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フィギュア スケート コラム 2022年4月6日

「ライバルの存在」| 町田樹のスポーツアカデミア 【特別編】 ~アーティストとアスリートの身体・精神論~ 音楽家 反田恭平

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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町田樹と音楽家・反田恭平

町田樹と音楽家・反田恭平

今回お迎えしたのは、第18回ショパン国際ピアノコンクールで51年振りに第2位となった音楽家の反田恭平さんです。みずからオーケストラの株式会社Japan National Orchestraを創設し、ピアニストとしてのキャリアから、指揮者や経営者など活動の幅を広げ、今最も注目されている音楽家です。

町田(以下M):例えばアスリートはライバルの存在がいて、そのライバルに勝ちたいとモチベーションを高めていくことができます。それは心理学の領域では外発的動機付けと言われています。一方で「僕はこの音楽を聴きたい」「僕はこの演技を成し遂げたいんだ」といった内発的動機付けがあります。その外発的動機付けと内発的動機付けが上手く調和したときに良い心理状態になると言われています。反田さんの場合はコンクールで賞を受賞されたことが一つのモチベーションになるわけですが、コンテストに出場しているピアニストはライバルと捉えていますか?

反田(以下S):難しいですね。確かにライバルではありますし、受けるからには一番を目指しているわけですけど、みんなが上手かったので、誰になってもおかしくないよねという空気感がありました。みんな楽譜を忠実に守って弾いて、音色や音楽への姿勢はみんな揃っているわけで、どこで順位分けをするかと言うと、これは将来性とかもあると思いますが、スター性とか、空間を支配できる能力であったり、そこがたぶん評価されたりしていたと思います。今回の結果は非常にラッキーでしたし、ライバルと言えばライバルでしたけど、あまり他人をライバルとは思ってはいなかったですね。そもそもコンクールは反対派だったので、どんな評価が来ようが他人がつけた評価だと言い聞かせていました。それでも、良い結果をいただけたらそれは嬉しいですよね。

フィギュアの世界では例えば日本選手権とか世界選手権で金メダルを取っても、もう一度同じ大会に出たりしますよね。我々は1位になったら(次回は)出ちゃダメといったルールがあります。それと、ショパンコンクールと言えど、クラシックなので小さい聴衆の中での演奏ですが、フィギュアは世界中が注目している。すごいプレッシャーだろうなと思います。

M:個人としてはお客さんが1人であろうが、1万人であろうが同じだけ緊張するんですよね。僕は緊張をマネジメントする一つの方法として、目の前の競技会を最終目標にしないことが大事だと思っています。つまり、そこで勝ちたいという目標でその舞台に立つと、勝てなかったら終わり。だけど、この競技会でこの順位を取ることはその先の人生において意味があるから自分はここでメダルを取らなければいけない。でも、そのメダルはあの目標を達成するために必要なんだと、長期的なビジョンの中に目の前の緊張するものを置くとだいぶ力強く進めると自己分析をしています。今回、反田さんはまさにそれだなと感じました。指揮者になるという長期的な目標、あるいはジャパン・ナショナル オーケストラをしっかりと経営して世界に発信したいというビジョンがあって、そこにショパンコンクールやそれまでの活動が明確に計画されている。もちろん使命感もあったと思います。

S:結局は誰のために弾くかです。僕は好きな人のためであったり、友達だったり、家族かもしれないし、総じて自分にとって愛しい人たちに弾くのが一番良い演奏ができる。そのことを考えて弾くとやっぱり緊張しなくなってくる。帰る場所があったりする、それが自分の会社だったりするかもしれないし、オーケストラなのかもしれないですけど、友達がいるからこそ緊張しないと強く思うようになりましたね。

M:もちろん1位を狙っているけど、弾くときには誰のためにとか、なぜ弾くのか、どういう演奏をしたいのかという本質に重きを置くということですね。

S:前回の優勝者のファイナルの演奏がYoutubeで1500万回再生くらいしています。良い演奏さえすれば色々な人に見てもらえる。僕はショパンコンクールまでは、サウジアラビアとかイランやイラクなどで弾いたことはないし、僕のことを知っている人もいなかったはずですが、ヘブライ語でのメッセージが来たりします。あのとき純粋に音楽を楽しめたから、今こうして知ってくれる人が増えたと思います。あのとき確かに一番強く思ったことは、この曲がいかに素敵な作品なのか、どれだけ僕がこの作品のことが大好きなのかを伝えたくて弾こうと思いました。それがやっぱり良かったんだと思いますね。

M:アスリートはライバルに勝ちたいという勝利欲にのまれることがあって、自分がどんなパフォーマンスをしたいかというよりも、ライバルに勝つことが動機ではなく目的になってしまうことがあります。反田さんの話を聞いて、最終的に自分がどういうパフォーマンスを成し遂げたいのか、何を伝えたいのか、そこがブレないことがとても大事なことだと感じました。

S:お金を稼ぎたいとか、有名になりたいとかそういったものは後からついてくるものだと思います。それを今回のコンクールで非常に強く感じました。生き急ぐのもありですが、先を見据えて活動していった方が圧倒的に人生が幸せになるんじゃないかなと思っています。こういう人生なんだから、よっぽど変なことしなかったら教科書にも載らないし、アンチが増えることはあるかもしれないけど、そんなに大したことではない。ポジティブに生きていこうと決めています。

日本人は特に結果しか見ないので、結果だけしか見ないのは良くないよねとみんなに言いたい。コンクールで賞を取っていなくても素晴らしいアーティストはたくさんいます。そういった子が日の目を浴びるコンサート活動を作っていけたらと思いますね。

次回「今後のビジョン」

文:J SPORTS編集部

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