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フィギュア スケート コラム 2025年5月30日

三浦璃来/木原龍一ペアが世界一に返り咲き!2位とわずか0.71点差で頂点に | ISU世界フィギュアスケート選手権2025 ペア レビュー

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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2年ぶりとなる世界選手権制覇を達成した三浦璃来/木原龍一組

1位:三浦璃来/木原龍一(日本):再び世界の頂へ

最初から最後まで健やかに走ってきたシーズンを、金メダルで締めくくった。日本ペアの三浦璃来/木原龍一組が、笑顔で、2年ぶり2度目の世界選手権優勝を成し遂げた。

「1度目の優勝をしたときは、素直に『嬉しい』だったんですけど、やっぱりこの2年間、怪我であったり、たくさんの苦労だったりと、上手くいかないことがあった中で、こうして優勝することが出来て、本当にいろいろな感情が混ざり合っています」(三浦)

ゾクゾクするような緊迫感で、アリーナを満たした。前半のソロジャンプこそ回転不足が取られたが、演技の質や熱量も、リンクを鋭く切り裂く凄まじいスピードも、最初から最後まで一切落ちなかった。ステップシークエンスでは衝動と静寂のコントラストを見事に描ききり、演技構成点(PCS)は今季初めて2つの項目で9点台に乗せた。カップルとして今季ここまで過去最多の6試合を経てきたからこそ、新しい表現力に挑戦したショートプログラム(SP)「黒くぬれ!」は、ひとつの作品として完成の域に達した。

「今シーズンここまで、『楽しむ』ということが、なかなかできていませんでした。でも、今日は楽しみつつ、しっかりとパフォーマンスをすることができました」(木原)

2位に1.96点差をつけ、76.57点でSP首位に立った「りくりゅう」は、フリースケーティング(FS)でも自分たちにできる最高の演技を披露した。3連続ジャンプと2つのスローで出来栄え点(GOE)にマイナスがついたが、それ以外のエレメンツは、減点を補って余りあるほどの見事な出来。特に3つのリフトは、ポジションの美しさと移動距離の長さで、いずれもライバルたちを大きく圧倒するGOE加点を得た。力強く情熱的な「アディオス」の世界観を、全身で表現するコレオシークエンスもまた、誰よりも高い評価で絶賛された。

たしかにFS技術点は、ほぼノーミスで仕上げたミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ/ニキータ・ボロディン(ドイツ)には及ばなかった。得点自体も三浦/木原組はシーズンベストの143.22点を出したが、ドイツ組のパーソナルベスト(PB)145.49点を上回ることはなかった。それでも、プログラムの成熟度やスケーティングスキル、そして2人のカップルとしての完成度が試されるPCSでは、やはり三浦/木原組が1.15差と絶対的なリードを誇った。

「ベストの演技ではありませんでした。小さなミスがいくつもありました。ただシーズンが進むにつれて、今までやったことがないような表現ができるようになってきていて、今大会はまた新たな成長を感じることができました」(三浦)

総合得点は219.79点に達し、わずか0.71点差で、りくりゅうは首位の座を死守。世界一に返り咲くとともに、2024/25シーズンランキング1位の地位も確定させた。……つまり2年前に日本ペアとして史上初めて世界選表彰台の最上段に上がった2人が、来シーズンは日本ペアとして史上初めて、世界チャンピオンとして冬季五輪へと乗り込む。

2位 ミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ/ニキータ・ボロディン(ドイツ):シーズン最高のFSを実現

年末にGPファイナルで2連覇を果たし、1月には念願の欧州チャンピオンに輝いたハーゼ/ボロディン組は、2年連続で世界選表彰台に上がった。しかも昨ワールドから順位をひとつ上げ、今回は銀メダル。なにより結成2シーズン目の締めくくりに、FSで全ペアを通じた今季最高得点145.49点を叩き出し、金色の「スモール」メダルを手に入れた。

「FSでは自分たちにできる最大限を尽くしました。感情面でも技術面でも、文字通りすべてを出し切りました。自分たちのことを誇らしく思いますし、FSで金メダルを持ち帰れることが、とても嬉しいです」(ハーゼ)

3位につけたSPも、問題なくノーミスでまとめた。ただGPファイナルでペア全体の今季最高得点(後にワールドチームトロフィーで三浦/木原組に更新された)と比べると、全体的にGOEが伸び悩んだ。「少し機械的な演技だったかもしれない」とも反省する。

対照的にFS「四季」では「完全なる『ゾーン』に入った」という。あらゆるエレメンツが力強さと気品にあふれ、プログラム最後の「私たちにとってトレードマークのような」リフトで、ハーゼの肢体が高くまっすぐ空に持ち上がると、興奮はクライマックスに達した。しかし、そこから下ろす動作が、ほんのわずかに乱れた。今季初めてレベルを3に落とし、GOEにもマイナスがついた。総合で三浦/木原組との差はわずか0.71点だったから……ほんの少し悔いも残る。

「幸せな気持ちで滑っていて、最後は少し集中力が散漫になったのかもしれません。レベルをひとつ下げてしまったのは残念ですし、金メダルを逃したのも残念です。でも演技自体には本当に満足しています。来年こそ優勝できるよう願っています」(ハーゼ)

3位 サラ・コンティ/ニッコロ・マチー(イタリア):リベンジ成功

「絶対に失敗は許されない」と自分たちにプレッシャーをかけて臨んだSPを、サラ・コンティ/ニッコロ・マチーは狙い通りクリーンにこなした。「カルメン」を凛々しくドラマチックに舞い、ユニゾンも、音楽とのタイミングもほぼ完璧。自己ベストに近い高得点をマークし、SP2位につけた。

過去の2大会はいずれもSPを3位で折り返し、2年前は初の世界選メダルに歓喜したイタリア組だが、1年前は6位後退で苦汁をなめた。「リベンジ」を誓ってボストンに乗り込んだコンティ/マチー組にとって、FSはメンタルとの戦いとなった。直前に滑走したドイツ組を、観客がスタンディングオベーションで讃える姿を見て、緊張が一気に高まったのだという。

それでも同ペアは、コンティの亡き父に捧げるプログラム「Papa Can You Hear Me?」を、心を込めて演じ上げた。3連続ジャンプは2人とも乱れたが、3本目までしっかり飛び切った。2本目のスローは着氷で軽く手をつくも、一瞬で体勢を立て直した。最後まで戦い続けた。結果は3位。念願の雪辱を果たした。

「あの状況でベストの演技を披露できる日本ペアは、本当に素晴らしい。でも私たちも、表彰台の上で終えることができて、心から幸せに思います」(コンティ)

チャンピオンにとって学びの多い大会

ほんの1ヶ月前に「ジュニア」で世界選2連覇を果たしたばかりのアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワは、2度目の「シニア」世界選は、自己最高の4位で終えた。

技術力の高さは今大会も際立った。高く、速いツイストは、両プログラムともに全体で最高得点を稼ぎ出した。SPのスロージャンプは、今季のペア界全体でトップレベルの出来。一方、欧州選で「ノーバリュー」となったSPのデススパイラルは、今大会も完璧には程遠かった。逆転表彰台をかけて臨んだFSでは、得意のはずのジャンプ――ソロでもスローでも、ミスを連発。「今後は精神面のコントロール方法を学ぶ必要がある」と、来る五輪シーズンに向けて、課題に真正面から向き合う決意を表明した。

ディフェンディングチャンピオンのディアナ・ステラート/マキシム・デシャン(カナダ)は、今年は5位で大会を去った。SPでは現役最高峰であるはずのツイストで「めったにないミス」を犯し、FSでは「2年近く失敗していない」という3回転トーループで着氷が乱れた。ただ「R&R(りくりゅう)も初めての世界選制覇の翌シーズンは苦しんでいたもの……」と、むしろ学びと気づきの多い大会になったと、41歳のステラートはポジティヴに語る。

開催地ボストンのスケートクラブ所属アリサ・エフィモワ/ミーシャ・ミトロファノフ(アメリカ)は、「(飛行機事故で)辛い時期を過ごしてきたすべての関係者と、亡くなった人々に、誇りに思ってもらえるような演技」を披露し、見事に6位入賞。特にFSに関してはスモールメダルまで0.27差に迫る高得点を叩き出し、PBを一気に7点以上も更新した。

また大会直前に男性側が足を痛めながらも、エリー・カム/ダニエル・オシェイ(アメリカ)は奮闘実って7位に食い込んだ。自ずと両ペアは、母国に「五輪2枠+予選会で1枠追加可能」をもたらすことに成功。世界で唯一アメリカだけが、ペア最大3枠の可能性を有している。

長岡柚奈/森口澄士(日本):明るい未来への大きな一歩

初めての世界選手権で、長岡柚奈/森口澄士(日本)は残念ながらFS進出ならず。冒頭のツイスト転倒の減点が大きく響き、SP上位20組に残れなかった。ただあくまで結成2年目の2人が、公式戦で初の「3回転」ツイストに挑戦したからこその、前向きな失敗だったと言える。

しかも鮮やかなスピードと移動距離の長さが目を引くダイナミックなリフトは、なんと全体で2番目の高得点。19歳と23歳の若きペアにとっては、今後の活動に向けて、とてつもなく自信となる評価に違いない。

「ペアというのは本当に難しいスポーツで、1日や2日ですぐに上達できるものではありません。今回は上手くいかなかったかもしれないですが、彼らには必ず明るい未来が来る。そう僕は思っています。決して諦めずに、一緒に頑張っていきたいです」(木原)

文・J SPORTS 編集部

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