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バドミントン コラム 2023年11月10日

熊本で初開催のバドミントン国際大会、地元に縁ある「シダマツ」、「フクヒロ」が闘志

バド×レポ by 平野 貴也
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志田/松山ペア(上)と福島/廣田ペア

バドミントンの国際大会「熊本マスターズジャパン」が11月14日に熊本県立総合体育館で開幕する。5月から24年4月末までの国際大会は、24年パリ五輪の出場者を決める来年4月30日付けの世界ランキングの対象。初開催となる熊本マスターズジャパンは、BWF(世界バドミントン連盟)ワールドツアーで3番目に価値が高いスーパー500でポイントが高く、世界の強豪が出そろう中、日本もA代表をはじめ多くの選手が参加する。

■気になる2つのランキング、注目はファイナルズ出場権争い

大きな見どころとなるのは、女子ダブルスだ。パリ五輪に1カ国から出場できるのは、2ペアまで。日本は、世界ランキング(11月7日更新時)で4位の福島由紀廣田彩花(丸杉)、5位の志田千陽松山奈未(再春館製薬所)、8位の松本麻佑永原和可那(北都銀行)が、ハイレベルな五輪出場権争いを展開している。

この順位に差をつける可能性があるのが、12月に中国・杭州で開催されるBWFワールドツアーファイナルズ。ワールドツアーの上位成績8ペアのみが参加できる大会で、ツアー最上位のスーパー1000と同等の世界ランキングポイントが付与されるのだが、この大会も1カ国から2ペアしか参加できない。昨年を含めた直近1年間で上位成績10大会分を対象とする世界ランキングとは違い、今年の大会のみで上位成績14大会分を対象とするワールドツアーランキングで出場者を決める。ツアーランキングでは、日本勢の順位は入れ替わり、2位に松本/永原、4位に志田/松山、5位に福島/廣田となっている。熊本マスターズジャパンと翌週の中国マスターズ(スーパー750)を終えると、ファイナルズの出場者が決まる。ライバルに差をつける貴重な大会の出場切符争いが注目される。

■熊本が活動拠点の志田/松山、地元開催は活力かプレッシャーか

五輪初出場を目指している志田(左)/松山

中でも、熊本に縁がある志田/松山と福島/廣田の2ペアは、良いプレーを見せたいところ。志田/松山は、現在の活動拠点が熊本。志田は「五輪レース中で、ファイナルズのポイントもすごく競り合っている。自分たちにとって、大事な試合。熊本で行われることで、この緊張が良い方向に行くか、プレッシャーになってしまうかは、コートに入ってみなければ分からないけど、やることは決まっている。身体と気持ちのコンディションを整えて、熊本で行われる国際大会を楽しめるように、準備をしていきたい」と意気込みを語った。

スピード感のある攻撃的ラリーで点を奪う。5月の五輪レース開幕直後は結果が出ずに苦しんだが、夏以降は上り調子。10月には、アジア大会団体戦で世界ランク1位の陳清晨/賈一凡(チェン・チンチェン/ジア・イーファン=中国)を破り、続くデンマークオープン(スーパー750)で準優勝と、勢いを増している。

松山も「熊本での国際大会は初めてだし(福岡出身で地元から近い)、九州で試合をできるのも嬉しい。観に来てくれる人には、自分たちのプレーを出して、それを見て面白いと思ってもらえたらいい。でも、自分たちとしては、今の状況では勝ちにこだわりたい。楽しみながら、勝つことができるような準備をしていきたい」と気持ちの準備を強調した。1回戦の相手は、過去6戦全勝のアイムサード姉妹(タイ)。まずは、初戦を突破し、自然体で戦えるようにしたいところだ。

■熊本出身の福島/廣田は、中国の注目若手ペアと対戦

故郷での国際大会で飛躍を狙う福島(右)/廣田

福島/廣田は、現在は岐阜県を活動拠点にしているが、ともに熊本県の出身。福島は「地元なので、知り合いや友人が観に来てくれると連絡をもらっていて、すごく楽しみ。思い切り、楽しみたい。ただ、初戦から本当に強いペアが相手なので、一戦一戦、やり抜くしかない」と初戦に照準を定めた。

1回戦で対戦するのは、20歳の譚寧(タン・ニン)と19歳の劉聖書 (リュウ・シェンシュ)のペアで、初対戦となる。五輪レース開幕時の世界ランク57位から半年で10位まで上げてきた、最も勢いのある中国の若手だ。10月にアークティックオープン(スーパー500)、フランスオープン(スーパー750)を優勝。日本の松本/永原や志田/松山も破っている、危険な相手だ。福島は「攻撃させて形を作られると、すごく強い。若いけど、技術も長けていて、低い展開も強い。低い展開から(相手が球を)上げたときに一撃というパターンが印象的。低い展開でも、大きな展開でも、レシーブができないと勝てない。レシーブをしながらどう攻めるか」と攻略のイメージを描いていた。

福島/廣田の特長は、鉄壁のレシーブだ。長期戦に持ち込めば、勝算は高まる。しかし、廣田が右ひざ前十字じん帯損傷を負って強行出場した東京五輪(ベスト8)以降、福島が30歳、廣田が29歳と年齢を重ねていることや、国際大会の日程の過密化により、コンディショニングに苦しんでいる。粘り勝つのがスタイルだが、身体の負担が大きくなり、足腰の動きに制限がかかれば、守備の基盤が揺らぐ。得意の守備から、いかに主導権を奪って攻撃に出るかが課題だ。

廣田は「地元で国際大会があるのは、楽しみ。初戦から厳しい戦いですけど、自分らしいプレーを見せたい。中国ペアは若手でどんどん攻めてくると思うけど、自分たちも向かっていく気持ちで戦いたい」と意気込みを語った。

■熊本に縁のある2ペア同士の対決なるか

序盤を切り抜ければ、熊本に縁のある2ペアの対決が実現する可能性もある。志田/松山と福島/廣田は、ともに勝ち上がれば準々決勝で対戦するドローだ。日本勢対決になれば、五輪出場権や、それを左右する可能性があるBWFワールドツアーファイナルズ出場権の争いという観点から、大一番となる。福島/廣田は、世界ランクでは日本勢トップだが、ワールドツアーファイナルズの出場者を決めるツアーランキングでは日本勢3番手。自身の負傷により欠場した大会があった廣田は「現状をしっかり受け止めて、やるしかない。そういう状況にしたのも自分。(気持ちを)吹っ切ってやるしかない」と決意をのぞかせた。

上記2ペアと五輪出場権を争っている松本/永原は、勝ち上がれば準々決勝で世界ランク1位の陳清晨/賈一凡(チェン・チンチェン/ジア・イーファン=中国)と対戦するドロー。準決勝まで進めば、志田/松山や福島/廣田がいるヤマの勝者と激突する。比較的近いヤマの中に日本のトップ3ペアが入った熊本マスターズジャパン。どのペアが抜け出すか、注目だ。

文:平野 貴也
平野貴也

平野 貴也

1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。

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