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銀メダルを獲得した奈良岡
27日までコペンハーゲンで行われたバドミントンの世界選手権で、日本勢は3つのメダルを獲得した。最上位は、日本男子シングルスの奈良岡功大(FWDグループ)で銀メダル。決勝で敗れたが涙はなく「去年は、2回戦負け。銀メダルを取れると思っていなかったので、すごく嬉しいです」と喜んだ。女子シングルスで3連覇を目指した山口茜(再春館製薬所)と、混合ダブルスの渡辺勇大/東野有紗(BIPROGY)が銅メダルを獲得した。
■男子単の奈良岡功大、世界一にあと一歩届かず
レベルアップに意欲を示す奈良岡
唯一、最終日まで勝ち残ったのは、出場2度目の奈良岡だった。中国のエース石宇奇(シー・ユーチ)を破って初のメダル獲得が確定し、完全アウェイの雰囲気だった準決勝も西本拳太(ジェイテクト)を破って4強入りしたアンダース・アントンセン(デンマーク)を撃破。決勝戦は、同じ22歳のクンラウット・ヴィジサーン(タイ)と対戦。
クリアを延々と打ち合い、観客からブーイングを浴びることもあったが、先にミスをしない丁寧なラリーと、高精度のコントロールレシーブで第1ゲームを先取。しかし、第2ゲームを18オールから3連続失点で落とすと、第3ゲームは相手のスピードについていけず1-2の逆転負け。奈良岡は、準決勝で左足を痛めたことを明かし「スピードを上げようにも上げられず、押されてしまった」と1時間49分の激闘に敗れた一戦を振り返った。
事前調整を含めてタフな試合を戦い抜く力が足りていないが、準決勝まですべてストレートで勝った点は、自身も認める成長部分。「多分、相手は、決勝戦の勝ち方が分かっている。俺は、決勝での経験が少ない。もっと経験していきたい」とレベルアップに意欲を示した。世界選手権の準優勝は、24年パリ五輪メダル候補への名乗り。今後1年の成長が楽しみだ。
■女子単の山口茜は3連覇ならず銅、奥原希望が復活8強入り
3大会連続メダル獲得の山口
日本勢初の3連覇を目指した山口は、準決勝でキャロリーナ・マリン(スペイン)に敗れて銅メダルだった。スピードで上回った第1ゲームをリードしたが、18-14から4連続失点。相手の勢いを止められず、20-19のゲームポイントからも逆転負け。「落ち着こうと思ったところで、スピードも落ちて主導権を握られた」と悔やんだが、失った流れは取り戻せず、第2ゲームもマリンのアグレッシブなラリーに後手の対応。ストレートで敗れた。
偉業達成ならずも3大会連続のメダル獲得。大会前に右足を負傷するなど万全ではなく、飛び回るように早いタッチを連続するプレーが難しい中で「(コンディションを考えて)一旦落ち着いて、できる範囲でやる。それだけだと主導権を握れないけど、ベスト4まで来れた。場面や相手によっては、ありかなとは思った」と手応えも示した。
この種目では、奥原希望(太陽ホールディングス)が8強入り。1回戦で5カ月ぶりの勝利を挙げると、プサルラ・シンドゥ(インド)、ラチャノック・インタノン(タイ)との優勝経験者対決に勝利。敗れた準々決勝でも、優勝者のアン・セヨン(韓国)から1ゲームを奪う健闘を見せ「2017年の(プサルラ・V.)シンドゥ戦くらい頑張れた。今の自分の120パーセントを出しきれたんじゃないか」と感涙。今季は負傷で欠場が続いており、7月のダイハツジャパンオープンも初戦敗退だったが、戦線復帰を世界にアピールした。
■混合複の渡辺勇大/東野有紗は4大会連続メダルも韓国ペアに完敗
安定感ある戦いを見せた渡辺/東野
混合ダブルスの渡辺/東野は、初優勝には届かなかったが、4大会連続でメダルを獲得した。第2シードらしく初戦から安定した勝ち上がり。3回戦では、東野が試合前に過緊張気味になったというが、試合では笑顔を見せてセルフコントロール。準々決勝では、若手で勢いのあるチェン・タンジェ/トー・イーウェイ(マレーシア)にも2-0で完勝。1ゲームも落とすことなく勝ち上がる安定感を見せた。しかし、準決勝では新星ペアに完敗だった。
相手は、3月の全英オープンで準優勝したソ・スンジェ/チェ・ユジュン(韓国)。21年の王者であるデチャポル/サプシリー(タイ)を準々決勝で破った力は本物だ。渡辺/東野は、サービス周りで優位に立つことができず、劣勢のラリー。第2ゲームの序盤こそ互角に渡り合ったが、次第に相手前衛の女子選手がネット前でシャトルを捕らえる回数が増え、渡辺の強打はことごとくアウトになる展開となり、突き放された。0-2(15-21、13-21)で敗れ、東野は「やっぱり、金メダルが欲しかった。今日の試合に限って言えば、自分たちのプレーが全然できてなかったので、そこは悔いが残る」と悔しがった。
左・左の珍しい組み合わせの韓国ペアは、勢いそのままに決勝戦で世界ランク1位の鄭思維/黄雅瓊(ツェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン=中国)も破って初優勝。スーパー500以上の大会で優勝経験のないペアだったが、一気に24年パリ五輪のメダル候補に加わった。大柄で高い打点から強打を放つ男子の徐承宰は、男子ダブルスでも優勝して2冠を達成。渡辺は敗戦後に「相手の方が強かった。上には上がいると思い知らされた大会」と話したが、新たなライバル出現を強烈に印象付けられた。
■女子ダブルスと男子ダブルスは、メダルなし
ベスト8入りした志田/松山
女子と男子のダブルスは、メダルを獲得できなかった。女子ダブルスで最上位は、ベスト8の志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)と福島由紀/廣田彩花(丸杉)。収穫が多かったのは、志田/松山だ。3回戦では2連敗中だった中西貴映/岩永鈴(BIPROGY)に雪辱。準々決勝では、第1シードの陳清晨/賈一凡(チェン・チンチェン/ジァ・イーファン=中国)を相手にファイナルゲーム16本と中盤まで競り合い、意地を見せた。福島/廣田は、ラハユ/ラマダンティ(インドネシア)に敗戦。相手が得意とする低空戦から逃げられず、第3ゲームで相手に主導権を握られて1-2で敗れた。松本麻佑/永原和可那(北都銀行)は、タン/ティナ(マレーシア)に3回戦で敗れた。
男子ダブルスは、保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)のベスト16が最高。古賀輝/齋藤太一(NTT東日本)も2回戦で東京五輪王者のアーロン・チア/ソー・ウィック(マレーシア)に敗れて早期敗退。混戦種目だけに起こり得る結果ではあったが、上位進出ができず悔しい結果となった。
今季の世界一決定戦というだけでなく、五輪レースにおいて最もポイントが高い点でも注目された大会だが、日本勢で最も大きな動きは、女子シングルスの奥原の復活で、今後の巻き返しが期待できる大会となった。男子シングルスの西本も日本2番手での出場権獲得に前進。ほかに大きな変化はなかった。優勝候補の一角となる山口、渡辺/東野が決勝に進めず、2017年から続いた日本勢金メダルはストップ。若い奈良岡の台頭は好材料だが、パリでのメダル獲得に向けては課題を突き付けられる大会になった。
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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