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バドミントン コラム 2023年3月10日

日本が3種目で連覇挑戦、渡辺/東野は朴HCの3連覇に並べるか=バドミントン全英OP

バド×レポ by 平野 貴也
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混合ダブルスで3連覇を目指す渡辺/東野ペア

バドミントンの春の世界一決定戦、全英オープンが3月14日にバーミンガムで開幕する。年間4大会しか行われないBWFワールドツアー最高峰のスーパー1000。世界中から強豪が集う。世界で最も古い歴史を持つ、権威のある大会だ。日本勢は、前回大会で3種目を制覇。混合ダブルスで2連覇を果たした渡辺勇大東野有紗(BIPROGY)は、3連覇を達成すれば、2014年のタントウィ・アーマド/リリアナ・ナトシール(インドネシア)以来9年ぶり。世界選手権よりも古い歴史を持ち、長らく事実上の世界一決定戦として行われてきた全英OPは、1899年の開始で第113回の開催を迎えるが、同一ペアによる混合ダブルス3連覇は、日本代表を率いる朴柱奉ヘッドコーチ(1989~91年)を含む6組のみ(4連覇は1組)。朴HCの連覇記録に並ぶことについて聞くと、渡辺は「(朴HCは男子ダブルスで4回、混合ダブルスで5回の計9回優勝しており)次元が違うので並ぶという意識はない。あまり意識はしていないですけど、積み重ねていった結果が、そうなれば嬉しいと思います」と謙虚に話した。ライバルは、昨夏に東京で行われた世界選手権の決勝で2人を破ったツェン・シーウェイ/ファン・ヤーチョン(中国)。さらに、21年の世界選手権王者であるデチャポル・プアバランクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)が有力シード。加えて、東京五輪で金メダルを獲得した女子のファン・ドンピンが、長身の22歳フェン・ヤンヅァ(ともに中国)にパートナーを変えたペアが23年に入って2大会連続優勝を飾っており、第5シードだが怖い存在だ。

この種目では、ほかに世界ランク15位(以下、ランクはすべて3月7日更新時)の金子祐樹松友美佐紀(BIPROGY)、19位の山下恭平篠谷菜瑠(NTT東日本)、23位の緑川大輝/齋藤夏(NTT東日本/ACT SAIKYO)も出場する。2024年パリ五輪には、同一国から最大2組の出場が可能だが、5月からの1年間の成績が反映される24年4月30日更新の世界ランクで8位以内に2組入ることが条件となる。五輪出場権獲得レースで上位に入るには、世界ランクを上げて各大会の出場権やシードを得ることが近道。世界ランク2位の渡辺/東野を追って五輪出場を目指すペアにとって、大きなポイントがかかる全英OPは、五輪レースを勝っていくためにも重要な大会となる。

■女子シングルスの山口茜は2連覇に挑戦

他種目でも、日本勢の活躍が期待される。女子シングルスで2連覇に挑戦する山口茜(再春館製薬所)は、世界選手権を2連覇しており優勝候補だ。山口は「伝統や歴史があり、ほかの大会とグレードは同じだけど、みんなが取りたいタイトルという点では、少し違うところもある。その中で自分がどれだけいつも通りの良いプレーができるかが大切」と意気込みを語った。同種目で連覇を果たせば、日本勢としては1974年、75年の湯木博恵さん以来48年ぶり2人目。最大のライバルは、直近7大会で4度の優勝を含めて6大会で決勝に進出している21歳のアン・セヨン(韓国)だ。山口は「若いですし、確実に、成長速度は(自分より)上だと思うので、どれだけ自分が負けずに成長したり、対応したりしていけるか」と成長著しい好敵手に刺激を受けている。2人が主軸となるが、この種目は下位まで差がない混戦模様。過去2度の優勝を誇る奥原希望(太陽ホールディングス)ら他選手も上位をうかがう。日本勢は、ほかに大堀彩(トナミ運輸)、川上紗恵奈(北都銀行)が出場。21年に奥原、22年に山口が優勝しており、日本勢の3連連続優勝もかかっている。

■女子ダブルス、連覇狙う志田/松山を中心に日本勢が4大会連続

もう一つ、連覇を狙うのが、女子ダブルスの志田千陽松山奈未(再春館製薬所)。21年の東京五輪後にぐんと成長してきた、スピード感ある連係プレーを見せるペアだ。22年は、世界選手権、ジャパンOPと日本開催の国際大会2連戦でどちらも上位を逃して悔し涙を流したが、23年は初戦となったインドオープンで優勝。幸先の良いスタートを切った。まだ松山が左足アキレス腱痛を抱えており、志田も直前合宿では右足太ももに痛みを抱えていたため万全の状態とは言い切れないが、志田は「全英OPで優勝を目指すために準備をしてきた。仮に優勝に届かなかったとしても、何か収穫のある、自信になる大会にしたい」と五輪レースに向けた良いステップにしたい考えを示した。この種目も20年に福島由紀廣田彩花(丸杉)、21年に松本麻佑永原和可那(北都銀行)が優勝しており、初戦で第1シードと対戦しアップセットを狙う中西貴映岩永鈴(BIPROGY)を含めた4組で、4大会連続の日本勢優勝を狙う。5月から始まる五輪レースにおいて、国内勢同士の出場権争いが最も厳しい種目。それぞれがより高いシードを得るためにも大事な大会だ。

■男子シングルスは初出場の奈良岡に注目

男子種目では、シングルスで初出場を果たす、第7シードの奈良岡功大(IMG)が注目選手となる。22年後半に日本A代表に昇格後、国際大会で安定して上位に入り、世界ランクを6位まで上昇させて期待を高めている21歳。全英OPと同格で1月に行われたマレーシアOPでは、世界王者のビクター・アクセルセン(デンマーク)に敗れたが、決勝に進出した。前週のドイツOPを1回戦で棄権しているのが気がかりだが、力を発揮できれば再び王者に挑む権利を得る可能性はある。この種目は、アクセルセンが絶対王者だが、以下は混戦模様。1月のインドOP決勝では、22年世界選手権の銀メダリストで若手の代表格であるクンラウット・ヴィジサーン(タイ)が王者を撃破。今大会の1回戦では、クンラウットと桃田賢斗(NTT東日本)が激突する。22年夏のジャパンOPでワールドツアー初優勝を飾った西本拳太(ジェイテクト)や、東京五輪代表の常山幹太(トナミ運輸)も上位を狙う。

■男子ダブルス、エースの「ホキコバ」ペア浮上なるか

男子ダブルスは、世界ランク4位の保木卓朗小林優吾(トナミ運輸)が、日本のエース。21年に世界選手権と年間成績上位8組が出場するBWFワールドツアーファイナルズを制した2人だが、コロナ禍による各国の不参加がなくなった22年は、やや苦戦を強いられた。しかし、それも期待が高まった証拠。タイOP(スーパー500)やマレーシアOP(スーパー750)では優勝しており、トップレベルで戦える実力を備えていることは確かだ。初戦で竹内義憲松居圭一郎(日立情報通信エンジニアリング)と日本勢対決になるが、五輪レースに向けて勢いをつけたいところ。日本勢2番手で世界ランク25位の古賀輝齋藤太一(NTT東日本)は、五輪レース前に世界ランクを上げるポイントをどこまで稼げるか。
どの種目も、優勝や連覇などの結果が求められるだけでなく、五輪レースに向けた状態の把握や自信の獲得という点で試合内容も注目される。五輪レースへ、誰が大きな手応えをつかむのか。最終日の3月19日まで目が離せない6日間となる。

文:平野 貴也
平野貴也

平野 貴也

1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。

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