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奥原希望(太陽ホールディングス)
歴史ある大会の最終日、出場選手のリストは日の丸だらけとなった。バドミントンの全英オープンは21日に全日程を終了し、男子ダブルスの遠藤大由/渡辺勇大(日本ユニシス)が、同種目では日本勢初となる連覇を達成した。また、渡辺は東野有紗(日本ユニシス)と組む混合ダブルスでも3年ぶり2度目の優勝を果たし、日本勢としては初となる同一年で2冠の快挙となった。渡辺は「すごく嬉しい大会になった。(国際大会での2種目優勝の)最初の経験。勝ち切ることが最大の目標だし、達成できて素直に嬉しかった」と喜んだ。1989年、90年に男子ダブルス、混合ダブルスの2種目制覇を果たしている元韓国代表の朴柱奉ヘッドコーチも「パフォーマンスも結果も本当に素晴らしかった。男子ダブルスでファイナルゲームまで戦って、混合ダブルスでフィジカルが大丈夫か心配したが、最後まで元気で2種目優勝ができた。日本人では初めて。(歴代優勝者の名が刻まれる)トロフィーで、私と渡辺の名前を確認しました」と話し、賛辞を惜しまなかった。
女子シングルスでは奥原希望(太陽ホールディングス)が16年以来5年ぶり2度目の優勝。女子ダブルスは、松本麻佑/永原和可那(北都銀行)が、前回女王の福島由紀/廣田彩花(丸杉ブルビック)との決勝戦をストレートで制して初優勝を飾った。この種目では、24年パリ五輪を目指す志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)もベスト4と健闘した。日本勢は、世界ランク1位の桃田賢斗(NTT東日本)が準々決勝で敗退した男子シングルスを除く5種目中4種目で優勝。ダブルス3種目は決勝戦が同国対決となり、活躍が目立った。
背景には、ライバル不在が影響している。全英オープンは、世界選手権よりも長い歴史を持ち、古くから権威のある大会。BWFワールドツアーでも最高位のスーパー1000にランクされている。例年ならシーズン序盤の世界一決定戦となる。しかし、現在はコロナ禍で、世界ランク上位の出場義務が課されておらず、東京五輪の出場権獲得レースの対象でもないため(※20年の全英が対象)、中国、韓国、台湾といった東アジアの強豪が欠場。女子シングルスでは世界女王のキャロリーナ・マリン(スペイン)も前週の大会での負傷を理由に欠場した。その上、大会2日目に、渡航便に新型コロナウイルス陽性者がいたことが理由で、インドネシア代表が隔離のため全選手棄権となり、多くの有力選手が不在となった。
朴ヘッドコーチは「4種目で優勝できて良かったが(不参加だった)中国、韓国、インドネシアなどがいる。この大会で、満足は絶対に出来ない。男子ダブルスは、インドネシアや中国のペアがいても良い勝負ができるくらいのパフォーマンスだったが、女子ダブルスは、もう少し動きのスピードやディフェンス力のレベルアップが必要。混合ダブルスは、日本に選手が少ないが、男子ダブルスと練習ができれば、中国などのペアとも良い勝負ができるようになる」と1年以上も東京五輪のメダル候補と直接対決ができていない部分を考慮し、さらなる成長を求めた。
それでも、1月にタイで行われた3大会を欠場(出発時に桃田が新型コロナウイルスの検査で陽性判定を受けたため、濃厚接触の可能性が否めずチーム全体で欠場)した日本勢にとっては、久々の国際大会で貴重な場。朴ヘッドコーチは「到着してから(PCR検査の)結果が出るまでは、練習ができず、部屋で練習を行わないといけなかった。次の遠征でも同じ状況になる可能性がある。試合だけでなく、準備の面で良い経験ができた」と大会が定めるコロナ対策に応じた調整面を含め、久々の国際大会の経験を前向きに捉えていた。
東京五輪に向けたシミュレーションとするには、強敵不在の状況は残念だったが、日本の選手が勝ち進み、多くの試合を経験できたことには、価値がある。
遠藤大由/渡辺勇大(日本ユニシス)
男子ダブルスは、遠藤/渡辺が2-1(21-15、17-21、21-11)で園田啓悟/嘉村健士(トナミ運輸)との日本勢対決を制した。堅い守備から攻撃するスタイルを発揮。ファイナルゲームは12-10と競った中盤から7連続得点で相手を振り切った。渡辺は「タフなゲームになるのは分かっていた。しぶとくラリーを展開できたのが勝利につながったと思う」と試合を振り返った。遠征前の強化ポイントとして話していた、守備から攻撃に移る場面では、空いたスペースへシャトルを沈めて前に出て行くプレーが多く見られたが、遠藤は「僕自身は、まだまだうまくできていない印象。攻撃につなげるときに、どうしても速い展開になってしまい、付いていけなかった」と納得せず、課題を持ち帰った。
女子ダブルスは、松本/永原が2-0(21-18、21-16)で福島/廣田に勝利。松本は「全英に出始めた頃から目標だった優勝ができて嬉しい」と喜んだ。昨年10月のデンマークオープン、12月の全日本総合選手権の決勝で敗れた雪辱。相手の後衛に入った福島をクリアで左右に振り回したり、松本が意表を突いたクロスネットを仕掛けたりと翻ろうした。永原は「全日本総合では、攻撃をし過ぎて裏を取られた。今日は、相手と空間を見て、大きい展開をするように心がけた。2ゲーム目は低い展開でやられていたが、展開を変えていけたのが良かった」とスピードのある相手の反撃を封じながら攻撃を続けられた手応えを話した。
混合ダブルスの決勝戦は、渡辺/東野が2-0(21-14、21-13)で金子祐樹/松友美佐紀(日本ユニシス)を破った。東野は「松友さんはネット前がすごく上手いので、先手を取られず、自分が先に取って、勇大君が楽な姿勢で打てる球を上げさせるようにした」と主眼を置いた前衛の主導権争いで積極的にプレー。終盤、相手の強打を浴びた場面も跳ね返し、付け入る隙を与えなかった。渡辺は「ラウンドを重ねる毎に連係が良くなり、充実した大会になった」と好感触を得ていた。
女子シングルスで優勝した奥原は、準決勝でラチャノック・インタノン、決勝戦でポンパウィ・チョチュウォンとタイ勢を連続撃破。10月のデンマークオープンに続き、国際大会で連続優勝を飾った。コンディションは、デンマークの半分程度と話したが、タイ勢の鋭いショットに持ち前のフットワークで対抗して主導権を奪う力強い勝ち方。「パフォーマンスのアベレージは徐々に上がってきてくれているのかなと感じている。コンディションが悪い中でも結果を出せたのは、収穫」と自信に満ちた表情で大会を振り返った。
男子シングルスの桃田は、20年1月の交通事故による長いブランクを経て1年2カ月ぶりの国際大会に挑んだが、優勝したリー・ジージァ(マレーシア)に準々決勝でストレート負け(16-21、19-21)。朴ヘッドコーチは「フィジカルや動きに問題はなかったが、久しぶりの試合で、絶対に勝たなければいけないというプレッシャーがあったと思う。逆に今回負けてリフレッシュしていけると思う」と心配した様子はなく、巻き返しを期待した。
日本代表は帰国後の隔離生活を経て、今後は、5月に開催予定のインドオープンに向けて再び調整する。東京五輪でもメダルを量産すべく、貴重な実戦の場で磨きをかけて行く。
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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