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小笠原歩(女子カーリング):人生の分岐点が必ず4年に1度のオリンピックと重なってくる
それぞれの4年間 ~冬の一瞬に縣ける女性アスリートの肖像~ by J SPORTS 編集部ソチ五輪を目指すカーリング女子日本代表選手の中で、2人のママさん選手に注目が集まっている。小笠原歩と船山弓枝だ。ともに2006年のトリノオリンピックの後、選手活動を休止。結婚・出産を経て戦う2人に対し、ママ・アスリートのパイオニアとして注目されている。 「私たちのことをパイオニアと言う方もいらっしゃいますが、自分の中ではそういう意識はありません。自分の好きなカーリングをずっと続けているだけなんです。だから、先駆者というよりも、アマチュアスポーツのトップの大会であるオリンピックに出場するだけでなく、いい結果を出したいと思って、20年以上戦ってきました。ただ、トリノを目指した4年間に、次のバンクーバーは目指さないということは決めていましたが、復帰することも頭に描いていました。トリノからバンクーバーまでの4年間で結婚したことは必然的なものだったと思います。選手は人生の分岐点が必ずオリンピックイヤーとは重なってくるんです」
トリノからソチまでの期間は8年。選手復帰した2009年から考えても4年。この長いブランク中で再びオリンピックを目指す戦いを続けることに不安はなかったのだろうか?
「オリンピックは、最初夢とか憧れとかいう次元のものです。それが戦っていく内に、現実的な目標に変わる瞬間があるんです。その時に次のステップを踏み出そうという意識に変わっていって、こうして復帰したり、またオリンピックを目指すようになる。自分たちの求めているものはとても厳しいものではあるけれど、4年間の中で、現実的な目標を持って戦っていくようになるんです」
小笠原と船山が復帰したもう理由の1つに、日本のカーリング環境をもっとよくしたいという思いがあった。海外のように、出産しても選手として第一線で活躍できるような環境が増えていくことを望んでいた。実際に復帰した小笠原は、日本のカーリング環境がどんどんよくなっていることを実感している。 「トリノ五輪の時、チーム青森でオリンピックを目指していた頃を思い返すと、生活面も含めて、一杯一杯で戦っていました。その時から比較すると、カーリングができる環境が格段に良くなっています。カーリングで上を目指す選手は、大学でもカーリングができたり、企業がスポンサーになってくれたりすることで、以前よりもカーリングに打ち込めるようになりました。私自身は、妻であり母になりましたが、選手として上を目指したいという気持ちは、今も昔もまったく変わらないものです。ただ、環境がよくなったことで、よりカーリングに打ち込めるようになったことは大きいですね」
現在は1人息子を育てながら、ソチへの戦いを続けている小笠原。船山とはママ友としてもいろいろ相談し合う仲だ。ところでトップアスリートでありながら主婦と母親の3役をこなす難しさはどのようなものだろうか?
実はカーリングしている時よりも、主婦業の方が大変なんです(笑)。合宿や遠征に行っている時の方がチームにも甘えられるし、助けてもらえることが多いですから。料理ももちろんやっていますけど、もともと得意な方ではなくて。今はネットのレシピのような便利なものがありますが、旦那には本当に助けてもらっています。普段は面と向かっては言わないのですが、本当に感謝しています。好きなことをやらせてもらっている立場なので、できる限りの家事・育児をこなした上でのカーリングだと思っています。もし、子どもが熱でも出したら、どんな状況であっても、子どもを優先しなければいけない。それが母親ですから。
ところで、子どもがカーリングをやりたい!と言ったら?
「息子がやりたいと行ったら、どんな小さな大会でも行ってしまうでしょうし、ハラハラドキドキして、試合を見ていられないかもしれませんね。スキップは、勝ったり負けたりするのもすべて責任にがかかってくる立場です。最後の一投まで、試合がどうなるかわかりませんから、私も親孝行しているのか親不幸してるいのかわからないぐらいなんです。だから、できれば息子には違うスポーツをやって欲しいと思いますね(笑)」 」
最後に、結婚や仕事など様々な問題に直面する同世代の女性に対して、ママ・アスリートの先駆者としての改めてメッセージを伺った。
「何かをやりたいと思うんだったら、自分から一歩を踏み出さないと何も道は開きません。もし、誰かに背中に押されて始めてしまったとしたら、挫折した時に誰かのせいにしてしまうことがあるかもしれません。でも、自分で決めた道を進めば、何かあった時も自分が選んだ道だと信念を持つことで、きっと乗り越えられると思うんです。こうなりたい、こうやりたいと思うことがあれば、自らの意思で踏み出すこと。そうすれば後悔することなく、目標に向かっていけると思います」
「こうなりたい、こうやりたいと思うことがあれば、自らの意思で踏み出すこと」
それが夢の先まで続いていく。
小笠原 歩おがさわら あゆみ
1978年11月25日北海道出身。
常呂町でカーリングを始め、船山らとともにシムソンズで活躍。1998年世界ジュニアで銀メダルを獲得。2002年ソルトレイクシティオリンピック、2006年トリノ五輪に出場。2大会で入賞を果たす。トリノオリンピック後は一時選手活動を休止するも、2009年復帰。現在北海道フォルティウスのスキップであり日本代表として活躍中。
J SPORTS 編集部
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