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フィギュア スケート コラム 2025年4月24日

キム・チェヨンが母国で四大陸選手権制覇!「地元で優勝できて、本当に満足しています」| ISU四大陸フィギュアスケート選手権2025 女子シングル レビュー

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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四大陸選手権を制覇したキム・チェヨン

プログラム2本ともに完璧にこなし、ショートプログラム(SP)もフリースケーティング(FS)も、これまでのパーソナルベスト(PB)を大幅に更新した。アジア冬季競技大会で金メダルを勝ち取った翌週の、母国・韓国での四大陸選手権制覇。キム・チェヨン(韓国)にとって、すべてがパーフェクトだった。

「地元のみなさんに私の最高の演技をお見せしたかったので、少し緊張もしましたが、やり遂げることができて本当に満足しています。アジア大会での成功を土台に、自信を持って臨もうと努めたことで、とても良い結果を引き出すことができました」(チェヨン)

ノーミスでオールレベル4。エフォートレスで羽毛のように軽やかなジャンプは、ことごとく完璧に着氷した。やわらかい肢体で美しいスピンポジションを保ち、ステップシークエンスはいつもどおり丁寧で、伸びやか。

ただ特に、FSでは、すべてが簡単だったわけではない。昨季と比べてより難しいジャンプ要素をプログラム後半に集中させ、より高得点が期待できるようになった代わりに、「体力的にはるかに厳しい」ものになった。だからこそシーズン前半戦は、後半のジャンプにミスが多かった。この四大陸では、最後のジャンプまで上手く飛びきったものの、その直後に左ふくらはぎが痙攣を起こしたという。ひどい痛みの中、締めのコンビネーションスピンはもはやギリギリの状態で……出来栄え点(GOE)はほぼゼロに近かったが、それでもレベルを落とさなかった。

「演技後半は、左足の痙攣との格闘でした。最後のスピンには全力を尽くしました。ジャンプをすべて完璧に成功させたのだから、ここで絶対にミスしたくない、という気持ちだったのです」(チェヨン)

SP74.02点、FS148.36点とPBを2つ並べた18歳のチェヨンは、技術的な完璧さに加えて、表現者としての進化も果たした。SP「トロン:レガシー」では、全身をより大きく使った切れのあるダイナミックな動作が際立ち、FS「Whisperers from the Heart/Love Dance」では、表情や首の角度にも細かな工夫が見られ、優雅で成熟したプログラムを演じ上げた。元五輪金メダリストのキム・ヨナから、シーズン前に表現力指導を受けた成果であり、当然ながら演技構成点(PCS)は向上。例えばFSではPBを8.91点伸ばしたが、うち3.04点がPCSだった。

総立ちの観客席では、韓国旗がいたるところにはためき、地元メディアは「新フィギュアの女王」と熱狂した。トータルでもチェヨンは自己ベストの222.38点を叩き出し、昨大会の銀メダルからステップをひとつ上がって、韓国女子としては史上3人目の四大陸チャンピオンとなった。なにより韓国開催のISUチャンピオンシップで、韓国選手が表彰台中央に立つのは、史上初めての快挙だった。

「ここまで積んできた努力が認められたように感じています。自分自身をコントロールし、緊張を少し和らげ、ストレスの多い状況でも集中する方法を学べたと思いますし、同時に成長の余地も見つけることができました。この大会で学んだことを活かし、演技を磨き、今後も良いパフォーマンスに集中していきたいと思います」(チェヨン)

表彰台の左右にはアメリカ選手が並んだ。大ベテラン27歳ブレイディ・テネルと、新星18歳サラ・エヴァーハードという、極めて対象的な2人だった。

四大陸スキップを決めたアンバー・グレンの代わりに、全米4位として代表入りしたテネルは、運命のようなものを感じていたという。シニア本格1年目でいきなり五輪出場を果たし、団体戦銅メダルを手にした地が韓国であり、2020年には、ソウルの四大陸でも銅メダルを持ち帰っている。つまり怪我に悩まされる日々――2021/22シーズンは全欠場、2023/24は10月半ば以降欠場――より以前の、良き思い出がつまった土地だった。

SP「ロード・オブ・ザ・ダンス」は冒頭のコンビネーションジャンプで回転不足を取られたが、表彰台までわずか0.78点差の5位につけた。なによりアイリッシュダンスで観客を大いに楽しませると同時に、今大会出場の女子としては最年長のテネルは、「自分自身を誇りに思える」ほどのパフォーマンスをやり遂げた。

FSでは「誰も寝てはならぬ」の歌い上げるメロディに乗って、テネル特有の気品と凄みとを併せ持つ、スケールの大きな演技を披露した。SPと同じ組み合わせのコンビネーションでやはり回転不足があり、ステップシークエンスでは「やばいと思った瞬間」もあったというが、流れの中できっちり立て直した。得点はシーズンベスト(SB)の137.80点……まさに自身にとっては2020年四大陸以来となる高得点に達し、逆転2位で5年ぶりの表彰台を射止めた!

「嬉しくてたまりません。怪我前のように両プログラムをまとめ上げることができました。2020年に、このアリーナで滑ってから、ずいぶんと時が立ちました。人生でも、キャリアでも、たくさんのことが起こりました。だからこそ、この場所での素晴らしい思い出に、新たな経験を加えることができて、本当に幸せです」(テネル)

初の本格シニアシーズンにして、初の本格国際転戦シーズンの終わりに、エヴァーハードは堂々たる成果をつかみとった。SP、FSともに3位に入り、総合でも銅メダル。シーズン通して示してきた安定したジャンプ力と、安定した精神力は、生まれて初めてのISUチャンピオンシップでも遺憾なく発揮された。

9月以来ノーミスを貫いてきたSPは、韓国でも、すべてのジャンプを完璧に決めた。FSでは2つの小さな「q(4分の1回転不足)」がついたが、着氷ポーズに一切の乱れはなし。ついには1度も転倒がなく、「q」以上の減点……例えば「<(2分の1回転不足)」を1度も取られることなく、驚異的な安定感で今シーズンを締めくくったことになる。

ジュニア時代から外国転戦経験が少なく、GPシリーズも他選手の棄権×2回で2大会フル出場を果たしたエヴァーハードの、PCSの得点がまだまだ低いのは、いわば当然のこと。それでもFSの「スケーティングスキル」では、初めて8点台がついた。

「良い滑りができましたし、シーズンを最高の形で終えることができたことを嬉しく思っています。初めてのISU選手権は楽しい経験で、多くのことを学びました。今後は3Aやクワッドに挑戦し、コンポーネント面の改良にも取り組み、もっともっと総合的に進化して、誰とでも戦える選手になりたいと思っています」(エヴァーハード)

また3年ぶりの競技復帰に、3年ぶりのISUチャンピオンシップ出場のアリサ・リウが4位に食い込み、アメリカ勢が2位〜4位までを独占。一方で日本女子は18年ぶりにメダルを逃し、少し苦い経験となった。

ディフェンディングチャンピオンの千葉は、「今までで一番緊張を感じた」というSPを、きっちり2位で折り返した。ジャンプに2つ「q」がついたが、その他のエレメンツはすべてレベル4でまとめあげた。ステップシークエンスや締めのレイバックスピンではひときわ高いGOE加点も得たし、PCSはダントツの1位の評価。

しかし2日後のFSで、千葉は体調不良に苦しんだ。午前中の公式練習は欠席を選んだが、本番は歯を食いしばって挑んだ。

「しんどさのレベルが桁違い」な状態で、ジャンプでは2度の転倒があった。プログラム最終盤のステップシークエンスやコンビネーションスピンでは、体力の限界に達し、レベルが取れなかった。それでも「丁寧に」の気持ちは忘れなかったという。後半にジャンプコンビネーションを2つしっかり組み込めたこと、最後の最後まで戦い続けたことは、千葉の気持ちの強さのあらわれに違いない。

全力で演じ終わった直後に、千葉はがっくりと氷に膝をついた。FSの得点は、優勝した1年前の四大陸よりも、ちょうど20点少なかった。トータルでは6位に後退。3度目の四大陸参戦で、初めて表彰台を逃した。

「出るからには死ぬ気で頑張ってきて、と声をかけられたのですが、その覚悟で最後まで滑り切ることができました。演技自体は、自分の良いところが削がれてしまいましたが、精神的にはまたひとつタフになれたと思っています」(千葉)

樋口新葉は5位で、松生理乃は11位で大会を終えた。樋口は全体的にジャンプに苦しみ、特にFSでの転倒が惜しまれるが、ダイナミックなステップシークエンスで観客の心を射抜いたし、PCSの高い評価につながった。松生は、SPで、ジャンプ要素が1つノーバリューとなったのが痛かった。FSでもやはりジャンプは安定させられなかったが、ステップやスピンはオールレベル4。「今の自分にできることはすべてやった」と、美しくプログラムをまとめ上げた。

文:J SPORTS編集部

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