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「本当に残念です」。エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、母国オーストラリアに4点差で及ばず、唇をかんだ。かつて自らが率いたチームであることや、母国への特別な感情は封印。日本代表の指揮官として勝利を目指したが、あと一歩届かなかった。「リポビタンDチャレンジカップ2025」日本代表対オーストラリア代表 は、10月25日(土)、国立競技場(東京都新宿区)に41,612人の観衆を集めて行われた。
J SPORTS オンデマンド番組情報
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リポビタンDツアー2025 ラグビー日本代表テストマッチ 南アフリカ vs. 日本(11/01)
11月1日(土)深夜0:30~ LIVE配信
午後2時52分、日本代表SO李承信のキックオフで激闘の扉が開いた。小雨の降るコンデションもあって、オーストラリアはパスを少なめにした縦突進と、防御背後へのキックを軸にした。「最初の20分、傍観者になってしまい、日本代表らしい激しさがあまりなかった」とジョーンズHCがコメントした通り、オーストラリアの圧力にディフェンスの時間が多くなる。前半13分にはオーストラリアに攻め込まれ、防御背後へのキックを3人が譲り合うような形になってキャッチできず、その後の攻撃でオーストラリアのキャプテン、FLニック・チャンピオン・デクレスピニーにトライを奪われる。
その後の日本代表はディフェンスラインのオフサイドなど反則を繰り返してしまう。先発CTB中野将伍のHIA(脳震盪のチェック)の間に出場していたCTBチャーリー・ローレンスが、チームとしての反則の繰り返しでイエローカードを受けた。14人になった日本代表だが、全員が的確なタックルを繰り出してトライラインを死守。陣地をばん回すると大歓声が沸き上がる。流れを変えた日本代表はFB矢崎由高のスピードあふれるカウンターアタックなどで攻め込み、27分には李がPGを決めて、7-3と差を詰めた。しかし、前半30分、ハーフウェイライン付近のスクラムからオーストラリアBKのサインプレーに対応できず、CTBジョシュ・フルックにトライを奪われ、14-3と突き放された。
前半はこのスコアのまま終わったが、HO江良颯は両チーム最多の17タックルを決めるなどオーストラリアの攻撃を寸断するタックル、スティールを決め続け、NO8に入ったリーチ マイケルが9回のボールキャリーで攻撃の軸になった。後半、先にトライしたのは日本代表だった。12分、スクラムで相手の反則を誘い、PKからのタッチキックでトライライン直前のラインアウトを得る。ここからのサインプレーで、リーチ、キャプテンのLOワーナー・ディアンズがトライラインに迫り、最後はSH藤原忍のパスにPR竹内柊平が走り込んでトライ。竹内の背後にはローレンスとリーチがいて、ディフェンスをかく乱していた。李のゴールは決まらず、スコアは14-8となる。
後半に入って反則の少なくなった日本代表だが、15分にディフェンスラインのオフサイドを犯し、トライライン直前のオーストラリアのラインアウトからモールでトライを奪われる。スコアは、19-8。だが、日本代表もあきらめない。後半19分、ローレンスのグラバーキックを、オーストラリアがノックフォワード。そこで得たスクラムからの攻撃でラックからボールがこぼれると、藤原が素早く反応してボールを拾ってトライラインへ。直前で止められたが、FLベン・ガンターがサポートしてトライ。李がゴールを決めて19-15とした。
リポビタンDチャレンジカップ2025 ラグビー日本代表テストマッチ(10月25日)
【ハイライト動画】日本 vs. オーストラリア
後半28分には、全力でプレーし続けたリーチから、ティエナン・コストリーに交代。2人はフィールド上ですれ違う際、しっかりと抱き合った。新旧交代が進む日本代表の中で、信頼と尊敬がにじむ良いシーンだった。そして、ベンチに戻るリーチへの拍手はしばらく鳴りやまなかった。29分、江良がオーストラリアのPRトム・ロバートソンに見舞ったタックルは強烈。仰向けにした上で落球も誘った。その瞬間、観客席は熱く燃えあがった。その後も自陣からカウンターアタックを仕掛けたWTB石田吉平から抜け出し、つなぎのミスでボールを奪われたが、すぐにFLベン・ガンターが反応してタックル。一進一退の攻防を観客も固唾を飲んで見守った。結局、両者ともスコアできず試合終了。世界7位のオーストラリアを追い込んだものの勝利には届かなかった。
オーストラリアのジョー・シュミットヘッドコーチは、「日本はタフなチームでした。速いテンポで攻めたかったのですが、天候もあって、ダイレクトにプレーすることでプレッシャーをかけようとしました」と日本の粘り強さを称賛し、手堅く戦ったと話した。序盤の20分、規律が乱れたことをワーナー・ディアンズキャプテンは悔やんだ。しかし、戦略的キックの精度のミスほか攻撃面の精度の低さも勝利を逃した要因のように見えた。
ただ、トライライン直前のピンチを何度も防ぎ、失点を最小限に抑えたのは大きな自信になっただろう。獅子奮迅の活躍だったリーチ マイケルは言った。「このチームの可能性をやっと見せられたかなと思います。これからどんどん強くなると思います。4点差は勝ち切れる試合だったし、悔しい結果ですが、切り替えて(ヨーロッパ遠征に向けて)準備したいと思います」。アウェイでの4週連続の試合が待っているが、一戦ごとに成長する姿を見せてほしい。
文: 村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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