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早川賢一監督/遠藤大由ヘッドコーチ(BIPROGY)
バドミントンの国際大会「ダイハツジャパンオープン」が7月25日(火)から30日(日)まで代々木第一体育館で行われる。2024年パリ五輪の出場権を争うレースの中の注目大会だ。古くから日本が世界に挑む位置付けで重要な大会として続いているジャパンオープンとは、いかなる大会か。2016年リオデジャネイロ五輪の男子ダブルスでベスト8と活躍し、現在は所属チームであるBIPROGY(旧:日本ユニシス)の早川賢一監督/遠藤大由ヘッドコーチの2人に大会の思い出(前編)と今年の大会の見どころ(後編)を語ってもらった。
■遠藤「どうしても勝ちたいと思ったときに勝てる選手が、本当に強い人」
――学生の時期は別々に出場されていて、社会人1年目からペアでジャパンオープンに出場されています。選手としての思い出は?
(早川) 一つは、大学生の頃に先輩の数野健太さんと組んで出場していた時期があって、2009年の1回戦でクー・ケン・キット選手/タン・ブンホン選手(マレーシア)と対戦したことは、印象に残っています。当時、僕らは世界ランク20位台で、相手は1位か2位。前衛のクー・ケン・キット選手は、僕が好きな選手で憧れがあったので、その選手に初対戦で勝てたことは、よく覚えています。もう一つは、遠藤と組んで五輪レース中の2015年にベスト4に入ったことです。
(遠藤) 僕もベスト4に入った大会が印象に残っています。たしか、あの時に初めて、準決勝から会場を暗くしてコートだけ照明を当てる演出がジャパンオープンで始まりました。日本の大会でも海外と同じような雰囲気でプレーできるようになったなと感じました。
――ジャパンオープンを意識し始めたのは、いつ頃でどんな理由でしたか?
(早川) 中学・高校の頃から大会の存在を知っていましたし、いつか出たいという憧れがありました。当時は、まだインターネットで動画を視聴することができず、情報源は雑誌やビデオが頼りだったので、海外のトップ選手を見られる貴重な大会でした。高校3年生で初めて出場させてもらったときは、ずっと見ていた大会に出場していることで、勝ち負けよりも、すごく楽しかったことを覚えています。
早川さん&遠藤さんインタビュー
早川遠藤さんインタビュー
(遠藤) 僕は学生の頃は、他人事でした。すごいな~と思うだけ(笑)。大学時代にシングルスでも出場していたことは覚えてないです。ジャパンオープンを特別な大会だと意識したのは、社会人になって海外の大会で勝ち始めてから。本当に強い選手は、自国開催の大会で期待に応えて優勝します。タウフィック・ヒダヤット選手(インドネシア)、リー・チョンウェイ選手(マレーシア)、リン・ダン選手(中国)……。それで(期待を受けて)プレッシャーがかかる中、どうしても勝ちたいと思ったときに勝てる選手が、本当に強い人だと思っていました。だから、すごく(日本で)勝ちたかったです。海外の選手は、自国の応援でパフォーマンスが上がるケースが多いような気もしますけど、それが僕には足りなかったです。
■早川「どの大会よりも勝ちたくなり、平常心でのプレーが難しい」
――2013年、14年に全英オープンで2年連続の準優勝をしているので、当時からジャパンオープンでも好成績を狙える力はあったのでは……
(早川) 2013年は、チャイナ・マスターズで準優勝して、翌週がジャパンオープン。2回戦で(前の週には勝った)中国の選手に負けたときは、悔しいというか、自分が情けないと思った記憶があります。前週に結果が出て、今回のジャパンオープンは(タイトルを)狙えるのではないかと思っていたので……。試合中に話し合っても悪い流れを変えられず、ダメな部分が全面的に出た大会でした。さっき、遠藤が言いましたけど、やっぱり、どの大会よりも勝ちたくなるので、平常心でプレーするのが難しい。そういうところが弱かったのかなと思いますけど(笑)。
(遠藤) 2014年もトマス杯(男子団体戦)で初優勝した直後。調子も良いし、ノリノリで行けるかと思ったら、現実は甘くなかったですね(初戦敗退)。
――力がついてもジャパンオープンでは活躍できなかった時期を経て、五輪レース中の15年に4強入りでした。収穫はありましたか?
(早川) ベスト4は、及第点……ですかね。優勝が目標だったので、残念な部分はありました。けど、勝てなかった時期よりは、良かったかなと。「最低、ベスト4」と思っていたので、そこで満足している自分もいれば、いやもう一つ勝たないと、と思う自分もいました。嬉しさ、悔しさが半々でした。
早川賢一監督/遠藤大由ヘッドコーチ(BIPROGY)
(遠藤) 僕は、悔しかった、しかないですね。優勝したかったので。ジャパンオープンは、悔しい思い出しかない(笑)。大会を通じて得たのは、メンタルの部分。勝ちたいときに勝てるのか、平常心でプレーできるのかを試される大会でした。緊張しているなと分かって臨んでいても、相手のコートが小さく見えましたし、自分たちのコートは広く感じました。
(早川) その感覚は分かる。ただ、僕の場合は(遠藤ほど)動けないので、常にコートは広く感じるもので……(苦笑)。調子自体は、試合の日の朝の練習でドライブを打っている時などに分かりますが、調子が悪いときは、一点張りに徹していました。だから、ジャパンオープンは、基本的に一点張り。やっぱり、緊張するので。遠藤は余計に広く感じたでしょうね。
(遠藤) でも、今、話していて思いましたけど、日本で勝てる選手が本当に強い……みたいな気持ちを持ち過ぎていたんですね、多分。そんな気がします。
■試合前日に引退通達?
――日本代表として最後の国際大会も16年のジャパンオープンでした。試合後、ミックスゾーンで取材ができず、暗い場所でお話を聞いて「負けると、ライトないんですね」と言われた思い出があります
(早川) 階段との間のスペースみたいなところ! 最後、ジャパンオープンは出たいと思っていました。僕が競技を辞めるかどうかを決めたのが……いや、その時は決めてなかったか。大会が終わってから……?
(遠藤) リオ五輪の後、一発目の大会がジャパンオープンでした。多分(2人のペアでは)最後の国際大会になると思うって、試合前日の練習が終わってホテルに戻ってから言われました。そうか、じゃあ、飯行くかと(笑)。
(早川) そうだっけ? 一番端のコートで、後輩(佐伯祐行/垰畑亮太)に負けたね。後輩にバトンを渡したつもりだったけど、その後輩が次の試合ですぐに負けて、バトンを捨てられました(笑)。
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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