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フィギュア スケート コラム 2017年5月8日

フィギュアスケートラボ Vol.1 研究材料:ジャンプ

小塚崇彦のフィギュアスケートラボ by 小塚 崇彦
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小塚崇彦のフィギュアスケートラボ

皆さんこんにちは。小塚崇彦です!
「フィギュアスケートラボ」2回目となる今回からはフィギュアスケートをより深く楽しんで見ていただくために、実際に、いろいろなポイントをお話しさせていただこうと思います。

フィギュアスケートを見ていると、ジャッジの点数などわかりにくいことがたくさんあるのではないでしょうか。僕も、例えば経済のことなどはわからないことが多いので、そういう時に池上彰さんのような方の解説をきくとよく理解できます。同じように僕も皆さんにわかりやすく説明できればいいなと思っています。

今日は、まずフィギュアスケートで一番見ごたえのあるジャンプについてお話ししたいと思います。「アクセル」「トウループ」「サルコウ」「ループ」「フリップ」「ルッツ」といったジャンプの種類は、フィギュアスケートが好きな皆さんはたいだいおわかりだと思います。

どのジャンプにも共通しているのは選手が求める理想のジャンプは、やはり、誰が見ても迫力と美しさを兼ね備えた、高くて幅のあるジャンプです。スピードを出したらタイミングが合うかどうかが関わってきます。また、スピードをなくして思いっきり上に上がろうと思えば高く上がりますが、そうすると幅が出なくなりますし、逆に幅を出そうと思うと、今度は低空飛行になってしまいます。そこの調和のとれたジャンプを選手は目指しています。

フィギュアスケートのシーズンは10月~3月なので、だいたいシーズンオフの5~7月にプログラムを作る選手が多いです。最近、本人から聞いた話で安藤美姫さんは9月に作ったことがあると聞いて驚いたことはありますが……

そのプログラムを作る前にいろいろなジャンプの入り方を選手は練習しています。練習は自分の技量を増やす時間なので、ジャンプの前にウォーリーやスパイラル、ターンから入るとか、できるようにしていく。そのできるようになったことを、プログラムを作るときに一つのパーツとして、一つ一つ振付けの先生に見せます。それを、そこで採用されたパーツをプログラムに埋めていき、ステップ等でつなぎ合わせていくというパターンが多いですね。

フィギュアスケートの採点は、技術点と演技構成点の合計得点からなりますが、ジャンプだけでなく、スピン、ステップと一つ一つの要素には基礎点に加えて、出来栄えを評価するGOE(Grade of Execution)と呼ばれる点数があって、ジャッジは+3から-3の7段階で評価して、平均値を足したものが技術点となります。

<参考>ジャンプ基礎点一覧
https://www.jsports.co.jp/skate/game/#figureSkateGame06

皆さんがご覧になっていて、難しいと思うのはGOEの見極めではないでしょうか。GOEはただジャンプの美しさだけでなく、その難しさが加味されているなとやっている側では感じています。

ISUでは、以下の8項目のうち2項目満たしていれば+1、4項目なら+2、6 項目またはそれ以上なら+3と評価するとしています。*

------------------------------------------
(1)予期せぬ入り方、独創的な入り方、難しい入り方をしている
(2)明確で評価に値するステップやスケーティング動作から直ちに跳んでいる[入り方の評価]
(3)空中で変形ポジションをとっている、または回転の開始を遅らせている
(4)高さや飛距離が素晴らしい
(5)着氷時に手足がよく伸びている、または独創的な出方をしている
(6)入りと出の流れ(加えてコンビネーション・シークエンスではジャンプ間の流れ)が優れている
(7)開始から終了まで無駄な力が全く無い*
(8)音楽構造に要素が合っている*

(*5月9日一部修正)
------------------------------------------

それぞれ8項目は、ジャンプを跳ぶ前、空中、着氷の評価になっています。

一瞬のジャンプで、そんなこと考えられるのかよ? ですよね。
審判員もこの8項目とにらめっこしながら、いつも採点しているわけではありません。

では、どのように採点しているか、少しずつ紐解いていきたいと思います。

最近では、ステップから跳ばずに待っていて跳ぶとマイナスになってしまいます。きれいなジャンプを跳んでプラスになっても、待っているとマイナスになるので、相殺されてジャンプ自体の点数がゼロ点になってしまう傾向があります。そのために、コネクティングステップ、イーグル、ターン、ウォーレン、スパイラルなどをジャンプの前に動きをつけます。

たとえばまずイーグルをやってからジャンプを飛んだり、流れのあるジャンプを飛んでからイーグルをやったりとか、ジャンプの入りと着氷で難しいことをやれば、そこでGOEの点数が上がります。

選手としてはきれいなジャンプを飛んでしっかりとランディングすることを基本としていますが、ただきれいに降りるだけではプラス3は付きづらく、スパイラルからジャンプとか、足上げてからジャンプとか、ちょっと変則的な入りをして、変則的な空中ポジション、そして変則的に降りる。それがGOEで+3がつくかどうかのカギだと思いますね。

実際にやっていて、寸分狂いなく本当にきれいなジャンプだったときでも「このジャンプは+1か+2がつくかな」と思いますが、それだけで+3がつくのはなかなか難しいです。

それでは、皆さんが見ていて「あ、これはプラスだな」とわかるポイントをお教えできればと思います。まず、もちろん6種類のジャンプには、事前に要素表が出ているので、それを確認して基礎点数はある程度把握しておきます。簡単なジャンプほどプラスがつきやすいので、そこは要チェックです。

<参考>GOE採点ガイドライン(プラス面/エラーに対する引下げ)
https://www.jsports.co.jp/skate/game/#figureSkateGame08

小塚崇彦のフィギュアスケートラボ02

そして、ジャンプの入りに注目してほしいと思います。入りは選手それぞれ違うので、徐々に何か違うことをやっているなと気づくことができるようになると思います。それがわかるようになるには、何度も様々な選手を見て、目を養う必要があります。

例えば審判員としては、普通だとクロスで入ってきて跳ぶところを、全然違うところから何の前触れもなくシュッと飛んだらプラスをつけたくなります。まずベースとなる基本ジャンプを知り、見極めるだけの土台を作ってほしいと思います。

テレビを見ていれば、端の方に点数が加算されていくので、それを見ていくのもいいと思います。それからいろんな大会の選手のジャンプを見比べることもオススメします。その際に、僕もそうですが必ずメモを取るようにします。選手もプロトコルを見返して、比較していますが、ノートに自分なりにプラスやマイナスをつけて、あとで答え合わせをする。そうしていくとだんだんジャッジの傾向もわかってくるのではないでしょうか。

あとはフィギュアスケートにはレビューがあるので、同じように見直しができる余裕が出るとさらに面白くなると思います。ジャッジと自分の感覚を合わせていくような感じになると思います。

ただ、当然ですが、やはり、前述したとおり、ジャンプ自体の質が一番大事です。それは見ていてきれいか、心地いいかどうかが大事。審判も人間ですから、ジャンプが美しいと思う感覚は見ている皆さんと同じです! 僕が解説するときも、メモを取っていて、いいなと思ってプラスをつけているのは、やはりジャンプの質からきています。まずはジャンプそのもの美しさに注目してほしいと思います。

【フィギュアスケートラボ Vol.1 研究結果:ジャンプ 】
① 理想のジャンプは誰が見ても美しいと思えるような、高くて幅のあるジャンプ。選手たちは高さと幅の調和のとれたジャンプを目指している。
② GOEを見極めるにはジャンプそのものの美しさだけでなく、ジャンプへの入り方や空中姿勢、着氷してからの流れにも注目! 選手の大会ごとのジャンプとプロトコルを見比べて、ジャッジの感覚に近づこう。

代替画像

小塚 崇彦

1989年、愛知県生まれ。元五輪代表の父のもと、5歳からスケートを始める。2005-06シーズン、全日本ジュニア選手権・世界ジュニア選手権で優勝。2010年はバンクーバー五輪に出場、8位入賞。世界選手権は計7回出場し、2011年の大会では2位に。全日本選手権には連続12回出場し、2010年大会の優勝をはじめ、7回表彰台に上がる。2016年にトヨタ自動車へ入社。現在は解説や教室講師等、活動の幅を拡げている。

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