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野球 コラム 2018年6月17日

【大学野球選手権】6回のビッグイニング(東北福祉大学 vs. 慶應義塾大学)

野球好きコラム by 岩瀬 孝文
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大学野球選手権第5日
第1試合 準決勝 神宮球場
『6回のビッグイニング』
東北福祉大学〇7-3●慶應義塾大学

いきなり3回表に8番大西(智弁学園)のレフトスタンドへの本塁打を放ち、東北福祉大が先制。その裏に慶大は、ランナーをためて三塁前の送りバント、それを投手がサードに送球ミス、さらにはそのボールをレフトが追い切れずにフェンスまで転々と。その間になんと3者が生還してノーヒットで3点という珍しいケースで逆転。

しかし試合巧者の東北福祉大に焦りはなかった、4回には5番清水聖(智弁学園)の左中間ソロホームランでじわりと。もともとパワーヒッター揃いの東北福祉大、いざとなれば一発があり長打もありだった。

そのビッグイニングは6回にやってきた。それも2アウト満塁からポテンヒットで2点、さらに1番吉田(国士館)がレフトスタンドへ叩き込む3点本塁打で一気に7-3として試合を決定づけた。

投手は先発左腕の山野(高川学園)から藤川(京都外大西)そして新人の三浦(盛岡大附)という小刻みな継投策があたり、しかも5回には満を持してエース津森(和歌山東)を投入した大塚監督だった。
その津森は右サイドから伸びるボールで三振をもぎ取り、最大のピンチとなった6回裏の1アウト満塁も自信を持って三振に切って取った。

「かわすよりも攻めのピッチングでした。とにかくまっすぐで押していきました。今日の勝利は打者に助けられました。この勝利は素直にうれしいです」
いくらか疲労度に包まれる津森だったが、右横手から高低差をつけた配球のスピードボールで打者に狙い球を絞らせず、鋭いいままに投げ込んでいった。

三塁側スタンドに大挙して構える六大学スタイルの応援は見事であり、その力に押されそうになったが、なによりも実力あふれる東北福祉大の守備には落ち着きがあった。
遠方仙台からやってきた少数精鋭の応援団とチアリーダー、ブラスに控えスタンド部員の大きな声で場内を盛り上げての応戦だった。さらには六大学の応援スタイルは面白いなあ、私たちも頑張ろうと、余裕をもって戦況を見つめながらリズムを奏でていた東北福祉大の一塁側スタンドだった。

「こんなにホームランが出るとは信じられないですね。そう、あのノーヒットでの3点も。あれはミスで取られた点だったので、選手にはミスからの点は返しづらくて相当にきついから、しゃにむに食らいついていこうとアドバイスしました」
元プロ野球選手の大塚監督は、実直さながら、そう応えてくれた。 豪快な3本のホームランに、安定感にあふれた投手陣、準決勝すこぶる完勝であった。

「めちゃくちゃ悔しいですね。日本一のチャンスは簡単ではなくて、今回はそれだと思います。
しかしながら今季はよくここまでやってこれたなというのが本音です。最後にスタミナが切れた感じでした。それだけにもっと選手層を厚くしていきたく思います」
やや伏し目ながら、悔しさをにじませて語る慶大の大久保監督。
主戦の高橋亮が6回につかまり、すぐさま継投に出たが、その上をいくバッティングの地力があった東北福祉大だった。

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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