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天理大の粘り強いディフェンスが際立つ試合だった。2025ムロオ関西大学ラグビーAリーグ最終節、11月30日(日)、東大阪市花園ラグビー場には8,432人の観衆が集った。6戦全勝同士の対決となった天理大対京都産業大は、午後2時、キックオフされた。京産大FL伊藤森心キャプテン(4年)の頬には一筋の涙の跡があった。立ち上がりから両チームが激しくぶつかり合い、コンタクト局面では京産大が前に出るシーンも多かった。
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上ノ坊駿介(天理大学)
しかし、先制したのは天理大だった。前半5分、ハーフウェイライン付近の左ラインアウトから攻め、SO上ノ坊駿介キャプテン(4年)のハイパントを再確保。上ノ坊の左方向へのロングパス受けたWTBフコフカ・ルカス(1年)がパワフルに突進し、さらに右オープンへ展開する。FBフィリモネ・サイアが右タッチライン際を快走し、FL太安善明(3年)が突進してトライラインに迫る。ここでできたラックの左サイドをSH朝倉達弥(4年)が突破してトライをあげた。縦横無尽にボールを動かしての素早い攻撃が生み出した先制劇だった。上ノ坊のゴールも決まって、7-0となる。
前半11分、天理大陣中盤の左中間スクラムから京産大が連続攻撃を仕掛ける。右中間をFB宮里快一(2年)が突進して22mラインに迫ったラックから左オープンへ。ここで天理大のディフェンスが乱れ、ぽっかり空いたスペースにFL平野龍(4年)が走り込んで抜け出し、NO8シオネ ポルテレ(4年)が約20mを走り切り、最後はタックルを弾きながらトライエリアへボールを持ち込んだ。これで、7-5。正確なプレースキッカーであるSH高木城治(3年)がゴールを狙ったが、これを天理大WTB平松麟太郎(4年)がチャージダウン。僅差勝負が予想された戦いのなかでは貴重なゴール阻止だった。
アリスター・サウララ(天理大学)
天理大は、14分、20分とラインアウトからのモールでトライラインに迫り、FLアリスター・サウララ(2年)が連続トライ。28分、京産大も高木がPGを決めて、スコアは、21-8となる。38分、京産大のWTBナブラギ エロニ(3年)が左コーナーに飛び込んだかに見えたが、天理大WTB平松が猛然とタックルしてタッチラインの外に押し出していた。後半も先に取ったのは天理大だった。京産大陣深く入ったラインアウトから、HO稲嶺翔太(4年)がトライ。上ノ坊のゴールも決まって、28-8とした。
ラグビー 関西大学リーグ2025(11月30日)
【ハイライト動画】京都産業大学 vs. 天理大学
京産大もトライチャンスを作るのだが、天理大の鉄壁のディフェンスに阻まれて追加点が奪えない。逆に天理大は17分、フコフカ・ルカスがトライして、35-8と突き放す。35分、京産大のナブラギ エロニにトライを奪われ、40-15とされたが、激しく前に出るタックルで何度も京産大を押し戻し、ゲインを許さなかった。終了間際には、上ノ坊が京産大のパスをインターセプト。約80mを走りきり、2年連続14回目の関西制覇に花を添えた。
「6月に不祥事を起こし、(リーグ戦に)出場できるかどうかわからない中で、なんとか出場することができ、チャレンジャーの気持ちで7試合を戦い、ようやくここまできました。安心したというか、戦い抜けたなという、ほっとした気持ちです。今年はディフェンスからチームを作ってきました。きょうも粘りのディフェンスをしてくれて、失点をよく抑えてくれたと思います」。小松節夫監督はいつも通り冷静に優勝の喜びを語った。
京産大の徹底マークにあった上ノ坊キャプテンは「僕がマークされれば、周りが生きる」と、パスやキックで周囲を生かすことに徹した。「FWがモールで頑張ってくれ、身体を当て続けてくれたので、BKがのびのびとプレーできたと思います」。大学選手権に向かっては、「関西1位のプライドを持って、関東勢相手に胸を張って戦おうと思います」と意気込みを語った。
一方、京産大は敗れたものの、チャンスを数多く作り出しており、反則を何度かとられたスクラム、不安定だったラインアウトを修正して選手権に臨みたい。熱血漢の伊藤森心キャプテンは言った。「京都に帰って、自分たちの強み弱みを整理したいです」。まずは、5年連続のベスト4が目標になる。
プレーヤー・オブ・ザ・マッチは3トライをあげた天理大アリスター・サウララが受賞。全員がハードワークするディフェンス、大学ラグビー屈指のスキルを持つSO上ノ坊駿介、決定力あるフコフカ・ルカスの存在は対戦チームには脅威になる。関西王者が大学選手権でどんな戦いを見せてくれるのか楽しみだ。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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