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2019年MLBレギュラーシーズンは、米本土の開幕から10日間が過ぎた。昨季、圧倒的な強さを発揮したワールドチャンピオン レッドソックスが躓き、逆に苦戦の予想が多かったマリナーズが東京での2連勝で波に乗ったか意外な快進撃を見せている。また、ブルワーズのクリスチャン・イエリッチの開幕4試合連続本塁打、将来的なナ・リーグでのDH制採用の声が高まる中でのザック・グレインキ(ダイヤモンドバックス)やジェイコブ・デグロム(メッツ)の快投&本塁打のパフォーマンスなどの見所もあった。
そして、今季から無視できない重要な運営やルールの変更が行われている。イニング間の短縮、トレード期限の一元化、球宴の運営方法の改定などだ。これらは、来季に予定されている諸変更、さらには2021年オフの労使協定改定以降に計画されている野球の姿を変えかねない抜本的な改革の魁となるものだ。まずは今季、MLBはどう変わるのか?解説したい。
イニング間の短縮
今季からローカル放送のゲームではイニング間は2分5秒から2分へ、全国放送では2分25秒から2分に短縮される。これで、2年連続の短縮実施となる。メジャーリーグが抱える最大の課題のひとつが、試合時間の短縮だ。複雑化する戦術や場内演出の増加などで試合時間は長くなる一方だ。100年前には平均2時間を切っていた9イニング試合での平均時間は、2014年にはじめて3時間に達し、昨季は3年連続で3時間以上となった。
全国放送の方がより大きな削減となっているのは、こちらはもともと短縮の余地が大きかったということに加えMLB機構による直接契約だからだろう。ローカル放送は各球団が地元放送局と個別契約を結んでいるので、機構としては介入し難いということか。たかだが5秒(ローカル放送)というなかれ。これで9イニングのゲームでも85秒短縮される。
時短策としては、2年前に導入された申告敬遠が有名だが、あれはインプレー中の所作に手を付けており、感心できない。本来は、攻守や投手交代時のような完全な中断時間や打者交代、投球間隔などのインターバルに手を尽くし切ってからにすべきである。その意味では遅ればせながら、ようやくあるべき姿に近づいたと言えるだろう。
「マウンド・ビジット」可能回数減
投手交代を伴わない捕手や監督・コーチのマウンド訪問は、昨季より1試合6度までと回数に上限が設定されたが、それが今季から5度に削減される。これも良いことだと思う。
なお、ここに紹介した2つの改定は、来季以降に控える大きな時短策の前奏曲だ。来季からは、投手は最低3人の打者に対戦し終えるか、イニングを終了させるか、このどちらかを満たさねば交代できない。これも致し方ないと思う。メジャーを愛してやまないぼくも、終盤の小刻みの投手交代とそれに伴う長いインターバルにはうんざりさせられることが多い。
トレード期限の一元化
これまでは、原則として7月末のトレード期限を過ぎても、抜け道的なトレード手段があった。それがウェイバー経由でのトレードだった。8月1日以降でも、一旦ウェイバーに掛けられどの球団からも獲得の声が挙がらなかった選手のトレードは可能だった。8月末までに加入した選手はその球団でポストシーズンへの出場資格が得られるため、8月末が実質的なトレード期限になっていた。2017年の8月末にタイガースから移籍し、そこからの獅子奮迅の活躍でアストロズ初の世界一の原動力になったジャスティン・バーランダーのケースは、その代表的な成功例だと言える。今後もウェーバーは可能だが、それをクリアした選手のトレードは不可、となる。
基本的にはこれも歓迎すべきことだ。何にしても、「抜け道」があるのは良くないからだ。
球宴関連の変更
各ポジションのファン投票上位3名(外野手は6名)を対象に最後のファン投票を行い、スタメン選手を決める。これは、球宴運営へのファン参加度、ひいては関心を高めるという点で評価できる。
延長戦に入ると、無死2塁から攻撃が開始されることは議論を呼びそうだ。しかし、本塁打競争の参加者へのボーナス総額が一気に250万ドルに引き上げられ、優勝者には100万ドルが支払われることは歓迎したい。昨年は総額52.2万ドルで、優勝したブライス・ハーパー(当時ナショナルズ)が手にした賞金は12.5万ドルでしかなかった。これは、ダービーにトップクラスのホームラン打者が参加したがらない傾向にある程度は歯止めを掛ける効果がありそうだ。超リッチなメジャーリーガーにも、一晩の夢としては中々魅力的な金額だろう。
来年以降は?
来年からは前述の「最低3人」ルールに加え、出場選手登録枠の25人から26人への拡大(と9月1日以降の40人から28人への削減)、故障者リスト入り期間の変更(現在の10日間から2016年までの15日間に戻る)が行われることがすでに決まっている。2021年オフに更新時期を迎える新労使協定の交渉においては、投球間隔を制限するピッチクロックやナ・リーグでのDH制度の導入はその焦点の一部となるだろう。
また、MLBは今季独立リーグのアトランティック・リーグを舞台に機械によるストライク / ボールの判定や、マウンドとホーム間の距離延長などのラディカル過ぎる実験も行うが、もちろんこれらもMLBでの将来の導入を念頭においてのことだ。
今季は、最古のプロ野球団シンシナティ・レッドストッキングス(現シンシナティ・レッズ)が産声をあげてから150周年になる。その間、フィールド上のルールやプレイ様式、運営も変化し続けている。そのことを再認識させられるこれらの改定案だ。
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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