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フィギュア スケート コラム 2017年12月1日

【小塚崇彦のフィギュアスケート・ラボ2017】ペア 後編

小塚崇彦のフィギュアスケートラボ by 小塚 崇彦
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1年間の社会人生活を経て、今年2月、フィギュアスケートの世界へ戻ってきた、日本を代表するトップスケーター・小塚崇彦がお送りする「小塚崇彦のフィギュアスケート・ラボ2017」。平昌五輪に向けて、ペア・アイスダンスといったカップル競技にも注目が集まる中、この番組では美しいスケーティングと独自のスケート理論を持つ小塚崇彦がカップル競技について徹底研究。みなさんの「?」を解消します。

「小塚崇彦のフィギュアスケート・ラボ2017 ペア 前編」はこちらから
「小塚崇彦のフィギュアスケート・ラボ2017 ペア 後編」はこちらから

【特別講師】
岡部由起子(おかべ・ゆきこ)。元ペア・シングル選手。79年全日本選手権のペアで優勝。当時のパートナーは無良崇人の父無良隆志氏。現在はISUのテクニカルコントローラー、レフェリー、ジャッジとして国内外で活躍。16年から、ISU技術委員を務める。J SPORTSの解説者としてもお馴染み。


【4】ソロジャンプ

小塚:まあ、二人でね、合わせてジャンプをやっていくと思うんですけど、難しい点がありますよね。

岡部:なんとなく想像できますよね?シングルの選手がただ合わせるのとはまたちょっと話しが違って、プログラムのなかで、同じカーブで、同じタイミングで、やっていかなくてはいけないことがやはり困難です。離れすぎては良くないですし、近づきすぎると今度は危ないです。

小塚:やっぱりそれぞれ選手によって癖があるなか、たとえば、トウループでもスリーターンから入る方とモホークターンから入る方といるなかで、それを合わせないといけない。それってどちらかが合わせるんですか?

岡部:より上手にできる方に合わせていくんだと思います。

小塚:そうじゃないとなかなかタイミングとかも合っていかないですもんね。

岡部:あのー片方がスリーターン、もう片一方がモホークターンというのはみたことがないですね。だからどっちかに合わせてやっていかなくてはいけない。

小塚:じゃあ、どっちかが相手のことを考えてやっていかなくてはいけないのもペアの一つの難しさ。

岡部:もう常にです。ペアのエレメンツは常にお互いのことを考えながらやってますね。

小塚:たとえば、トリプルループをたとえば男性が跳んで、女性がトリプルループを失敗してシングルループになってしまった。この表記っていうのは?

岡部:これが残念ながらですね、失敗した方のバリューしか入っていかないんです。 つまり、表記としてはシングルループになってしまいます。片方が頑張ってトリプル跳んでもシングルになってしまいます。

小塚:そうなんですね。じゃあ点数もシングルループの点数で?

岡部:シングルループの点数しか入らないです。

小塚:GOEも?

岡部:-3になってしまいます。失敗したっていうのと、回転数が合わないとそこでマイナスをつけないといけないです。

小塚:あっシンクロしていない、調和がとれていないということで。

小塚:はぁーなるほど。つらいなー。厳しいなー。

岡部:厳しいです。だいぶ前の試合なんですけども、ソチのオリンピックで優勝したペアが、トリプルと、トリプルとダブルとのコンビネーションをしたんですね。男性はトリプルと、トリプルとダブルと、女性はトリプルと綺麗にシングルとダブルとだったんですね。でも、綺麗にピタッと合ってるんです。回転数が違うだけ。で、その時に話しにでたのが、「これをマイナスにするって忍びないよね」って話しはでましたけれども。でも回転数が違うときにはマイナスになります。

小塚:リズムが合って、タイミングが合っていたとしてもまあ回転数が合っていないから。

岡部:マイナスになります。ユニゾン(男女の動きの同等性、バランスよく揃っているか)がないということで。

小塚:じゃあ回転数までちゃんとみておかないといけないんですね。

【5】デススパイラル

小塚:えーデススパイラルにいきたいと思いますけど、これもペアならではな表記でもありますし、技でもありますし。

岡部:女性がどのエッジでデススパイラルをしているかで、決まってきます。

小塚:じゃあ、これがたとえば、フォアーインとかで入ったら、FIになるんですね。

岡部:はい。ですので、観ている皆さんは女性がどのエッジでデススパイラルをやっているかで表記もその通りになってきます。レベルというのは、えーデススパイラルに関しましては、少し簡素化されまして、難しい入り方、難しい出方をしているかどうか。これが一つレベルが上がっていきます。それ以外は女性がローポジションと呼んでるんですけど、デススパイラルの形、低い姿勢の形っていうのが、女性のスケーティングレッグの膝よりも頭が下がってないといけない。

小塚:膝よりも下がってないといけない!?

岡部:そのポジションのまま何回転できたか。たとえば、1回転できるとレベルが1、2回転するとレベルが2、というふうに上がっていきます。で、3回転までしかないんですね。プラス難しい入り方とかをするとレベル4になる。3回転までしかないっていうか、大体3回転くらいでもうスピードもなくなるし。デススパイラルって遠心力で回転してるんですけど、だんだんスピードなくなってくると、遠心力がかからなくなるので、もう潰れちゃんですね。その前に出ていくって作業ですけども、これがなかなか低い姿勢で回るのは難しい。で、もう一つ大切なことは、男性のピポッドポジションも、これが非常に難しくて。

【6】ペアスピンコンビネーション

小塚:ペアスピンコンビネーションは?

岡部:これはもうまさに二人で一緒にスピンを回るというものです。何が難しいかと言いますと、一人で回っているときは自分の中心に軸があればいいんですけど、2人なので、どっちか片方に軸が合わせるわけにはいかないので、どうするかっていうと真ん中のところに軸がないと回れないですよね。なので、ポジションによっては離れていたり、ピットポジション同士だと意外とちょっと離れていたりします。 キャメルポジションとかアップライトポジションだと一緒ではないですけど、近いんですけれども。そういったところの軸の取り方。ポジションはソロスピンと同じようにキャメル、シット、アップライトがあって、そのポジション、基本姿勢から基本姿勢に何回変わったかとか。難しいバリエーションをお互い何回やったか。というところでレベルが上がってきます。

小塚:うーん。

岡部:結構複雑。

小塚:複雑ですね。そのバリーションのディフィカルトバリエーションは、基本的にはシングルのディフィカルトバリエーションと同じ感じなんですか?

岡部:たとえば、足が後ろにあったりするのもシットポジション。膝よりもヒップが下がっていればシットポジションなので、シットポジションのバリエーションとしてサイドにあったりとか後ろにあったりとかっていうふうにしていますので、後ろ向きに後ろでたたむポジションはシングルあるんですけど、それはペアならではのスピンの形だと思います。

【7】ソロスピン

岡部:合わせるのが大変。これは離れすぎてはいけないし。近づきすぎると逆に危ない。何度も惨事は起こってますよね。その辺のところが難しさの一つでもあります。あまり離れていても点数が下がってしまうし、近づきすぎるのは怖いですし。岡部:あとフライング入りでよく入ってますけど、そのフライングも合わせるのが大変。

小塚:はい。跳んだりとか。そうですよね。どういうふうに合わせるんですか?

岡部:これはどうやって合わせてるかって思いますよね。見てるんです。お互いを見てるんです。

小塚:見てるんですか?スピン回ってるときに?

岡部:はい。なので、速いスピンを合わせるはすごく大変なのと、そこになってくるともう見えてないと思うので、本当に感覚でやってると思います。たとえば、シットのバリエーションで、頭下げちゃうことありますよね?それでもピタッと合わせてくるカップルもいるので、そのあたりはすごいなって思います。

小塚:うん。見てないのに合わせられるんですか?

岡部:何回転したらこの曲の切れ目で次のポジションにって、それはもう練習しかないですよね。

小塚:それこそシングルでも入り損ねることあるから。そういったところはタイミング合わせるのすっごい難しいんだろうなって思います。

【8】ステップシークウェンス

小塚:ステップシークウェンスですね。

岡部:ステップシークウェンスに関しましては、基本はシングルと一緒。ステップの数の数え方とか、クラスターとかそういうもは同じなんですけど、レベルをとっていくうえでの特徴はペアならではの、たとえば交差をしていく。それが3回リンクの半分までにできているかどうかというのがひとつ。それから、ホールドをしたまま、これもリンクの半分までにできていたかどうかということがシングルと違うレベルが上がる要素ですね。ただ、どちらかしかとれないんです。両方やって2にはならなくて、どちらかしかできない。あとはクラスターの数とかは女性ができていても、男性ができていなければとれない。いつもそのレベルとか難しさ、難易度っていうのは残念ながらペアの場合は下の方に合わせる。

小塚:(どちらかが)失敗したら失敗した方に合わせて点数がつけられちゃうんですね。

岡部:そうですね。だから、よく試合が終わった後の映像で、失敗した方がうなだれてて、片方が慰めてるみたいな映像ってよく出てくると思うんですけど。誰にでも失敗はあるから、それはお互いあまり責めない。

【9】コレオグラフィックシークウェンス

岡部:これはですね。シングルですとやれることが限られてきますけども、ペアですととても多くのことができる。つまり、ダンスリフトと呼んでますけど、スモールリフト、肩の上まで上げない。色んなバリエーション、アレンジのきいた素敵なリフト。たとえば、男性の靴の上に女性が乗るとか。それで男性がイーグルしているとか。とにかく色んなアイデアを含んでほしいなっていうのがこのコレオグラフィックシークウェンスです。

小塚:じゃあもう本当に自由というか。なんでもできるってことなんですね。これはレベルがないということなので。

岡部:はい。GOEだけで。そのプログラムをいかに活かせるか。

小塚:華やかにみせるか。

岡部:そうです。それからどれだけ素敵で素晴らしいことができているかっていうことでGOEが上がってきます。

17/18シーズンSP

小塚:今シーズン、2017-2018シーズンですね。ショートプログラムとフリースケーティングの要素について少し教えていただきたいと思うんですけど。

岡部:シニアのペアなんですけれども、内容が毎年ちょっとずつ変わっていて。ショートプログラムは今年はですね、グループ3ハンドトゥヒップのリフトをしなくてはいけない。そして、ツイストはダブルまたはトリプル。4回転はショートではできない。スロージャンプ、ソロジャンプはダブルまたはトリプル。それからデススパイラル、今年はフォアインサイドのデススパイラルです。

小塚:フォアインサイド。じゃあ表記がFIになるんですね。

岡部:で、今年はペアスピンコンビネーションです。これも年によってソロスピンになったりしています。

小塚:うん。ショートプロフラムの場合はシーズンによって変わるってことなんですね。今シーズンはペアスピンコンビネーション。

岡部:そして、ステップシークウェンスが入ってきます。

小塚:コレオグラフィックシークウェンスは?

岡部:コレオグラフィックシークウェンスはフリーで。

小塚:フリーだけなんですね。ショートプログラムの演技時間についてですけども。

岡部:はい。これはシングルと一緒で2分40秒の±10秒。

小塚:±10秒。じゃあ最大で2分50秒。最小で2分半。でも、2分半じゃ、ちょっとねー。

岡部:あまりいないですね。

小塚:入りきらないですよね?大体2分40秒以上で、50秒ギリギリのところで終わる選手が多いですよね。

17/18シーズンのFS

小塚:今度フリーに。>

岡部:リフトは3つできます。そのうち1つは必ずグループ5じゃないもの。

小塚:グループ5じゃないものですね。じゃあもう4か3かどっちか?

岡部:シニアになるともう本当に3か4のどちらかしかやってこないですね。1、2はほとんどやってくる人いないです。ツイストリフトは4回転までできます。スロージャンプは違った種類を2種類。

小塚:じゃあ、たとえばループやったら、今度ループはできないからフリップだったりトウループだったりサルコーだったり。

岡部:そうですね。ソロジャンプは単独のジャンプ1つと、それからコンビネーションまたはシークウェンス。デススパイラルは今年はフォアインサイドがショートプログラムだったので。同じスパイラルができないので、また違う、たとえば、このバックアウトをやらなければならない。

小塚:あっ。ショート、フリー。競技を通じて同じものをやっちゃいけないんですね。フリーの演技時間についてですけども。

岡部:はい。男子と同じ滑走時間で4分30秒の±10秒です。

小塚:これも、まあ、大体4分40秒ギリギリ?

岡部:そうですね。要素がたくさんありますからね。

小塚:色々種類を教えて頂きましたけども、ペアならではというかここをみた方がいいっていうのは?技術もそうですけども、全体でも。

岡部:そうですねー。ペアならではですと、もちろん技術といえば、ダイナミックなスロージャンプ、ツイスト。これは見ごたえありますし、みどころになってくると思います。全体を通して皆さんにみていただきたいのが、どれだけやっぱりユニゾンが良かったか、それから一体性があったか。二人のスケーターが同じことしていてもバラバラ感がでるのではなくって、一体感があったかどうか。

小塚:同じことやってるなっていう感じですよね。

岡部:はい。で、ステップシークウェンス、コレオグラフィックシークウェンスとかをみていくと違うことしているけども、一体感をちゃんと感じる。上手なペアはそれを感じるんですよね。そこがみえてきたかどうか。

小塚:なるほど。じゃあ、毎度毎度、2人とも同じことをやっているわけではなくて、違うことをやってるんだけど、ちゃんと曲を解釈して表現、雰囲気を作れている。

岡部:はい。おっしゃる通りでペアの良いところです。 それから、もう一つはシングルでは味わえないカップル競技ならではの空気感。そのあたりはたとえば、パフォーマンスの点数に現れてくるし、その動き方を二人でどういうふうに曲を表現するのかによって、たとえば、インタブリテーションも変わってきますし、氷の使い方、空間の使い方、それもシングルはまあ一人ですけどもペアでやることによって色んなバリエーションがでてくる。言ってみればもう、スケーティングスキルはちょっともう別物ですけども、どのコンポーネンツにも上手に表現できていったかどうかということで点数が変わってきます。そのあたりを皆さん見抜けるときっとより面白いと思いますよ。

小塚:迫力だけじゃなくて、その雰囲気にも注目していきたいと思います。たくさん解説をしていただきました。わかりやすくありがとうございました。

岡部:ありがとうございました。はい。少しでもペアのことがわかっていただけたらうれしいです。

小塚:しっかりと勉強します。

岡部:はい。よろしくお願いします。

放送情報

12月19日 (火) 午後11:30~深夜 00:30 [初回]
小塚崇彦のフィギュアスケート・ラボ2017 アイスダンス編
テレビで見るなら「スカパー!」
スマホ・タブレット・PCで見るなら「J SPORTSオンデマンド」

代替画像

小塚 崇彦

1989年、愛知県生まれ。元五輪代表の父のもと、5歳からスケートを始める。2005-06シーズン、全日本ジュニア選手権・世界ジュニア選手権で優勝。2010年はバンクーバー五輪に出場、8位入賞。世界選手権は計7回出場し、2011年の大会では2位に。全日本選手権には連続12回出場し、2010年大会の優勝をはじめ、7回表彰台に上がる。2016年にトヨタ自動車へ入社。現在は解説や教室講師等、活動の幅を拡げている。

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