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スキー コラム 2025年10月20日

ミラノ・コルティナ 五輪とその先へ。安食真治HCが語るアルペン日本代表の未来戦略

ウィンタースポーツコラム by J SPORTS 編集部
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安食真治HC

◆安食真治(あじき まさはる)ヘッドコーチ

全日本スキー連盟アルペンチームHC(ヘッドコーチ)。ユース選手も含むジュニアチームのコーチも兼任し、一貫した育成強化システムの運用を目指す。

―― いよいよ五輪シーズン(ミラノ・コルティナ冬季五輪)ですが、ナショナルチームはどういう活動方針でしょうか?

五輪が大きな課題になります。五輪チームと、その次の五輪に向けたチームの大きな2つです。

目標としても、五輪15番以内とジュニア世界選手権の15番以内と大きな2つがあります。まずは五輪に向けて、五輪チームには1月19日まで全力のサポート、そして選手にも全力の活動をしてもらいたいと思います。

アルペンスキー FIS ワールドカップ 2025/26

―― 今、日本は五輪の出場枠が男女1枠ずつだと思いますが、まだ枠が広げられるチャンスがありますね?

出場枠の再配分が1月18日まで。そこまでに中国での「ファーイーストカップ」もありますし、ワールドカップでその枠を勝ち取っていくこともあります。十分に時間もありますし、そのチャンスもあると考えています。

―― 五輪シーズンですが、トップカテゴリーの1つ下の選手たちに向けてはどういうことがテーマになっているでしょうか

これまで育成段階の選手たちには、アジアを拠点にまず土台づくりをしようと考えていました。その土台づくりに約3年ぐらいかかりましたが、その3年でしっかりとアジアで戦えるベースづくりができ、次のフェーズに行こうというのが今シーズンの目標になっています。

次の目標はヨーロッパを拠点とした、ヨーロッパでの基礎づくりです。この育成チームでは、ヨーロッパで100日遠征を計画しています。

―― どのくらいの年代が対象になりますか?

大学生から下は高校生までですが、できるだけそこも幅広く考えながら、4年、8年というスパンでの強化を考えていますので、年代ごとにしっかりと連れていきたいと思っています。

4年後、8年後も見据える安食真治HC

―― 世界ジュニアでのメダルですが、石井智也選手以来(2009年)しばらく出ていません。ここはどういう戦略でいかれますか?,

世界ジュニアで活躍できるのは、確実に将来ワールドカップで活躍していける登竜門ととして、とても大切なことだと思っています。

今、日本の選手たちがヨーロッパでの経験や、世界で戦う経験が不足している。だからこそ、次のフェーズに上げて、100日間、まずヨーロッパでFISレースやヨーロッパカップを通じて経験値をしっかり上げていく。その先にジュニア世界選手権があると考えています。

今年、表彰台まで上がれるかは、まだまだ未知数なところがありますが、この4年、8年という強化、育成を考えたときには、確実に1つ1つ上がって、将来の五輪のメダリストまで強化していきたいと考えています。

―― ヨーロッパに行くのは何人くらいになりそうですか?

ヨーロッパで100日遠征をしっかりやって、強化をしていく選手たちは8人ぐらいです。

―― 場所的はどこになりますか?

中央ヨーロッパから北欧まで考えています。経験値を増やしながら、また戦略を持ちながら、中央ヨーロッパを中心に、例えば北欧にレースに行く、中国にレースに行くということもあると思います。それは遠征の中の1つのレースとして、レース出て、またすぐヨーロッパに戻ってくるというような、そんな活動を計画しています。

―― 渡邉愛蓮選手が「遠征で休む、次に行く、これも戦いだ」という話をしていました。

遠征で大会開催地に早く入って調整することも大切ですが、ヨーロッパカップやワールドカップを転戦していく中では、大会の前日や前々日に入ることはスタンダードです。そういった活動を将来に向けて体験していくことも、とても大切です。

もう1つは体力的な基準も設けて、遠征の参加だったり、育成の段階で基準を設けています。そう考えていくと、レース前のトレーニングがしっかりしてくるわけですから、レースの日はアップも含めて5本、10本しか滑らないので、むしろ休養に近いぐらい、身体に負荷がかからない、それくらいタフな選手を求めています。

―― 五輪出場枠確保は、日本のチーム力になります。それを考えると、今年だけでなく、2030年に向けた戦いが今から始まっていますね?

今から4年、8年後の強化、戦略は始まっています。例えば、このミラノコルチナに向けての五輪の枠は、GSのスペシャリスト、スラロームのスペシャリストが、それで枠を獲得することもできますが、その後の再配分は、2種目の合計からのランキングになります。

今の日本の実力や段階を考えたときには、この2種目をしっかりと両方とも強化をして、技術系のレベル自体を上げていく必要があります。ですので、特に育成段階の選手たちにはGSだけ、スラロームだけではなく、両種目、もしくはスピード系までも入れた強化をしていくといった全体的な底上げが、4年後の枠の拡大につながると考え、もうスタートしています。

―― ヨーロッパに8人ほどで遠征する選手たちは、ヨーロッパで高速系にチャレンジ、トレーニングすることもありますか?

スピード系のトレーニングはすでに計画をしています。レースについてはこれからですが、2シーズン前に中国でダウンヒルを経験して、その時の選手のパフォーマンスを見ると、初体験でしたが選手たちのポテンシャルがあると実感しました。今後はヨーロッパでもスピード系にチャレンジしていけるようにしたいと思います。

―― U16プロジェクトはどうですか?

「アルペンU16(アンダー16)強化プロジェクト」を実施いただいて、選手たちが確実に入ってきていますし、ナショナルチームにも、毎年そこからしっかり入ってきています。若い中学生の選手たちは、「アルプチーム」だったり、「U16プロジェクト」をすごく目標にしてくれているということを実感しています。

ここで育ってきた選手たちが、早くナショナルチームと一緒に活動していけるよう、私たちはすごく期待をしています。今後の「アルペンチーム」としてのチーム体制を作る上でも、「U16」「アルプチーム」から、ナショナルチームに引き上げていけるようなシステムづくりを、今行っています。

―― U16の選手たちに必要なことはどんなところだと思われますか?

日本選手の技術力は高いものもあります。でも、ヨーロッパの選手と違うのは、場慣れや経験が全然違います。何度も挑戦しても折れない心だったり、何度も何度も挑戦するような精神だったり、そういうものがすごく必要だと思います。そういう気持ちの強さがあると、トレーニング量も増やしていけます。

日本の環境はどうしてもヨーロッパより劣ってしまう。それでヨーロッパに行って、ヨーロッパの選手たちと、同じ1日の滑走量では年間通しての滑れる量が違う。そうなると、もう追いつくところがないと考えています。

だからこそ、まず体力をしっかりとつける。そして、その体力を持ってヨーロッパに合宿に行った時には、ヨーロッパの選手以上に、しっかり技術を習得し、成長してくる。それが必要なので、いろんな体力面や1日滑れる量でも、タフな選手を求めています。

―― 今年のプロジェクトで、新たに強化するポイントはありますか?

「U16プロジェクト」をさせていただいて、若い選手たちの熱い思いをすごく感じています。

これからはナショナルチームとの練習もそうですが、今まではU16からすぐにナショナルチームに入れる基準は設けていなかったのですが、パフォーマンスによって、早くナショナルチームの一員としてやっていけるように、選手たちを見ていきたいと考えています。早い段階から選手たちを一緒に強化、育成をしていくことを進めていきたいと思います。

―― 選手にもそれが伝わるといいですね?

こういった合宿を通じて、私たちがU16の選手たちに対して期待していることを、何度も何度も伝えていきたいと思います。また、何よりも皆様のサポートによって、夏の合宿から定期的に合宿を行えることで、選手と関われる場をいただけていることに、すごく感謝しています。

―― 発掘・育成・強化のサイクルで、U16に重要なキーワードは何でしょう?

すでにジュニア五輪を通じて、選手たちが発掘されたり、光っている選手を見つけることはできています。

その他に、アルペンチームのユースチームで「B指定」を作りました。これは各ブロックから推薦で選ばれています。そうやって私たちが、まだ見つけられていなかった選手たちとも一緒にやっていきたいと思っています。

難しい課題になりますが、ちゃんと強化をしつつ、日本で頑張っている選手たちを、どうやって見つけていくかが、すごく課題だと思っています。

―― どんな選手でもまだチャンスはあるということですね?

もちろんです。今度、フィジカル合宿をしますが、フィジカルの部分で輝いている選手を、夏の選考合宿に呼んだところ、その選手が選考を勝ち獲ったりしていています。一概にその時の、その1シーズンの成績だけでは、選手を見つけることができないと思っています。

できるだけ幅広く、地域の皆さんにも協力していただきながら、いろいろ情報をいただき、一緒に協力しながらやることが、日本のスキーをレベルを上げるには大切だと考えています。

J SPORTS編集部

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