対決19試合はもちろん、勝ち上がっていったときのリーグチャンピオンシップシリーズあたりでの激闘というのも非常に注目です。
19試合も直接対決があれば、常にダルビッシュvs.クレイトン・カーショウだったり、ダルビッシュvs.ウォーカー・ビューラーだったり、ダルビッシュvs.トレバー・バウアーだったり、もちろん、スネルが出てきてもいいですね。
この直接対決はサイ・ヤング賞クラスが続々出てくるような先発マッチアップになってくる。そういった意味では、2021年全体で見ても、ドジャースvs.パドレスはドル箱のカードになると思います。
シャーザーとカブレラ、見逃せないレジェンド2人の記録達成
サンディエゴ・パドレスのフェルナンド・タティスJrのようなこれからの期待の若手選手を見てもらうのももちろんなのですが、今シーズンは両リーグでマイルストーン、偉大な記録を達成しそうな選手がいます。
まず、ナショナル・リーグは投手で、ワシントン・ナショナルズのマックス・シャーザー。史上19人目の3000奪三振にあと216なので、例年通りのパフォーマンス、またコロナでシーズンが止まるとか、レギュレーションが変わることがなければ、夏場過ぎぐらいに3000奪三振を達成すると思います。そこまで奪三振のカウントをしていくのも面白いでしょう。
アメリカン・リーグではバッターで「ミギー」こと、ミゲル・カブレラが史上33人目の3000本安打へあと134安打。そして史上28人目の通算500本塁打まで13本となっています。また、3000本安打と500本塁打の両方を達成できれば、メジャー史上でもアルバート・プホルス(ロサンゼルス・エンジェルス)を最後に、まだ6人しか達成していない、ものすごい記録になります。
ただ、ミギーは4月に38歳になりますが、ここ2・3年は故障でトリプルクラウンを獲ったときのような状態ではありません。近年で見ると2019年は136試合に出場してヒットが139本、ホームランが12本。
数字的には134安打と13本塁打で、すぐに行きそうな数字ですが、近年のミギーを見ると、162試合フルで頑張って、さあどうだというギリギリの数字なので、これは見ておくべきだと思います。
シャーザーもミギーも、キャリア的には晩年に差し掛かっています。シャーザーは今年取りこぼしても、3000奪三振は来年以降達成できると思いますが、カブレラは故障や衰えがあるので、今年一気に達成しないと届かない可能性もあります。
ミギーは親日家で、僕も親しいメジャーリーガーなので、日本から大きな声をミギーに届けてあげてほしいですね。
J SPORTS 編集部
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