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矢崎由高(早稲田大学)
9月28日(日)、秩父宮ラグビー場でのナイターゲームは、早大が誇る才能、服部亮太と矢崎由高が躍動し、5,337人の観客を沸かせた。関東大学対抗戦A第2節の最終試合は、午後6時、立教大のキックオフで始まった。ボールを確保した早大は、今季の対抗戦初登場となったSO服部がいきなりロングタッチキックを披露した。自陣22mライン内から右足を振り抜くと、ボールは立教大陣に5mほど入ったところでタッチラインを割る。リーグワンでもなかなか見られない飛距離だ。その後も早大は、服部のロングキックによって、立教大を地域的に押し込んだ。
早大の先制トライは前半5分だった。立教大トライライン直前まで攻め込んだラックから出たボールを受けた服部が、ためを作りつつ、ディフェンダーの間に走り込んだ矢崎にパスを送ってトライエリアへ。12分にも、立教大陣中盤のラインアウトから左オープンに展開し、いったんはミスでボールがこぼれたが、服部がカバーして矢崎へ。矢崎はトライラインまで35mほどの距離から一気に加速すると、タックラーを1人、2人とかわして左コーナーにトライをあげた。ゴールは決まらず、10-0とリードする。
3本目のトライは前半22分だった。立教大トライライン直前の左ラインアウトからモールを組んで押し込み、相手の反則でモールが崩れると、ここから右オープンに展開。最後はCTB野中健吾キャプテンが右端のWTB田中健想(2年)に長いパスを送り、田中がハンドオフでタックラーを突き放しながら右コーナーに飛び込んだ。野中のゴールも決まって、17-0。29分には、立教大の自陣からの攻撃を止めてボールを奪い返し、服部の防御背後へのキックを追った矢崎が変則的にバウンドしたボールに合わせて走り込み、この日の3トライ目をあげた。スコアだけを見て行くとBK陣が目立つが、HO清水健伸(3年)、LO栗田文介(4年)らのFW陣がディフェンスを集めたからこそ、広いスペースでBK陣が勝負することができていた。
ラグビー 関東大学対抗戦2025(9月28日)
【ハイライト】早稲田大学 vs. 立教大学
立教大も縦に走り込んでくる早大の攻撃に対してはよくタックルしていたし、服部をダブルタックルで押し戻すシーンもあった。しかし、ボールを広いスペースに運ばれると、トライラインを簡単に明け渡してしまった。「外に展開させないくらい、(内側で)プレッシャーをかけられれば良かったのですが」と話したのは立教大の白石和輝キャプテン。早大の攻撃の圧力は「今季戦ったチームのなかで一番でした」という。立教大はもっとも決定力のあるFB大畑咲太(3年)が試合直前にコンディション不良で欠場することになり、大畑を軸に準備していたサインプレーなどが使えなくなった。その中で懸命に戦ったが、後半に入ると、早大がさらに攻撃の強度を上げ、矢崎、CTB黒川和音(4年)らが次々にトライを重ねた。
矢崎由高(早稲田大学)
終わってみれば、12トライをあげた早大が、立教大をノートライに抑える完勝だった。プレーヤー・オブ・ザ・マッチは、4トライをあげた矢崎由高。試合後、報道陣に囲まれた矢崎は、「いつもボールタッチを多くすることを心がけているので」と、積極的なアタックについて語ったが、「足が速くなったのでは?」という質問には、「(ナイター照明の)光のせいではないですか?」ととぼけて見せた。大田尾竜彦監督は、「一瞬一瞬の勝負をどれだけ積み重ねるかが大事だと話していました。リザーブで入った選手も含めて、キャプテン中心によくやったと思います。初戦より全体の精度は上がっています」と評価した。一方で、「もっとアタックできたはず」と引き締める言葉も忘れなかった。
リザーブから出場した選手の中には、2年ぶりの対抗戦復帰となったFL/NO8松沼寛治(3年)、早稲田佐賀高校卒の山下恵士朗(2年)も含まれていた。松沼は1年生から攻守に抜群の存在感があったが、怪我で離脱以降は満足な活躍ができていなかった。後半15分に先発のNO8粟飯原謙(4年)に代わって出場。無難にプレーした。彼の復帰はFW第三列の層をさらに厚くする。山下は2021年創部の早稲田佐賀の一期生。同校を卒業して早大に進学。初めて関東大学対抗戦に出場した選手となった。後半18分に矢崎に代わって投入され、瞬時の加速でタッチライン際を駆け上がるシーンもあり、今後の活躍が楽しみなスピードを披露した。早大にとって明るい材料の多い試合だった。早大は第3節で(10月11日)、初戦で明大を破った筑波大と対戦。立教大は第3節で慶大と対戦する。部史上初の大学選手権出場を目指す立教大としては負けられない戦いとなる。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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