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フィギュア スケート コラム 2019年3月29日

ISU世界フィギュアスケート選手権大会 ペアレビュー

フィギュアスケートレポート by ウェイ・ション
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Text by ウェイ・ション

スケートファンの間では、選手が届けた最高の演技をよく「神演技」と呼ぶ。だとすると、今年の世界選手権のペア大会は、もはやフィギュアスケートの「万神殿」に入れるような「神大会」ではないだろうか。そして、もしこのような万神殿が本当に存在するのであれば、今大会優勝を飾ったウェンジン・スイ/ツォン・ハン組が披露したフリープログラム「Rain, In Your Black Eyes」は、きっと神殿の一番中央に置かれ、スケートファンに永く祀られ続けるであろう。

そんなふうに主観的に思ったが、演技が終わる前にすでに始まったスタンディングオベーション、そして得点が出るまでに続いた拍手の嵐を見ると、この演技は客観的に考えてもやはり歴史に残る珠玉の名作だ。このような演技に対して、エレメンツの難易度や出来栄えの良さを解説するのはもはや無用。なので、ここで語らせていただきたいのは、なぜこの演技が他の神演技のさらなる上にあるのか。

今大会優勝を飾ったウェンジン・スイ/ツォン・ハン組



筆者から見ると、最大の違いは、演技の最初から最後まで空白の時間がなく、美しい振付が気づかれないうちに一個一個のエレメンツを巧妙に繋いだ一気呵成感と、このような繋ぎを完璧に実行できる2人の高い技術力だ。例えば、3サルコウのスロージャンプを完璧に着氷した後、スイはほぼ20秒間フリーレッグを下げたことがなく、そのまま流れに沿ってエッジを2回変え、そして片足でステップを踏んでから、次のデススパイラルに入った。おそらく、振付師のローリー・ニコルがこの繋ぎを考案した時、ローリーは2人が絶対にスロージャンプをきれいに決めて着氷で流れを作れる、そしてスイは絶対に着氷した足をコントロールできると確信していたのであろう。そして、オープニングの驚異のリフトを始め、演技のところどころでペアスケーティングの必須エレメンツではない(つまり体力が求められるが得点にならない)ダンスリフトやステップが入っていて、あまりにもの美しさに観客は何度も拍手を送った。芸術性と技術力をともに極めたこのプログラムを完璧に滑ったスイ/ハン組は、世界最高得点や金メダルを獲得したのはもちろん、フィギュアスケートの歴史をも刻んだ。

銀メダルを獲得したエフゲーニャ・タラソワ/ウラジーミル・モロゾフ組

銀メダルを獲得したのはエフゲーニャ・タラソワ/ウラジーミル・モロゾフ組。技術力が高いこの組のスケールが大きいスロージャンプとリフトは本当に印象に残る。そして、手足が長く、姿勢も美しいので、選曲のクラッシック音楽とも相性が良い。実際に、今大会でのショート、フリーともほぼノーミスで、演技構成点も高く評価され、トータルスコアの世界最高得点を一時塗り替えた。結果としてスイ/ハン組に敵わなかったが、十分誇りを持てる素晴らしい演技だった。3年連続表彰台に上がった2人だが、今後も一番高いところを目指して頑張ってもらいたい。

3位は世界選手権で初表彰台を果たしたナタリア・サビヤコ/アレクサンドル・エンベルト組。2つのプログラムとも大きなミスがなくうまくまとめたが、特に印象的なのはショートプログラムだ。過去の王子様とお姫様のイメージから一変し、ゴスロックの選曲でかっこよさを見せ、観客に印象付けた。でもサビヤコ本人は「これこそ本当の私よ」と話し、今後もこの一味違うスケーティングをしたいと示した。来季はどんな演技を見せてくれるのか、楽しみだ。

惜しくも4位につけたのはチャン・ペン/ヤーン・ジン組。ペア結成3年目となる今シーズンは、ようやく一体感を増し、エレメンツの精度もかなり高めた。特にペンが苦手だったサイド・バイ・サイド・ジャンプは、3サルコウが回転不足になったが、一応全部着氷でき、大きな自信を付けた。試合後は「表現面においてもジャッジに認められるようになったので、今後もっと頑張りたい」と意気込みを示したように、2人の将来にもぜひ注目したい。

今大会の優勝候補だったヴァネッサ・ジェームズ/モルガン・シプレ組は残念ながら、ショートの6分間練習でニコル・デッラ・モニカ/マッテオ・グアリーゼ組と衝突したことによって、心身とも影響を受け、ショートで不本意の演技をして7位につけた。フリーでは完成度の高い演技で高得点を叩き出し、5位へと巻き返した。このような事故に遭ったのは非常に残念だったが、2人は試合後「世界選手権の金メダルが絶対にほしい。優勝するまで、絶対に諦めない!」と誓い、来季への闘志が燃えたようだ。

他にも初出場ながら完成度の高い演技で6位につけた「新人組」アレクサンドラ・ボイコワ/ドミトリー・コズロフスキー組や、9位に入賞してアメリカに2枠を取り返したアシュリー・ケイン/ティモシー・ルデュク組などがとても印象に残る演技を届け、将来性を感じさせた。

このような「神演技」が続出した大会、ぜひ何度でも見たいと思う。

代替画像

ウェイ・ション

中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。

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