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フィギュア スケート コラム 2023年2月10日

第43回全国中学校スケート大会フィギュアスケート競技 男子シングルレビュー

フィギュアスケートレポート by 中村康一(Image Works)
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2023年2月5-7日の日程で、ビッグハット(長野県、長野市)にて全国中学校大会が開催された。一昨年はコロナ禍のために中止、昨年は無観客開催となった大会だが、今年は久し振りに有観客での開催となった。まだ以前ほどの観客数ではなかったが、ようやく正常な開催に戻りつつあることを大変嬉しく感じた大会だった。男子は中田璃士が怪我のために欠場したことは残念だったが、田内誠悟が自身初の全国規模の大会での優勝を果たし、また、ノービス年齢の新星、高橋星名、西野太翔が初めて参加した全中で表彰台に乗るなど、見どころの多い大会となった。上位8名のインタビューをご紹介したい。

1位 田内誠悟

田内誠悟

ショート直後の取材では、ほっとした表情とともに、若干の悔しさも垣間見せた。

「緊張した中でもジャンプを揃えられました。点数はもっと欲しかったと思います。70点を目指していました」

今季の前半までは練習できていたことが試合本番でできずにいた。それが解消して、目標も明確になってきた印象だ。

「ジュニアグランプリの前ぐらいまでは、練習で最後の最後まで追い込めずに甘えてしまう自分がいたんですけど、前に比べたらそれが減って、曲かけでも何回も通して、苦しいところでもやれるように練習したからこそ、段々とジャンプがはまってくるようになったと思います。どうしても試合になると、特にフリーは練習よりもきつくて、後半にパンクすることが多かったんですが、苦しい中でも絶対にジャンプを締めるっていう練習をしてきました」

かつてはフリーの後半で崩れることが多かった田内選手だが、全日本ジュニアのフリーで圧巻の演技を披露。ようやく壁を乗り越え、念願の全日本にも出場した。

「全日本ではショートで15番になってしまって、フリーを第二グループで滑ることになり、凄い選手達の中で滑ることになって圧倒されてしまいました。フリーで本来の自分が出せなかったことは悔しいですけど、独特の緊張感を体験できたことを今後に生かしたいです」

来季はジュニアグランプリにもフル参戦を目指す。

「今季は補欠からの繰り上りでジュニアグランプリに出させてもらった形なので、来季は自力で2試合を勝ち取って、ファイナルに進めるように頑張りたい」

フリーでは若干のミスはあったものの総合1位を死守。念願の全国規模の大会での優勝を成し遂げた。

「緊張した中でこれだけミスを少なくできたのはジュニアグランプリ、全日本に出場した経験があったからこそだと思います。嬉しい気持ちでいっぱいです。本当はトリプルアクセルを最初に入れたかったんですけど、公式練習からあまりうまく行っていなかったし、今回はまとめることが大切かな、と思ったのでダブルアクセルにしました。今季、1位を狙う試合が少なかったんですが、今日は勝ち切ることができたので良かったです。今の一番の目標はトリプルアクセルの成功率を上げること、次に4回転にも挑戦したいです」

後半に挑んだルッツが、トリプル予定のところをパンクでダブルにしてしまい、コンビネーションも付けられなかった。本来は3連続の予定だったそうだ。計算上、あと一つミスをしたら逆転を許すのではないか、と想像して見ていたのだが、本人も同様に考えていたようだ。

「これであと一つ失敗したら負けるな、と思っていたので、最後のフリップはコンビネーションが付かなくてもいいから絶対に降りよう、との思いで跳びに行きました。シーズン前半の試合でうまく行かなかった苦い経験があったから今日耐えられたと思います」

3月にはクープ・ド・プランタンへの派遣が決まっている。国際大会での経験を積み、来季はジュニアのエース格を目指してほしい。

2位 高橋星名

高橋星名

ショートプログラムでは63.04と自己ベストを叩き出すことができた。

「少し緊張しましたが、ノーミスでできたので良かったです」

6分間練習の最後にルッツの確認をし、そこで失敗してしまい、そのまま試合に臨むことになった。プレッシャーのかかる状況だったかと思うのだが、

「先生の言葉を信じて、自分を信じて跳びました」

と、メンタルの強さを感じさせるコメントを聞かせてくれた。ルッツの着氷は決して良くなかったのだが、そこから3Tを付けて成功させたことは素晴らしい。2Tに抑えてもおかしくない状況だった。

「昔はちょっと危なかったら安全な方を取っていたんですけど、失敗してもいいから挑戦することが大事だと思うので、ちょっと危なくてもトリプルを付ける練習をしてきました」

と、練習通りの成果が発揮できたのだと話してくれた。かつては東神奈川のリンクで練習していた選手だが、昨年、木下アカデミーに移籍した。そこからわずか1シーズンで長足の進歩だ。どうして木下アカデミーに参加することになったのか聞いてみたところ、2017年の全日本で濱田コーチとご縁ができ、2018年から関大リンクでの練習に参加していたのだという。2017年というと、高橋選手が頭角を現すよりだいぶ前の話だ。

朝の練習は苦手だという。目覚ましを止めてまた寝てしまうこともあるそうだ。既に天才ぶりを発揮している高橋選手だが、年相応の微笑ましい面もあるようだ。

以前から目を引いていたのがジャンプのランディングの質だ。とても柔らかくて着氷が伸びる。どんな練習をしたのか聞いてみたのだが、特に何も意識はしていないという。自然に身に着いたものだそうで、それは本当にすごいことだと感じる。

フリーでもノーミスの演技を披露、総合2位と大健闘した。中学1年生、初めての全中であることを考えると素晴らしいの一言だ。

「初めての全中でショート、フリーをノーミスで終えられて嬉しいです。これからはトリプルアクセルを試合に入れられるように練習したい。海外に派遣されて活躍できる選手になりたいです」

この日の演技で若干気になったのは、いつものような細い軸を取れずに、力でジャンプを回している印象があったことだ。

「朝から少し調子が悪くて、軸も少しぶれてたんですけど、それでも着氷で耐えることができました」

本人としては万全のジャンプを跳べなかったにもかかわらず、ノーミスにまとめたのはさすがだ。回転不足も一切ついていなかった。来季はジュニア昇格、国際大会にも派遣されることだろう。更なる活躍が今から待ち遠しい。

3位 西野太翔(にしの・たいが)

西野太翔(にしの・たいが)

「ショートプログラムで60点を超すのが初めてなので、とても嬉しいです。先生がスケーティングをものすごく練習させてくれているので、それが今回の試合につながっているのかな、と思います。ライバルとして考えているのは、高橋星名選手、中田璃士選手です。追いつけるように練習を頑張りたい」

ショート、フリーを通じて出色の出来栄えだったのが西野太翔選手だ。動きの切れとポジションの美しさが魅力だ。今季の前半と比較しても、わずかな期間のうちにクオリティが上がっているように感じる。特に成長を感じるのはスケーティングと、ジャンプのランディングだ。

「練習から、ジャンプのランディングで手先、姿勢を意識するようにしています。引き続きやっていきたいと思います」

その言葉通り、フリーでも完璧な質の高い演技を披露してくれた。フリーの点数では田内誠悟、高橋星名を抑えて堂々の1位だ。彼も高橋星名と同様、初めての全中だ。近年の日本男子の充実ぶりは本当に素晴らしい。次々とスター選手が生まれているが、西野選手も今後の大きな飛躍が期待できる存在だ。高橋星名とは全く違うタイプなのも面白い。お互い切磋琢磨して、男子シングルを盛り上げてもらいたい。

4位 蛯原大弥

蛯原大弥

フリーは素晴らしい演技だった。特にジャンプの着氷の質が高い。

「気を付けて着氷したら点数が出るようになるよ、と先生から言われていて、練習から気を付けるようにしています。GOEの加点は、くれるジャッジとくれないジャッジがあるので、全員のジャッジから加点をもらえるようになりたいです」

ショートプログラムは会場入りが遅れた影響で公式練習に参加できず、6分間練習で初めて会場の氷に乗り、ぶっつけ本番で臨んだことが影響したのか満足のいく演技はできなかった。その悔しさをフリーで見事に晴らして見せたのだ。将来の目標を聞いてみたところ、意外な答えが返ってきた。

「引退を迎えたときに、スケートやってて良かったな、いいスケート人生だったな、って思えるようになりたいです」

それはものすごく先の話だろう。普通は、「こんな大会に出たい、こんな成績を残したい」というコメントをしてくれるものだが、少し変わった視点で答えてくれた蛯原選手。憧れの選手を聞いてみたところ、ネイサン・チェン、イリア・マリニン、三浦佳生、そして三原舞依の名前を挙げてくれた。男子3名は分かるとして、三原舞依の名前を挙げたところに興味を感じたので重ねて聞いてみた。

「ジャンプの安定感が魅力的です。軸も綺麗で、岡島先生も『お手本のようなジャンプだ』って言ってます。僕も真似したいし、あんな選手になりたいです」

大技への取り組みについては、

「トリプルアクセルを練習していますが、全中には間に合わなかったんです。既に曲かけで跳んでいるので、完成に向かっています。4回転はまだなんですが、やってみたい気持ちはあります」

2017年の羽生結弦さんの世界選手権を見て感動したのだという。演技そのものに加えて、プーさんが大量に投げられているのを見て「僕もこんな風にリンクの真ん中に立ってプレゼントを投げてもらえるようになりたいな」と感じたのが本格的にフィギュアスケートに取り組むようになったきっかけだそうだ。

来季の目標としては、「全日本ジュニアでフリーに進み、できれば8位以内に入ってシニアの全日本に行きたい」と話してくれた。ショート、フリーを揃えられるようになれば十分に狙える目標だ。

5位 佐藤和那

佐藤和那

ショートではノーミスの演技。4位と好発進した。

「フリーではトリプルアクセルを決めてメダルを狙いたいです」

その宣言通り、フリーでは意欲的にトリプルアクセルに挑戦してくれた。結果、転倒はしたが回転は認定された。来季はトリプルアクセルの完成が見られそうだ。

「トリプルアクセルの浮きは良かったんですが、いつもできているトウループ+アクセル+アクセルで失敗したのが悔しいです」

3T+2A+2Aに挑んだのだが、二つ目のジャンプの着氷で流れが止まってしまい、完全にその場跳びの状況でダブルアクセルに挑み、転倒してしまった。

「行っちゃえ、と思って跳びました」

ダブルアクセルは得意なジャンプなので、行けると思ったそうだ。シングルアクセルに落とす等の対策は全く考えなかったという。フリーで順位を落とし、総合5位となったが、手応えはしっかりと掴めたようだ。

「フリーで100点を超えられたことは良かったです。応援してくれる友達に応えたいという気持ちが強くてミスにつながったかもしれません」

将来、どんな選手になりたいかを尋ねられ、

「お客さんに楽しんでもらえる演技ができるようになりたい。ジェイソン・ブラウン選手、大島光翔選手の演技を参考にしています」

と、演技派のスケーター2名の名前を挙げてくれた。現在は演技派というよりはエレメンツに秀でた選手という印象だが、技術と表現を併せ持ったスケーターへと成長してほしい。

6位 花井広人

花井広人

フリーの出来が素晴らしく、ショートから順位を上げての総合6位と入賞を果たした。

「今日の演技は全日本ジュニアよりも技術点が5点も上がったのでそれは良かったんですけど、スケーティングなどはスピードが出なかったり、ジャッジさんの目を見れなかったりしたので、そこはちょっと悔しいです」

短期間にエレメンツのクオリティ、特にジャンプのクオリティが上がったことに驚かされた演技だった。きっかけについて尋ねてみると、

「年末の合宿で、助走を少なく、リンクの半分の距離でジャンプを跳ぶ練習をしました。それでジャンプのクオリティが上がりました」

正月には名古屋フェスティバルに参加し、宇野昌磨、山本草太の滑りに感銘を受けたそうだ。

「昌磨君、草太君は一歩でぐいっとスピードが出るので、そこが自分に足りないところだと分かりました」

もっともその2名はスケーティングに関しては世界トップクラスだ。なかなか真似したり追いついたりすることは難しいだろうが、それでも真似したいのだという。

「ジャンプを跳ぶ前に全然ストップをかけていなくて、逆にジャンプの前に加速していくので、それを真似したいです。僕がスピードを出すとジャンプが違う方向に行っちゃうと思うんですけど、それをできるようにしたいです」

将来、トリプルアクセル、4回転に挑戦するときに生きてくることだろう。大技への取り組みについては、

「全日本ノービスの前にトリプルアクセルを練習していたんですが、全中が終わったらまた練習を再開したいと思っています」

将来どんな選手になりたいかを聞かれると、

「本番でしっかり力を発揮できるオールラウンダーな選手になりたいです」

と、いぶし銀な答えが返ってきた。来季の目標は、全日本ジュニアで8位以内に入り、シニアの全日本に出場することだという。できそうですか?との問いには「多分」と答えてくれた。派手な言葉は使わないが、内に秘めた自信を感じさせてくれるインタビューだった。

7位 田中蓮音

田中蓮音

幼少時から表現力豊かで、観客へのアピールに長けている印象だったが、今季はジャンプが進化したことで良い成績を残せるようになった。ジャンプが良くなったきっかけは何だったのだろうか?

「腰痛を抱えていたので、体をいたわるようにしたんです。そしてその時期にコーチを変更したところ、新しいコーチの教え方が本当にピッタリ僕に合っていて、分かりやすいんです」

新たに師事した山本雅江コーチの指導と、腰を治したこと。この2点が今季の成長につながったようだ。特に点数の高い3フリップが安定してきたことは実に大きい。

「フリップは元々得意ではなかったんですが、コーチに手の締め方を重点的に教えてもらって、今では得意なジャンプになってきています」

憧れの選手は高橋大輔なのだという。特に表現面で憧れているようだ。確かにヒップホップをやっていた頃の高橋大輔を彷彿とさせるものがある。

「僕は元々技術が低くて、それをリカバーできるものって表現だと思うんですよ。氷の上ではしゃべれないから、体全体を使って見せなければいけないと思うんです。だから踊り、表現には一番気を遣っています」

目標について聞いてみると、

「自分の滑りで会場の全員の心をガッと鷲掴みにしたい、そんな演技がしたいと思っています。今季は東日本ジュニアで止まってしまったので、来季は全日本ジュニアに出たいです」

演技を観た方ならば共感してくれると思うが、彼は本当に華のある、スターになりうる選手だ。技術点が一層伸びてくれることを期待したいものだ。

8位 芳岡優希

芳岡優希

この全中で初めてトリプルアクセルに挑戦した。試合本番ではショート、フリー共に決めることができなかったが、練習ではクリーンなトリプルアクセルを見せてくれた。

「トリプルアクセルを失敗したことが悔しいです。全中に向けてアクセルを練習してきました」

トリプルアクセルの練習を開始したのはわずか1か月前だという。どんなトレーニングをしたのかなど聞いてみたのだが、「普通に練習しました」としか話してくれなかった。彼は言葉ではなくスケートで表現するタイプなのだろう。ショート、フリー共にあまりコメントを残してくれなかったのだが、トリプルアクセルへのこだわりは随所に感じさせてくれた。試合本番で決められなかったことも、彼を寡黙にさせた理由なのかもしれない。今季は名古屋に移籍し、新たな挑戦を始めたシーズンだ。その結果が出るまで気長に見守りたい。

文:中村 康一 / Image Works

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中村康一(Image Works)

フィギュアスケートを中心に活躍するスポーツフォトグラファー。日本全国の大会を飛び回り、選手の最高の瞬間を撮影するために、日夜シャッターを押し続ける。Image Works代表。

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