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Text by ウェイ・ション
直前の練習中の接触で木原が脳震盪を起こしたため、日本代表の須海羽/木原龍一組は残念ながら四大陸選手権を欠場することになった。その結果、今大会は実質3カ国からの8組しか出場しない、少しさびしい大会となってしまった。それでも、元世界王者やグランプリシリーズのメダリストらが多く出場するので、レベルの高い大会になるに違いない。
最も注目が集まるのは、やはりオリンピック銀メダリストで四大陸を4度も優勝したことがあるウェンジン・スイ/ツォン・ハン組だ。平昌五輪の後、スイ/ハン組が長い休養時間を取り、国際大会に出場するのはなんと一年ぶりになる。国内でもテストとしてショートプログラムの試合のみに出場し、フリープログラムをまだ披露したことがない。
こんなミステリアスなフリーについてスイ/ハンに聞いたところ、「今までのプログラムと全く違うものになるよ」と返答し、「『トゥーランドット』とか『サムソンとデリラ』とか、ストーリーが明確なものを多くやってきたが、今年の選曲(『Rain, In Your Black Eyes』)ははっきりとしたテーマがなく、解釈や表現がより求められ、振付もよりモダン風になった」と説明した。 さらに、「難しいつなぎや、他の選手がやったことのないような独特の動きをいっぱい考えて入れたので、斬新で難しいプログラムになった。別に難しいことをやりたいからやったではなく、ただ自分が思う理想的なものを作りたいからだ。芸術品を作る時、誰もが技術上の難しさを考えず、ただ美しいと思うものを作るだけでしょう。私たちもただ自分が作りたいものを作って、みんなに見せたいだけだ。」と紹介した。 それでも、技術的なことを考えなければいけない。「新しいルールではエレメンツを失敗したら5点も減点されるが、きれいに完成すれば5点ももらえる。今できる最高の演技を目指して、攻めていきたい」とハンは意気込みを明かした。 今まで多くの傑作を見せてくれた二人が作り上げたこの新しいプログラム、見逃すわけにはいかない。
今大会でスイ/ハンの最大のライバルになるのは、チームメイトのチャン・ペン/ヤーン・ジン組だと言えよう。去年のオリンピックと世界選手権で不本意のミスが連発し、望む成績を取れなかったが、夏に猛練習し、今シーズン前半の試合で、安定感がだいぶ増した。グランプリファイナルでほぼノーミスの演技で自己ベストを更新し、見事に銀メダルを獲得した。その後の全国選手権でペンが練習で頭部が負傷したが、大きな問題にならず、完成度の高い演技で優勝を飾った。表現面では、ショートプログラムはイメチェンを目指してロックの曲を選んだが、意外と相性がよく、リズム感溢れるかっこいいプログラムになった。フリーの「La Vie en Rose」は二人の繊細なボディーラインをいかして、非常に優雅に見える。スケーティングと表現力を向上させた結果、今シーズンの演技構成点も上昇傾向にある。今大会でベストな演技ができれば、スイ/ハンに脅威するほどの高得点を叩き出せるかもしれない。
中国の2組以外、カナダとアメリカの代表たちももちろん表彰台を目指している。その中での有力候補は現カナダ王者のキルステン・ムーア=タワーズ/マイケル・マリナロ。ベテランであるこの組の特長は、エレメンツのスケールが大きく、きれいに実行できれば高いGOEがもらえることだ。今シーズン、安定した演技が続き、自己ベストも200点台に乗せた。今大会でいいパフォーマンスを2つ揃えれば、表彰台が十分狙えるのだ。
アメリカ代表の3組、全米王者アシュリー・ケイン/ティモシー・ルデュク組、ディフェンディング・チャンピオンたるタラ・ケイン/ダニエル・オシェイ組、そして元世界ジュニア王者のヘイヴン・デニー/ブランドン・フレイジャー組もなかなかの実力者で、自国開催の今大会で会心の演技が出来れば、いい成績も期待できる。
少しさびしく感じる大会ではあるが、見どころがいっぱいで、ぜひ楽しみにしたい。
ウェイ・ション
中国広東省出身、早稲田大学アジア太平洋研究科を卒業。 コンサルタントを勤めながら、フリーランスのジャーナリスト・通訳として活動。数々のフィギュアスケート国際大会で記者会見の通訳を担当する経験があり、昨シーズンから国際スケート連盟ホームページの選手フィーチャーインタビュー・記事も執筆。趣味はフィギュアスケートの各種記録、データを覚えること。
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