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高卒1年目の若きエース宮崎友花
世界トップレベルの助っ人がやって来る。6月29日まで愛媛県・松山市で行われた全日本実業団選手権で、女子のACT SAIKYOは3位タイと健闘した。主将を務める大澤陽奈は「準々決勝で勝ったヨネックス戦は、今後、チームが優勝をするために、すごく大きな一戦だったと思う。ただ、今日(準々決勝、準決勝)はダブルスが全然貢献できなかったので、すごく悔しい。ベースの部分が、他のトップチームと比べてまだまだ低いと感じた。次は、良い状態でリーグ戦を迎えたい」と大会で感じた手ごたえと課題を語った。
宮崎は立て直して奮闘、ダブルスは上位戦で課題
ラウンド16の広島ガス戦では、大澤と倉島美咲、水津優衣/青木もえのダブルス2組で2勝。第1シングルスで高卒1年目の若きエース宮崎友花が敗れたが、5月の日本ランキングサーキットを制した水津愛美が第2シングルスを勝って3-1で勝利。宮崎は翌日に「1日経って振り返っても、何をやっていたのかと思う。情けなくて落ち込んだ。国際大会でも、格上の選手に向かって行くときは良いけど、力が同じくらいの選手とやると迷いが出て、安定しない」と話していたが、ダブルス2試合を落とした準々決勝のヨネックス戦では、後、第1シングルスで仁平菜月との日本代表対決を制してチームの逆転勝利につなげた。準決勝はBIPROGYに1-3で敗戦。勝利を挙げたのは宮崎だけだったが、第2シングルスでは、水津愛が相手エースの杉山薫と互角の勝負(2面同時展開で第3シングルスで久湊菜々が先に敗れたため、打ち切り)。宮崎、水津愛のダブルエース体制が機能した印象だった。
一方、ダブルスは、強い選手に食らいつくことはできるものの、上位対決で結果を残すことが難しく、課題を残した。また、水津優と混合ダブルスで日本代表に選出されていた佐藤灯が引退(大会終了後の7月1日に発表)。人数も減ってしまった。
左ひざ手術の田口、9月の全日本社会人で復帰へ
渡辺勇大(J-POWER)とのペアで混合ダブルスに挑戦する田口
しかし、11月に開幕するS/Jリーグに向けて、ダブルス陣は、戦力強化が進みそうだ。一つは、負傷で戦線離脱している田口真彩の復帰だ。昨年末に痛みが出た左ひざを手術。リハビリを経て、9月の全日本社会人選手権(女子ダブルスでエントリー)を目途に復帰予定だという。田口は「まだコートで動けるわけではないけど、回復自体は順調」と話した。左ひざは、高校時代にも痛めていた部分。負荷がかかり過ぎない動き方のトレーニングも始めている。田口は、チームで女子ダブルスの一員として活動するだけでなく、24年夏から、五輪2大会連続銅メダルの渡辺勇大(J-POWER)とのペアで混合ダブルスに挑戦。5月の日本ランキングサーキットは、渡辺と、2016年リオデジャネイロ五輪女子ダブルス金メダルの松友美佐紀(東京都協会)のペアの試合を現地で観戦した。
松友は、田口にとって学生時代から憧れの選手として名を挙げていた存在。田口は「勇大さんのプレーは、組んでいるときは見えないところが見えて、いろいろなイメージが沸いた。復帰して組むのが楽しみ。松友さんのプレーを見て、自分も真似したいと思った。前での腕の振りが小さくて、前に落とす球と後ろに突く球がすごい(相手に分かりにくい)。あと、動きが速いというより、予測による動きが早いので(利き腕の)右・左の違いはあるけど、真似したいと思った」と復帰後のイメージを大きく膨らませていた。全日本実業団選手権は、コートサイドで仲間を応援。「先輩や後輩の宮崎が戦っている姿を見て、次は自分がコートに立って、絶対に勝利に貢献したいとすごく思えた。強くなってコートに戻りたい」と復帰に意欲を示していた。
韓国代表イ・ソヒが加入、小宮山監督「一緒に練習できる環境作りたかった」
韓国代表イ・ソヒ(写真右)
そして、もう一つは、超大物の加入だ。全日本実業団選手権のパンフレットには、イ・ソヒの名前があった。言わずと知れた、女子ダブルスの世界トップレベル。2016年リオデジャネイロ五輪にはジャン・イェナと、21年実施の東京五輪にはシン・スンチャンと、そして24年のパリ五輪には現在のパートナーであるベク・ハナと組んで、五輪に3度出場。誰と組んでも強い、正真正銘のトッププレーヤーだ。小宮山元監督は「世界トップレベルの選手と一緒に練習できる環境を作りたかった。試合にも出てもらうつもりでいる」と話した。当然、国際大会との兼ね合いになるが、スケジュールが合うタイミングでチームに合流して活動予定だという。
イ・ソヒ加入は、単純に戦力として大きいが、既存選手を刺激する部分でも期待ができる。主将の大澤は「来ていただいたら、自分たちも成長できるチャンス。吸収できるところは吸収して、一人ひとりが頑張っていけるようにしたい。(イ選手に)助けてもらいながらも、自分らが助け合えるぐらいの実力をつけていきたい」と、チーム力向上につなげようとする姿勢を示した。田口も「すごく、ワクワクしている。イ選手は、攻めも守りもしっかりしているタイプという印象。自分は、どちらかと言うと、スピードばかりになりがち。バランスの取れたプレーで(各要素の)アベレージを上げていくのは、自分の課題。そういうところを学びたい」とトップ選手から成長の糧を得ようと意欲的だった。
世界を意識したチームへ
3月に齋藤栞、齋藤夏の姉妹が、PLENTY GLOBAL LINXへ移籍。今夏に佐藤と水津優が引退。選手層が薄くなっている印象はあるが、チームは2月に韓国遠征を行ったり、イ・ソヒを招へいしたりと世界に目を向けて強化を進めている。7月のダイハツジャパンオープンには、大澤が渡辺とのペアで混合ダブルスにエントリー(リザーブ)。世界トップ選手から学ぶ機会を意図的に増やしていることが分かる。
チームは、2010年創部。翌11年にチャレンジリーグを優勝し、入れ替え戦に勝って日本リーグ2部へ昇格。2014-15年シーズンに2部を優勝し、入れ替え戦を経て1部昇格と足早に強化を進めてきた。ただし、2015年から戦っている1部(2016年から「S/Jリーグ」)では、苦戦が続いている。インターハイ女王を複数抱えるようになり、着実にチーム力を上げ、上位候補に名を連ねるようになっているが、大きな期待を受けた昨季もブロックリーグを突破できず、TOP4トーナメント初進出はならなかった。
新たな変革の時期を迎え、チームは、どのように進化するか。全日本実業団選手権では、可能性も課題も見えた。田口の復帰、イ・ソヒの加入で、どう変わるのか。11月開幕のS/Jリーグで、多くの見どころを持つチームとなる。
文:平野貴也
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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