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Text by 中村康一(Image Works)
1位 山隈太一朗
ショート、フリーとも魂のこもった迫真の演技。そして見事な逆転劇だった。 「いやぁ、本当に信じられないし、全く予想してなかったので。ショート終わった時点で達っちゃん(壷井選手)が凄い点数を出していたし、予想外ですけど嬉しいです。今季、2本目のトリプルアクセルがなかなか決まらなくて、今日は手をついてしまったんですけど、堪えることができました」。
壷井選手が決められなかったトリプルアクセルを、1本目はクリーンに降り、2本目は手をついてしまったものの転倒せずに堪えた。そのことが逆転での優勝を呼び込んだのだ。そして最後のコンビネーションスピンは、スタミナ切れでふらふらしながらもなんとか耐えきった。
「最後のスピンは、いただけないですよね(苦笑)」。 と反省の弁が聞かれたが、耐えてやり切ったことが逆転優勝につながったのだ。
3年前、山隈選手は中学3年生で迎えた最後の全国中学校大会で優勝した。ただその後、長いスランプが彼を待っていた。全中優勝のキャリアを負担に感じることもあったという。その頃に私が山隈選手本人、そしてご家族とも話していたことなのだが、「高校3年生、最後の年までにインターハイ優勝できればいいよね」。それを見事に体現して見せたのだ。このエピソードを知っていただけに、優勝を決めた瞬間は鳥肌の立つ思いだった。
「有言実行、って感じですよね。やはり全国のタイトルを取れるのは嬉しいです」。
昨年のインターハイ、彼は優勝を目指すとの強い気持ちで大会に臨んでいた。ただその強すぎる気持ちが、余計なプレッシャーにつながっていたようにも見受けられたのだ。 「昨年は無駄に力んでしまっていました。優勝を意識し過ぎて色んなものを捨ててしまったんです。今年はその捨てたものを少しずつ拾い集めている段階です。視線を変えられたのは良い経験でした」。
そして来季への意気込みも聞かせてくれた。 「来季も根本は変わらず、スケートを楽しんで、常にポジティブにやって行きたいと考えています。国際大会への派遣も狙っていきたいです」。 紆余曲折のあった高校生活の3年間だったが、最後に大輪の花を咲かせることができた。来季の更なる活躍を楽しみに待ちたい。
2位 壷井達也
ショートプログラムは完璧な演技を披露。2位以下との点差も大きく、優勝は堅いと思われた。だがフリーでまさかの失速。フリー当日になって、トリプルアクセルが急に決まらなくなったのだという。 「ショートは自分の中では完璧な演技でしたけど、フリーはトリプルアクセルが反省点です。今、自分でもどうだったのかが分からなくて、6分間練習から、いつもの感覚と違うな、という感じがあって、その不安が出てしまいました。練習ではほぼほぼ決まる状態だったので今はびっくりしています」。
本人も原因が分からないという突然の不調。ただ今季の最大目標、世界ジュニアまではまだ時間がある。躓きがこの時期だったことは不幸中の幸いと言えるだろう。 「世界ジュニアでは、全日本ジュニアで出した自己ベストを更新したい」。 と意欲を見せた。本来の演技を取り戻せば、世界ジュニアでの表彰台も十分に狙える。健闘を期待したい。
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