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三浦璃来&木原龍一組が日本ペア史上初の世界王座に!「支えて下さった方々に心から感謝しています」(木原)| ISU世界フィギュアスケート選手権2023 ペア レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部演技終了後に抱き合う三浦璃来&木原龍一組
さいたまスーパーアリーナに詰めかけた、たくさんの日本人ファンが見守る中で、歓喜の瞬間は訪れた。1908年にフィギュアスケート世界選手権にペア種目が加わってから、今年2023年でちょうど100大会目。三浦璃来&木原龍一組が、日本ペアとして史上初めて、世界王座に上り詰めた。歴史は作られた。
「今シーズンの目標は世界選手権優勝でした。母国開催で達成することが出来て、ものすごくうれしく思ってます。支えて下さった方々には、心から感謝しています」(木原)
惚れ惚れするようなショートプログラムで、波に乗った。冒頭の3回転ツイストだけはレベル2に留まったが、以降は文字通り完璧。残す全エレメントは当然のようにレベル4で、いずれも高いGOE出来栄え点で評価された。四大陸では転倒のあったサイド・バイ・サイドの3回転トーループは、問題なく決めたし、幅も高さもあるダイナミックな3回転ルッツのスロージャンプは、キャリア史上最高のGOE加点を得た。
また風を切るようなスピードや、深い信頼関係を思わせるユニゾン、さらにはまさに2人を歌ったような「You’ll Never Walk Alone(君は決して一人じゃない)」の音楽に合わせて紡ぎ出される、爽やかで暖かな世界観は、極めて高いPCS演技構成点に反映された。
常々「過去の自分たちに0.1点でもいいから勝ちたい」と公言する「りくりゅう」は、昨秋のNHK杯で出したパーソナルベスト=今季世界最高得点を一気に2.47点も更新。80.72点という高得点で、SP首位に立った。2人にとっては初めての80点超えで、2位以下には6点以上もの大差をつけた。
「無事にショートプログラムを終えられて、本当にほっとしています。 練習でやってきた良い部分を、今日はすべて出しきることができました」(木原)
納得の笑顔がこぼれたSPとは違って、翌日のフリースケーティング「アトラス:Two」 では、必ずしも思い通りの演技が出来たわけではない。ツイストだけでなく、ペアスピンとデススパイラルでもレベルの取りこぼしがあった。サイド・バイ・サイドの3回転サルコウでは、三浦が2回転しか飛べなかった。さらには3回転ループのスロージャンプで、一旦は着地を耐えるも、最終的には転倒してしまう。
「後悔しないように練習してきました。でも、フリーでは、自分の気持ちの弱さが少し出でしまった。過去の自分に勝てなかったことが、本当に悔しいです」(三浦)
呆然とした表情で演技を終えた三浦を救ったのは、日の丸を手にスタンディングオベーションする観客たちの姿と、木原の頼もしい言葉だった。
「僕たちは四大陸の後、やるべきことをやってきた。もちろんフリーはベストではなかったけど、胸を張ろう。 一生懸命やってきたんだから。観客席を見てごらん。これだけみんなが称えてくれているのだから、胸を張ろう。結果はどうなるかわからないし、祈るしかないけど、胸を張って帰ろう……そんな声をりくちゃんにかけました」(木原)
メダルを獲得した3組
不安の涙は、幸いにも、すぐに喜びの涙に変わる。発表されたスコアは141.44点。FSだけなら2位の得点ではあったけれど、昨五輪の得点を0.40上回る自己ベストだった。なによりトータルでは、やはりPBにして今季世界最高にして、初の220点超え。222.16点で堂々首位に立った!
ミスによる減点があってもなお、PBを更新したのは、まずはプログラム序盤の3連続ジャンプシークエンスを今季初めて完璧に成功させられたから。しかも昨季までの3T+2T+2Tと比べて、今季の3T+2T+2A+SEQは、基礎点自体が2点も高いのだ。またペア結成してわずか4シーズン目のりくりゅうは、伸びしろがまだまだ残っている。ツイストはレベルこそ3ではあるが、GOE加点を含むとキャリア最高の得点を得たし、3度のリフトはすべてレベル4だった上に、いずれもかつてないほどの加点で絶賛された。
ついに日の丸がアリーナの真ん中に掲げられた。すでに女子は1989年以来10大会、男子は2010年以来5大会(いずれも今大会を含む)で、日本人選手を表彰台の最上段に送り込んできたけれど、日本ペアが世界チャンピオンに君臨するのは正真正銘史上初めての快挙。しかも今シーズン5戦5勝の三浦&木原組は、日本人フィギュアスケーターとして初めて、いわゆるシーズングランドスラム(世界選手権、欧州または四大陸選手権、グランプリファイナルを同一シーズンで勝ち取ること)さえも達成した!
「今回の結果を見て、ペアに挑戦したい、っていう子どもたちが出てきてくれたら……。今日をきっかけに日本のペアスケーターがどんどん増加していって、『この日から変わったよね』って言えるような日が10年後、20年後に来るよう願ってます」(木原)
1年前のモンペリエで、アメリカペアとして43年ぶりに世界選制覇を成し遂げたアレクサ・シメカ・クニエリム&ブランドン・フレイジャー組(アメリカ)は、チーム結成3シーズン目の今年は、銀メダルを手に入れた。
「自分たちを誇りに思います。世界選メダルが2つも取れるなんて、夢にも思っていませんでしたし、私たちにとっては素晴らしい快挙です。それに……色だってきれいです!」(シメカ・クニエリム)
パーフェクトな演技が出来たわけではなかった。SPではサイド・バイ・サイドジャンプで男性が転倒し、PBを3点以上も下回る得点しか出せなかった。FSは142.84点のシーズンベストを叩き出し、金色のスモールメダルに輝いたけれど、やはり2度のソロジャンプでは着氷が乱れた。
それでも2人は……、3月上旬の世界ジュニア選手権帯同中にコーチのトッド・サンド氏が心臓発作で倒れて以来、「シメフレ」は決して簡単ではない日々を送ってきた。時に零れそうになる涙を抑えながら、互いに励まし合い、強い気持ちで最後まで戦い抜いたのだ。
「大切な人が不在で、自分の内側が壊れてしまったように感じながら練習を続けるのは、難しいことでした。それでも、トッドこそが、私たちの中に戦う気持ちを植え付けてくれた張本人です。だからこそ、彼が私たちを誇りに思ってくれるように、毎日一生懸命練習することが出来ました。今日もそれが出来たと信じてます」(シメカ・クニエリム)
サラ・コンティ&ニッコロ・マッチ組(イタリア)は、演技中は観客の存在を一切忘れてしまうほど、自分たちの表現だけに集中したのだという。おかげで初めての日本に圧倒されることなく、初めての世界選手権で3位に飛び込んだ。欧州選手権でイタリアに初めてのペア金メダルをもたらしたのに続き、祖国イタリアに史上初めてのペア世界選メダルを持ち帰った。同時に昨大会、2組が同時コロナ陽性→棄権で失った「2枠」を、無事に取り戻した。
「私たちチームにとっても、母国にとっても、素晴らしい快挙です。これがイタリアフィギュア界にとって大きな後押しとなるでしょう」(マッチ)
3位から8位までは初出場組が並んだ。SPではわずか0.43点差でスモールメダルを逃したディアナ・ステラート&マキシム・デシャン組(カナダ)は、FSでのジャンプミス2回がたたり、逆転叶わず4位終了。それでもFSとトータルではパーソナルベストを更新。39歳&31歳の四大陸銅メダリストは、1年後の母国カナダ大会に向けて、まだまだ伸びしろがあることを証明してみせた。
5位エミリー・チャン&スペンサー・アキラ・ハウ組(アメリカ)もやはり、FSではジャンプに苦しみ、自己ベストには10点近くも足りなかった。それでも大きく切れのある感情表現で、見る者の心を揺さぶり、特にFS終盤のコレオステップシークエンスでは全参加ペアの中で最も高いGOE加点を得た。また女性が今季ペア1年生ながら、リア・ペレイラ&トレント・ミショー組(カナダ)はFS4位と驚異的な進化を披露。トータルでも、男性側が前パートナーと6年かけてたどり着いた世界選6位の成績に……あっさり並んでしまった!
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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