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野球 コラム 2018年6月19日

【大学野球選手権 総評】 自主独立な野球

野球好きコラム by 岩瀬 孝文
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第67回全日本大学野球選手権 総評
『自主独立な野球』

選手の個性を重んじ、深く自分たちで考えプレイする野球で優勝を遂げた東北福祉大。
これが近年の新しいタイプの学生野球となる。
ともすれば、かつて良き時代のスパルタ指導がベースにあった野球指導に対して、その明るさと野球技術の理解とそれぞれの頭脳を活かしながらの体現、さらにコーチと選手との間における、こまめなコミュニケーションを持ち込んだ大塚光二監督だ。
「こういう指導者に出会うのは初めてです」
選手からはそういう刺激的な言葉が聞こえてきた。

いわば経験則を軸に、やらされている野球から一転、説明して聞かせてという細かなコーチングに加えて、それぞれ自ら創意工夫しトレーニングを積む。これであった。
それは、なにもテクニックのみならず、通常における筋力アップのマシントレーニングや、基本のランニングまですべてのプログラムにいえることだった。
おのおのが自由に考え、伸び伸びと野球して、ここ一番で同じ方向へとチームをまとめ上げながら、選手個々のパフォーマンスに期待を寄せる。そういった新鮮味あるベースボールと言えそうだ。いまや、これに気づき出している野球指導者は増えてきている。

他の競技を含めて現在、学生スポーツは転換のときを迎えている。選手の個性を活かしながら、豊かな心の人材に育成できるか、良い意味で楽しいスポーツを求めてだ。先んじてそれを実践しようとしている指導者は、いま確かな道を歩んでいる。

全国の27地区で厳しい闘いを勝ち抜いてきた代表校だ。
1回戦で東北福祉大に立ち向かった国立大の広島大には好投手の中田朋輝(宇部)がいた。
強豪同士の対決となった富士大と中京大、奈良学園大と立命館大、天理大と大商大、九産大と東海大のゲームもじつに見応えがあった。
そして勝ち上がった中京大にシード校の白鴎大はタイブレイクになり、雪国の快腕150㎞伊藤大海(駒大苫小牧)に爆発力があった慶応義塾大の打線、国際武道大にマークされた辰巳涼介(兵庫県立社)の立命館大、150km前後のスピードボールを誇る東洋大の3投手を徹底分析して打ち込んだ九産大は7回コールド勝ちを収めた。
東北福祉大と慶応義塾大に国際武道大と九産大の準決勝は、ともに複数の投手による継投策のゲームとなり、それはそのまま決勝戦においても同様。大塚監督がみせた早めの継投は、その思い切りの良さで輝きの勝利を手繰り寄せた。

最優秀選手(MVP)の東北福祉大 吉田隼(国士館)

東北福祉大 津森有紀(和歌山東)

最優秀選手(MVP)は独特なバッティングフォームで快打した東北福祉大の吉田隼(国士館)、最優秀投手には2勝して防御率0.00だった東北福祉大の津森有紀(和歌山東)、首位打者は慶應義塾大の河合大樹(関西学院)が打率0.636で獲得。敢闘賞は好投を見せた国際武道大の平川裕太(東海大浦安)、特別賞は初出場でベスト8入りした宮崎産業経営大学の受賞となった。

学生野球に時代の変遷はあるが、技術と人間性が豊かな『考える野球』は、今後の新しい機軸となってくる。そこには、試合中の爽やかな選手たちの笑顔があったりする。それを見事に証明した東北福祉大だった。

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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