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試合が終わった後、表彰式を眺める日本の記者は、一様に興奮していた。日本勢同士で行われた決勝戦は、壮絶な試合となった。チャンピオンシップポイントを奪われてからの大逆転。勝ったのは、前回銀メダルのペアではなく、初出場の長身ペアだった。世界バドミントン選手権(中国、南京市)は最終日となった5日に各種目の決勝戦を行い、松本麻佑、永原和可那組(北都銀行)が2-1(19-21、21-19、22-20)の逆転で福島由紀、廣田彩花組(岐阜トリッキーパンダース)を下し、世界を驚かせる初優勝を飾った。
先に書いておくが、この試合は見て損をしない。放送局の一つであるJスポーツのサイトに掲載する記事だから、ではない。日本勢対決で最初はそれほど興味を示していなかった中国人の観客が、途中から歓声と拍手を送るようになった試合だ。スコアだけを見ても想像できるかもしれないが、互いに一歩も引かない熱戦で、勝負の結末もドラマチックな展開だった。ダイジェストでも、ハイライトでも良いので、必ず見てほしい試合だ。
しびれるゲームの内容を少し追う。第1ゲームは、松本、永原組の攻撃力が目を引いた。本来は永原が前衛、177センチで長身の松本が後衛。しかし、今大会では前後が入れ替わる展開でも得点を多く重ねた。この試合でも、ノーロブの展開を狙う永原が後衛からこれでもかと言わんばかりにスマッシュを連打。容易にはクリアを打たず、攻め続けた。甘い球が返れば、松本が高い打点から相手コートにたたきつけた。一方の福島、廣田組は、終盤の勝負所で仕掛けた。松本のミスが続き、最後は、福島の素晴らしいサービスレシーブで決着。素早く相手のバック奥へ飛ばして21-19で第1ゲームを制した。
第2ゲームは、松本、永原組が取り返した。永原はスタミナ切れを恐れずにスマッシュを連打。折り返しの11点目では、福島がネット前返しを狙った球を、松本が飛び付いて強烈なプッシュでたたき落として11-8とした。福島、廣田組も廣田の強打で応酬して中盤から後半にかけて追い上げたが、終盤に福島がミスを連発。最後も手前に落とそうとした球がネットに捕まり、松本、永原組が21-19で制した。
日本勢同士の壮絶な試合は、ファイナルゲームにもつれ込んだ。意地を見せ合う、スーパープレーのオンパレード。16-19からの展開では、42球におよぶ長いラリーに歓声が起きた。終盤は、素早いラリーと好レシーブの応酬で会場が大いに沸いた。最後は、福島、廣田が20-18でチャンピオンシップポイントを迎えたが、廣田のクロスショットが外れて同点。松本がスマッシュを決めて21-20で逆王手をかけると、ラリーから福島がストレートに放ったスマッシュがアウト。両手を突き上げる初出場Vペアとは対照的に、2大会連続銀メダルとなったペアは、崩れ落ちた。
日本のバドミントンファンにとっては、少し複雑なカードだったが、誇らしい一戦だった。試合後は、銅メダルの米元小春、田中志穂組(北都銀行)を含めて3組が表彰台に上がり、日の丸が3つ掲揚される壮観な景色を見ることができた。記録と記憶、どちらにも色濃く残る、世界一決定戦だった。
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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