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山口茜選手
バドミントンの国内最高峰「S/Jリーグ」は、世界に誇る日本のトップ選手を全国各地で見られる唯一の大会だ。今年の夏、国内で行われた2週連続のビッグイベントで2つの金メダルを獲得した女子シングルスの山口茜(再春館製薬所)は、S/Jリーグを通じて得た経験を生かし、世界選手権を連覇する存在へと成長した。世界のトップ選手になるほど、国内大会に出られる機会が少なくなる現状で、山口はS/Jリーグをどのように捉えて参加しているのか。近況を含めて、リモートインタビューで話を聞いた。
――日本代表選手は、国際大会を戦っている期間の方が長いですが、国内のS/Jリーグは、どんな大会だと捉えていますか
普段の個人戦とは違って、チームや会社を背負って戦う団体戦のプレッシャーがあります。難しい試合ではありますけど、チーム一丸となって戦うことの大切さを感じるので、個人としてもチームとしても成長できる大会だと思います。また、少し経験を積んでから思えるようになったことですが、普段は海外での試合が多いですが、全国各地を回って試合を見てもらい、応援してもらえるきっかけを作ることができるチャンスでもあるとも思っています。
――思い出に残っている試合はありますか
私は、1、2年目の最終戦で負けてしまった試合(※日本ユニシス戦で高橋沙也加選手に2年連続敗戦)が印象に残っています。そんなに、すごく緊張した試合ではなかったと思いますが、いつも通りにプレーすることが難しかったです。チームの中に強い先輩もいるのに1本しかないシングルスの試合に出ることの意味とか、社会人1、2年目で新しく背負うものがたくさんある中で、世界で戦っている各チームのエースとたくさん対戦したので、大変ではありましたけど、その分、すごく成長できたとも思っています。S/Jリーグでの経験から、どんなときも、いつも通りの心理状況でいること、準備することの大切さを学びました。今、社会人7年目ですけど、少しずつ、それができるようになってきたと感じていますし「いつも通り」を作る、ということは、普段の国際大会での個人戦にも生かされていると思います。
――まだ25歳と若いですが、チームでは最年長世代となりました。変化は?
最年長になるタイミングは、ほかのチームより早かったと思いますけど、そこまで気にしていません。言葉で伝えるのが得意なタイプではないけど、伝えていかなければいけない立場になってしまったので、練習の姿勢というか集中具合というか、そういうのは、より強くなったかなと思います。同世代の志田千陽と小野菜保がしっかりしていて、やるべきことはちゃんと伝えてくれるので、私が特にやることはないですけど、2人ともダブルスの選手なので、シングルスの選手のみになったときなどに、練習の雰囲気を締まった状態にできていればいいかなと思っています。今は、若い選手が多いチームですし、個々の成長にもつながるリーグなので、そういうところをチームメイトにも感じてもらいたいと思っています。
山口茜選手
――今季の現状は、どう見ていますか(再春館製薬所が属するJブロックは、11月末時点で3チームが勝点2で並ぶ状況。上位2位が決勝トーナメントの出場権を得る)。日本代表選手は、国際大会と重複する日程も多く、なかなか主力が揃わない難しさもあると思います。
厳しい戦いになっていると思います。代表選手が多いとはいえ、まだ迎え撃つような立場ではないので、チームとして向かっていく気持ちを持ってチャレンジしていきたいと思います。代表選手が不在になる試合もあるので、チームワークは本当に大事。シングルスは各チームとも(エースと2番手以下の)力量差がなくなってきていて、以前に比べて誰が出てくるか分からなくなっていて、いろいろな選手が見られるところも面白いところではないかと思います。
――再春館製薬所では、山口選手が不在のときは、郡司莉子選手がシングルスで起用されていることが多いですね
郡司は、元々、上からのショットの打ち方が特長的な選手ですが、最近はラリー力もついてきているので、そこから得意の攻撃につなげていくところを磨いてほしいと思って期待しています。第2戦(丸杉戦、古川佳奈選手に1-2で敗戦)は負けてしまったのですが、ちょっと消極的なプレーになっていたので、2年目の選手らしく積極的にやってほしいですし、試合を見る方にも、次はそこを楽しみにしてもらいたいです。
バドミントン
【インタビュー動画】山口茜選手(再春館製薬所)
――山口選手が思う、S/Jリーグの見どころは?
今は、まだコロナ禍で声援の制限などはあると思いますけど、団体戦はチームの一体感によって、いつも以上に難しい試合になったり、いつも以上のパワーが発揮されたりするところがあるので、そういうところが見どころではないかと思います。
山口茜選手
――演出に注力している会場もありますが、会場ごとの盛り上がりについては、どう感じていますか
まず、盛り上げようという気持ちが嬉しいです。自分たち選手も同じような目線になって、もっとバドミントン界を盛り上げていくチャレンジが必要だと思います。費用等の問題はあると思いますけど、どの会場でも演出など観戦に来た人たちが楽しめる工夫をすることは、ベースにしていかないといけないと思います。自分も小さい頃は、まだどういう大会か分かっていませんでしたが(地元の)福井県で開催される大会は観に行った記憶があります。ジュニアチームみんなで観に行くという感じでした。S/Jリーグが日本中のみんなが同じ気持ちでバドミントンを盛り上げる大会になればいいなと思っています。
――山口選手の「ここを見てほしい」というプレーは?
まずは、見ている人に何か感じてもらえるプレーをしたいと思っています。例えば、子どもだったら、見て格好良い、真似したいと思うようなプレーができたらいいです。具体的には、私の場合は、上からのショットの打ち分けです。異なるショットを同じフォームで打つとか、相手の逆を突くとか。見ている人も騙すくらいの感じでやりたいと思っているので、そこを見てもらえたら嬉しいです。身長が高いタイプではないので、守備で粘り強くラリーを続けることは、見ている側の想像通りだと思うのですが、それだけでなく、自分くらいの身長しかなくても攻撃的なショットで戦えるよというところを体現できたらいいなと思って、頑張っています。
――ここからは、S/Jリーグから少し離れて、山口選手個人に関するお話を聞きたいと思います。10月末のフランスOP出場後、11月は、国際大会には出ず国内にいる時期となりましたが、どのように過ごしていましたか
遠出はまったくしていませんが、ご飯を食べに行く機会は、多かったですね。昨年にお祝いでいただいた、ホテルのお店で使えるお食事券の有効期限が迫っていたので、小野選手とチームスタッフ2人と4人でホテルの高級中華を食べました。美味しかったです。池田雄一監督には、お寿司に連れて行ってもらいました。良いところのお寿司は違うな~と思います。最近のお気に入りのネタは、えんがわです(笑)。ヒラメとタイのえんがわをいただきました。垣岩令佳コーチにも焼き鳥屋さんに連れて行ってもらいましたし、同い年の志田とは何回もご飯に行きました。
山口茜選手
――チーム最年長になると、後輩を連れて行くことも増えますか?
いや、ほとんど、誘われる方です。自分から誘うことは、ないです。
――海外遠征中の食事は、どうしていますか
最近は外出もできますが、お米を持っていくのに慣れたので、部屋でお米を炊いて、お肉とかをテイクアウトしてくるパターンが多いですね。海外の場合、それぞれ試合の時間によって食事のタイミングも変わって来るので、お腹の空き具合も違います。同じ部屋になった選手と一緒に外食するのも意外とタイミングが合わないもので、自分のタイミングでご飯を食べることが普通になりましたね。
――遠征中のホテルの過ごし方は、どんな感じですか
シングルスとミックスダブルスの女子がどちらも奇数だと、ミックスの選手と一緒になることもあります。最近は、大堀彩選手(トナミ運輸)とか、篠谷菜瑠選手(NTT東日本)が多かったかなと思います。遠征先では、部屋割りに関係なく、同じチームのシダマツ(志田/松山奈未)の2人と行動することが多いです。私がほかの選手と2人で行動することはあまりないんですけど、カフェに行くときなど、シダマツの2人が私に声をかけてくれることが多いので、私が相部屋の選手を同時に誘うことは増えたかもしれません。
――そろそろ、取材時間の終わりが迫って来ているのですが、少し不思議な質問を局からリクエストされているので、回答願います。「今から24時間以内にあった、ちょっと幸せだった出来事を教えてください」
えーっと、昨日の社食が、焼きサバでした(笑)。社食の魚料理は、美味しくて、結構レベル高いと思っています。私は、子どもの頃から焼き魚とか食べていましたし、どちらかと言えば(肉より)魚派です。
山口茜選手
――最後に、これからS/Jリーグを見てくれるであろう読者の皆さんにメッセージをお願いします
いつも応援していただき、ありがとうございます。S/Jリーグは(トーナメント形式の)実業団選手権とは違った団体戦の盛り上がりもあると思いますし、団体戦だからこそ出てくるようなプレーもたくさんあると思うので、現地でもテレビでも、見て楽しんでいただけたら嬉しいです。
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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