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バドミントン コラム 2025年5月24日

優勝に王手の渡辺/松友、調整40分でも際立つ対応力 | バドミントン日本ランキングサーキット

バド×レポ by 平野 貴也
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快進撃を続ける五輪メダリストペアの渡辺勇大(J-POWER)/松友美佐紀(東京都協会)

快進撃を続ける五輪メダリストペアの渡辺勇大(J-POWER)/松友美佐紀(東京都協会)

強い者がペアを組めば、やはり強い。バドミントンの日本ランキングサーキットは、5月22日に各種目の準々決勝を行い、混合ダブルスでは、五輪メダリストペアの渡辺勇大(J-POWER)/松友美佐紀(東京都協会)らがベスト4に進出した。渡辺は、初めてペアを組む松友との快進撃に「頼もしい限り。味方で良かったです」と笑顔を見せた。

五輪メダリストペア誕生の経緯、渡辺「暇ですか?」

東京、パリの2大会連続で五輪の銅メダルを獲得した渡辺は、この種目の第一人者。松友は、2016年リオデジャネイロ大会で日本初の五輪金メダリストとなった選手で、20年以降は混合ダブルスに転向して日本代表として活躍してきた。長く合宿や遠征をともにしてきたが、ペアを組むのは今回が初めて。3月末には、ともに前所属チームのBIPROGYを退団し、各々でプロ選手として活動。渡辺は、パリ五輪の後に、五十嵐(旧姓:東野)有紗とのペアを解消。新たに19歳の田口真彩(ACT SAIKYO)とペアを組み、2028年ロサンゼルス五輪を目標とした活動を始めている。しかし、田口が負傷のために戦線を離脱したことが4月に発表された。復帰を待つ間の活動として、松友に声をかけたという。渡辺は「僕が声をかけて。暇ですか?って」と冗談交じりに説明。松友も「もし、どこかでタイミングがあるんだったら、一緒に(試合に)出られたら面白いんじゃないかと思っていた部分もあった」と快諾。今大会と直後の5月27日に開幕するシンガポールオープン(BWFワールドツアースーパー750)にエントリーした。いわば期間限定の豪華ペアだ。

経験値が生きる場所、連係力をカバーする分析と対応

ただ、それぞれがプロとして活動する中で、しかも期間限定となるため、合同練習で連係を深める時間は確保できない。大会初日、渡辺は事前の練習は40分程度しか行っていないことを明かした。それでも、決勝まで、1ゲームも失わずにすんなりと勝ち上がっているのは、個々の能力の高さによるものだ。だが、能力と言っても、打てるショットの範囲、強度、精度などが優れているだけではない。渡辺は、松友について、初日に「試合の進め方、ここが大事なポイントを欲しいところというリズム的なところが勉強になっている。前への入り方とか、パートナーに楽をさせてあげる場面も作ってくれる。初めてとは思えないくらいスムーズに試合ができた」と話した。実際に、強引にすごい球を打って決めている印象はなく、その後に積み重ねた試合を見ても、相手は2人の打った球を返すのが難しいというより、どうにも対応しようのない形に追い込まれている印象だった。連係が課題になるはずの即席ペアが、試合運びで優位に立つところは、今大会に見える凄みだ。

準決勝を終えた後、松友は「ちょっとしたことで(試合の)流れはガラッと変わる。ミックスは特に、一気に10点取れたり、取られたりは、普通。常に点数を取りに行こうとして、そのためにどうするかを考えている。(渡辺は)それを持っている選手。当たり前のようで、一番大事だし、なかなか難しいところ。どこかで、みんな、守りに入ったり、(安全なショットを)置きに行ったりしてしまうことも多いと思う。最後は、攻め続けて点を取りに行こうとしないと勝てないと思うし、そういうことを組んで感じているし、勉強になっている」と話した。

元日本代表の古賀輝「何をすればいいのか、まったく分からなかった」

渡辺/松友ペアを高く評価する元日本代表の古賀輝(写真:奥右)

渡辺/松友ペアを高く評価する元日本代表の古賀輝(写真右)

今大会の相手の中で、最も経験豊富なのは、準決勝で対戦した古賀輝(ジェイテクト)だ。男子複で日本代表として戦ったキャリアを持ち、24年の全日本総合選手権では、福島由紀(岐阜Bluvic)とのペアで渡辺/田口に勝った経験もある。今回も第1ゲームの前半は11-10とリードした。しかし、渡辺が、ミスによる失点を減らすためにつなぐラリーを仕掛けると、流れは一変。終わってみれば、渡辺/松友が21-12でゲームを制し、古賀/今井は第2ゲームでは3点しか取れなかった。古賀は「相手のミスでしか点が取れない。穴がなく、何をすればいいのか、まったく分からず、実力不足を痛感した」と脱帽だった。渡辺とは男子複でも混合複でも対戦しており、ある程度、どんなショットを打って来るかは知っていたが「松友さんと対戦するのは、初めて。動きは早いし(予測を)張るところは、しっかりと張っている。無理なところは勇大に任せて、役割分担がしっかりしている。少し体勢が悪くなっても、うまいところに球を逃がしてくる」と松友の予測と判断のスピード、的確さに驚いていた。

そして、2人の試合運びの上手さにも言及。

「対応が早い。普通の人が5点くらい取られて気付くところを、2、3点の間に切り替えられる強みは絶対にあると思う。逆に、僕らは、やられているのに(やり方を)変えられない弱さがあった。強い相手に勝つには(プレッシャーをかけるために)第1ゲームは絶対に取らないといけない。相手のミスだけだったけど、前半に11点が取れた。相手は、多分、普通のところを普通にやれば勝てると思ったんでしょう。逆に言えば、僕らはもっとリスクを取って攻めなければいけなかったのに、こんな感じで11点取れるのかとホッとしてしまっていた部分があったかもしれない」(古賀)

渡辺は「僕は2冠してます」とアピール、松友は初優勝なるか

決勝では西大輝(BIPROGY)/佐藤灯(ACT SAIKYO)と激突

決勝では西大輝(BIPROGY)/佐藤灯(ACT SAIKYO)と激突

圧倒的な強さで勝ち上がった渡辺/松友は、優勝に王手をかけた。対戦相手は、日本代表に選出されている西大輝(BIPROGY)/佐藤灯(ACT SAIKYO)に決まった。龍谷大時代から組んでいるペアで佐藤が社会人2年目、西は社会人1年目。五輪メダルペアに、若き日本代表が挑む格好だ。西は「相手は、経験値がはるかに上の人たち。当たって砕けろという感じで、どれだけ通用するか。挑戦者だし、向かって行くだけ。思い切ってプレー出来ればいい」とノープレッシャーの立場を強調した。若手の代表ペアが、どこまでプレッシャーをかけることができるか、注目される。

大会初日、松友が「私自身、ランキングサーキットを優勝しことがない」と話すと、渡辺は「うわっ、プレッシャー」と言って笑ったが、すぐに「僕は2冠してますから」と余裕の笑みを見せた。渡辺は、富岡高3年の2015年に混合複で優勝。16年には連覇を飾っただけでなく、男子複との2冠を達成している。もちろん、最高峰の舞台である五輪の表彰台に到達した2人にとっては、もはや大きなタイトルとは言い難いのが現実だが、それでも決勝戦には、松友の初優勝がかかる。5月23日の決勝戦は、土曜開催。渡辺/松友を見に来る観客も増えることが予想される。決勝でも圧倒的な強さを見せるのか、楽しみだ。

文:平野貴也

平野貴也

平野 貴也

1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。

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