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こんどの土曜、11月22日の日本時間午後9時のキックオフ。日本代表は敵地トビリシでジョージア代表とぶつかる。必勝にして必見のバトルである。
ジャパンの11月17日時点での世界ランクは13位。ザ・レロスことジョージアのほうは同11位だ。勝つと「順位の上下」は入れ替わる。
J SPORTS オンデマンド番組情報
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リポビタンDツアー2025 ラグビー日本代表テストマッチ ジョージア vs. 日本(11/22)
11月22日(土)午後8:30~ LIVE配信
2年後のオーストラリアでのワールドカップにおける各プール組み分けでは「12位以内」ならトップ6につぐ「第2バンド」に入れる。抽選は12月3日。12位のウェールズは今週末の対オールブラックスに敗れても、細かな計算によれば「日・ジ両国」の下には回らないそうだ。
白状すると「ワールドランキング」が苦手である。上記も親愛なる「ラグビーリパブリック」のリポートを参考にした。小数点以下の数字なんてスポーツの敵だ。というのは数学嫌いの言い訳だが、条件の異なる各試合をならして序列に組み込んだところで無理は消えない。
ただし先のジャパンーウェールズの開始時のランクはそれぞれ13位と12位、結果は23-24であった。夜が明けて日曜の午後、明治大学と帝京大学のおしまいまでもつれる白熱のゲームに酔い、余韻に浸りたいと、ラグビー好きの集う酒場へふらふら上陸すると、目利きの主人が言った。
「ランキングって意外と正解なんですね。本当にどっこいどっこいで」
どっこいどっこい。よい響きだ。
電卓駆使でもとらえられぬポイント地獄を脱け出そう。ジャパンとジョージア。ひとつのテストマッチ。どこか(ランキング)へつながるのでなく、誇り高き首都トビリシに完結する永遠の激突。
昨年、スポーツ誌の『ナンバー』に隔号で連載しているコラムで「ジョージアのラグビー」を紹介しようと考えた。とくれば、あの問答無用の突貫スクラムにまず触れたい。
書き出しのアイデアがあった。同年5月、ジョージア国内で「スパイ法案」に反対する市民デモが広がった。ニュース映像で制圧隊の強力な放水にもひるまぬ群衆を目にして、ちょっと感動した。やはり「スクラム国」なのだと。ここから文章を始めよう。
ところが世の中にはそっくりなことをひらめく同業者がいる。以下、オーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルド紙のジョナサン・ドレナン記者の手がけた記事から。
「象の体重に匹敵する9トンもの放水の衝撃に人々はちぎれず逃げもしない」「これはジョージアの人々の難敵に向かってスクラムを組む能力を示している」。
同紙のサイトをのぞいて、たまたま見つけてしまった。「象の体重」が効いている。脱帽。東京の国際報道ならぬスポーツが持ち場のライターはプランAの撤回を迫られた。
そうなのだ。善良だろうトビリシ市民は無慈悲な放水をよけない。そして、かの土地の育むラグビーのフロントローは「象の体重」をはねのけ、つぶし、必要なら呑み込んで、前へ進む。王様愛用のブラシのような髭。石の頭と首。岩の肩。不敵な笑み。ようこそプロップの故郷、ジョージアへ。
ジャパンのスクラムは低くて鋭い。8人でひとつだ。元オールブラックスの担当コーチ、オーウェン・フランクスの教えを選手が信じているので簡単にはばらけない。本稿執筆はメンバー発表の前である。ただ、だれが先発しようと、桜のかたまりは当たりの結束では対抗できる。問題はその先である。
ジョージアの前3人は高速のヒットを浴びて、いったん体勢を崩しても、へっちゃらで人生を続ようとする。筋力や記憶、つまり体格と文化によって、ひとりひとりが強引に立て直す。まるで「不利な姿勢から盛り返す男どもの賛歌」という伝統競技でも楽しむかのように。
昨夏の来日時、レロスを率いるヘッドコーチ(HC)、リチャード・コクリルは会見で述べた。
「DNAの観点でジョージアの選手は強靭なのです」
アスリートの能力を「生来のもの」と決めつけてはならない。努力や環境、なにより本人の性格や行動にまず着目すべきだ。ただ元イングランド代表フッカーのコクレルHC(オールブラックスのハカのリーダーに鼻と鼻のつくほどジリジリと近づいた名物男)の実感は少なくとも上滑りはしないだろう。こうも述べた。
「人間としてラグビーに向いている。謙虚で働き者。困難な歴史がそうさせるのだと思う」
支配され、あらがい、意思を保ち、調和を求め、映画や音楽に発揮される芸術性を磨き、素焼きの壺で醸す古式ワインで世の中に深みをもたらし、ラグビーでは眼前のすべてを壊し砕く。
現地午後4時のミヘイル・メスヒ競技場。ソビエト連邦時代のサッカーの英雄(グルジアのガリンシャ!)の名を冠したスタジアム。その芝をはがす「まとまり」対「火事場の怪力」のファイトを凝視しよう。
ちなみにジョージアは11月15日のカナダとのテストマッチに38-17の勝利。これほどスクラムについて記しておいて、なんなのだが、バックスの大外展開がさえていた(ハットトリックの14番、シャルヴァ・アプツィアウリは出てくれれば要注意)。
ハーフの齋藤直人はオンライン取材で対ジョージアのひとつの核心を語った。
「ビッグパック(大型FW陣)をどれだけ動かせるか」(サンケイスポーツ)。
ついでに心の動揺も誘いたい。そのためには? スクラムを押す。モールを止める。以上。
そういえば昨年7月13日の仙台での対戦は23-25で落とした。
前半20分、背番号7の下川甲嗣が、厳罰化されたばかりの「クロコダイルロール(ラックのクリーンアウトでのひねり落とし)」の反則で退場を科せられた。期するところあり。勤勉かつ怜悧な26歳がトビリシの芝に立てば、いつも以上にチャンスの創造およびピンチの阻止に働くだろう。
文:藤島 大
藤島 大
1961年生まれ。J SPORTSラグビー解説者。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。 スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。 著書に『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『人類のためだ。』(鉄筆)、『知と熱』『序列を超えて。』『ラグビーって、いいもんだね。』(鉄筆文庫)近著は『事実を集めて「嘘」を書く』(エクスナレッジ)など。『 ラグビーマガジン 』『just RUGBY 』などに連載。ラジオNIKKEIで毎月第一月曜に『藤島大の楕円球にみる夢』放送中。
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