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21世紀初の快挙達成! マディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組がアイスダンスで世界選3連覇| ISU世界フィギュアスケート選手権2025 アイスダンス レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部マディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組は世界選手権3連覇を達成
1位 マディソン・チョック/エヴァン・ベイツ(アメリカ)
陶酔と興奮。鳴り止まぬスタンディングオベーション。32歳と36歳にして全盛期を謳歌するチョック/ベイツ組が、母国アメリカで開催された2025年世界選手権で、3年連続表彰台の最上段に上がった。アイスダンスでの世界選3連覇は21世紀に入って初めて。
「ただただ興奮しています。まるで現実離れしていて、すべてがイージーでスムーズに流れていきました。それでいて私たちは、一瞬一瞬を生きていた。特別な気分です」(チョック)
リズムダンス(RD)は、まさしく「これぞ完成形」という出来だった。アメリカンヒットパレードのような楽しく軽快なプログラムには、シーズン開幕時には大量11曲が使われていたが、GPファイナルや四大陸では7曲に減り、そして今大会はさらにスッキリと6曲に。最後に削られた曲はYMCAで、正確にはワンフレーズだけ使われているが……パターンダンス中に両腕を使ったジェスチャーをする必要がなくなったせいか、同要素で自己最高の得点を記録した。その他のエレメンツでも、まんべんなく高い出来栄え点(GOE)を積み重ねた。
スコアの90.18点は、シーズンベスト(SB)にして、全参加者で唯一の90点超え。堂々たる1位でフリーダンス(FD)へと駒を進めた。
冒頭のローテーショナルリフトからコレオスピンまでの流れで、ぐるぐると目が眩むような世界へと引き込まれ、そのまま夜の奥深くまでトリップしていくようなプログラム、FD「テイクファイブ」でも、チョック/ベイツ組は贅沢な時間を作り上げた。得点表には、高いGOE加点を意味する5と4がずらりと並んだ。演技構成点(PCS)は実質的なパーソナルベスト(PB)で、3項目すべてで9点台後半。「コンポジション」に10点満点をつけたジャッジもいたほど。
ただプログラム後半のコレオツイズルで、動作間に3ステップ以上入れたとして「!」マークが付され、また最後のリフトでは珍しくレベルをひとつ取りこぼした。
チョクベイ組の絶対的な首位は、それでも揺らぐことはなかった。FD131.88点で2つ目のスモール「金」メダルを勝ち取り、総合ではSBの222.06点で大きな金に輝いた。
アメリカのカップルとしては、史上初の、通算5度目の世界選表彰台。その上、その5回が10年間にまたがっているというのは――初めてのメダルは2015年大会――、アイスダンス界では前例のない快挙だ。
「この地に乗り込んでくるまで、3連覇のことなど考えませんでした。ひとつひとつが独立した大会だからです。僕たちはただ可能な限りの準備をして臨んだだけ。おかげで最高の滑りを見せることができました。もちろん僕たちの目標はミラノで表彰台の頂点に立つことで、なにがあろうともそれは変わりません」(ベイツ)
2位 パイパー・ギレス/ポール・ポワリエ(カナダ)
「金を獲りに来た」と宣言し、いつも通り、正々堂々真正面から勝負を挑んだカナダ組。たしかに、チョクベイ組との直接対決を制して金に輝いた四大陸の再現は、叶わなかった。それでも極めて密度の濃い上質なパフォーマンスを2本揃え、2年連続の銀メダルを持ち帰った。
「演技が始まった瞬間から、穏やかな気持ちでした。このプログラムを、最後にもう一度、楽しむことだけを心がけました。重要な大会ですべてを出し切れたことは、本当に特別なことです。自分たちを誇りに思います」(ギレス)
RDでは最高にキュートなバービー&ケン……いや、本人たち曰く「若かりし日のパイパー&ポール」が、氷上をカリフォルニアのビーチに変えた。細かい工夫が散りばめられたエレメンツの数々を、33歳のベテラン2人はこともなげにスイスイこなし、そのすべてで高いGOE加点を得た。唯一残念だったのは、ツイズルが両人ともにレベル3にとどまったこと。
クラシック→ポップス→タンゴで三重入れ子構造のFDは、浮遊感にあふれ、今大会も見る者をここではないどこかへと誘った。特に冒頭のリフトは、ギレスがまるで彫像のように美しく、ジャッジ9人中6人がGOE満点の+5(残る3人は+4)をつける至高の仕上がり。これはチョクベイ組のコレオステップシークエンスと並び、今大会のRD・FDを通して最高の評価だった。また作品としての完成度の高さが評価され、PCSでSBを更新した。
「シーズン終盤に向かっていくにつれて、希望通りのプログラムへ成長させられたと実感しています。目標としていた優勝を逃したことは少し残念ですが、同時に、今シーズンの取り組み方を非常に誇りに思っています」(ポワリエ)
3位 ライラ・フィアー/ルイス・ギブソン(イギリス)
2年連続の4位から、ついに大きなステップを上がった。今シーズン序盤から続く正のスパイラルに乗って、フィアー/ギブソン組が初めての世界選メダルをつかみ取った。イギリスにとっては、全種目を通じて1984年以来41年ぶりの快挙だった。
「表彰台の上に立ち、観客席を見上げながら、『僕らは本当に成し遂げたんだ。世界選手権の表彰台に立っているんだ。信じられないようなことだ』とぼんやり考えました。こんなことが可能だなんて考えてさえいませんでした。とてつもないことです」(ギブソン)
音楽が鳴った瞬間に、見る者の興味をぐっと引き寄せるキャッチーなRD「フリーク」は、今季最高レベルの仕上がりを見せた。前半のステップ類は丁寧にこなし、後半のコレオステップからにかけてエンジン全開。特に締めのリフトでは、チョクベイと並び全体で首位
の加点を得た。
3位として挑んだFDのビヨンセメドレーでも、まさしく現代アイスダンス界の申し子らしく、「フィアギブ」はパワフルに舞い踊った。「クレイジー・イン・ラヴ」に音楽が切り替わってからのコレオステップシークエンスでは、全身でポジティヴなエネルギーを爆発させ、盛り上がりも最高潮!
最後のリフトがまさかのタイム超過違反で減点1を取られ、FDだけなら6位に沈んでしまったのは残念だったが、総合得点ではわずかな差で3位逃げ切り。来る五輪のメダル候補に一躍浮上するとともに、来季1月、母国イギリスで開催される欧州選手権を世界選メダリストとして迎える。
4位 シャルレーヌ・ギニャール/マルコ・ファッブリ(イタリア)
過去2大会連続で表彰台に立ち、3年連続ヨーロッパの王座を独占してきたギニャール/ファッブリ組は、わずか0.65点差でメダルを逃した。35歳&37歳のベテランカップルにとっては、悔しい4位となった。
普段はたしかな技術力で知られるイタリア組だが、コンマ単位の争いの中で、小さなレベルの取りこぼしが痛手となった。RDではツイズルで2人ともレベルを落とした。さらに大の得意としてきたパターンダンスでレベル「1」の判定。今回で13回目の世界選を戦う大ベテランに、同エレメントで最低レベルがついたのは8シーズンぶり2度目……。
気持ちを切り替え臨んだFDは、レベルの点では問題がなかった。ただ1月のユーロと比べると、プログラム後半のGOE加点が明らかに少なかった。なによりシーズン序盤から賛否両論を呼んだロボットダンスで、最後までPCSが伸び悩んだ。過去2年と比べると、1点ほど低く抑えられている。
「シーズン最高レベルの演技ができましたし、このパフォーマンスなら表彰台に上がれると考えていました。厳しい結果です。しっかり時間をかけて軌道修正をしていかなければならないと考えています」(ファッブリ)
カレポノ躍進、スマディク急台頭
クリスティーナ・カレイラ/アンソニー・ポノマレンコ(アメリカ)は、地元観客の前で、スケールが一段と増した骨太の演技を披露した。1年前のワールドで出したPBを両プログラムで大きく更新し、着実に階段を上がり、キャリア初の世界選トップ5入りを果たした。
結成2年目のオリヴィア・スマート/ティム・ディエク(スペイン)もまた、PBを2つ並べた。しかも今季屈指の名作、FD「デューン」で、3位に飛び込む快挙。それぞれ別パートナーと長いキャリアを持つ2選手にとっても、スペインアイスダンス界にとっても、世界選スモールメダルと総合6位は史上最高の成果となった。大会最終日には、このFDでISUアワード「ベストコスチューム賞」も受賞した。
22位 吉田唄菜/森田真沙也(日本)
初めての世界選では、プログラムの最初から最後まで「すごく楽しんで滑れた」。鮮やかなスピードで観客を魅了し、アリーナ全体が大いにわいた。
残念ながら目標としていたRD70点超えは叶わず、FD進出も0.4点差で果たせなかった。ただミッドラインステップシークエンスで2人揃って初めてレベル3に達し(同要素だけなら12位に該当)、パターンダンスも着実にレベル2と、足元の確かさを証明。技術点では自己ベストを0.3点更新した。
「楽しかった気持ちと悔しかった気持ちが両方あります。自分たちの満足のいく演技ができたこと、目指してきたレベルもしっかり取れたことは、本当にうれしかったです」(吉田)
文・J SPORTS 編集部
J SPORTS 編集部
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