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ラグビー コラム 2025年9月22日

【ハイライト動画あり】ラグビー日本代表、逆転優勝ならず。 前半の大量失点響き、6点差の惜敗

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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昨年準優勝の日本代表は「優勝」のみを見据えて勝ち上がってきた。決勝戦の相手は世界ランキング9位のフィジー代表である(日本は13位)。「アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ2025」(PNC)のファイナルは昨年と同じカードとなった。準決勝で活躍したFLベン・ガンター、WTB石田吉平、FBサム・グリーンが負傷離脱し、決勝戦の直前にはバックスの要であるCTBディラン・ライリーが急きょメンバーから外れるというアクシデントもあった。日本代表にとっては、選手層の厚さも含め真価が問われる戦いとなった。

開催地は、アメリカのユタ州ソルトレークシティーのアメリカ・ファースト・スタジアム。日本時間9月21日、10時35分、フィジーのキックオフで試合は始まった。日本代表は序盤から素早いテンポの攻撃でフィジーを翻弄し、ハイタックルの反則を誘う。前半5分、このPKからのタッチキックでフィジー陣トライライン直前のラインアウトを得ると、準備したサインプレーを披露する。HO江良颯がボールを投げ入れると、モールを組むと見せかけて、タッチライン際の狭いスペースにNO8ファカタヴァ アマトが走り込み、江良にパス。江良は「フィジーのカバーディフェンスが来たので、タッチラインの外に出されないように、内側に切れ込みました」と思い切ってトライラインに向かって突進。タックルをかいくぐって先制トライをあげた。難しい角度のゴールをSO李承信が決めて、7-0とリードする。

フィジーのFWは、1番のエロニ・マウィ(189cm、131kg)、3番メサケ・ドンゲ(180cm、122kg)、4番テモ・マヤナヴァヌア(197cm、120kg)ほかサイズの大きな選手が多かったが、日本代表は低くまとまったスクラムで対抗。フィジーの反則を誘うなど健闘した。前半18分には江良がトライラインに迫ったがここはわずかに届かず。直後に李がPGを決めて、10-0とリードする。

ラグビー パシフィックネーションズカップ2025(9月20日)

【決勝 ハイライト動画】日本 vs. フィジー

しかし、前半20分以降の日本代表は、フィジーの変幻自在のランとオフロードパスに失点することになる。李のPG直後のキックオフでフィジーが短く高いキックをあげて再獲得に成功し、LOメサケ・ヴォゼェヴォゼェがトライ。31分には日本代表が攻め込んだラックの横にこぼれたボールをフィジーに拾われ、次々にオフロードパスを決められてCTBイニア・ラブアヴォウにトライを許す。その後も35分、40分と連続トライを奪われてしまう。「フィジーの身体能力の高さを発揮させてしまった」。エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチの言葉通り、不用意なキックやミス、タックラー個人の飛び出しで、ディフェンスを破られるシーンが続いた。

後半の立ち上がりにもトライを奪われ、日本代表は33-10と突き放された。ただし、どのトライも日本代表は粘り強くタックルを繰り返した。トライに至ったのは、フィジーのパス能力の高さがあってこそで、あきらめずに追走する姿がその後の反撃を予感させた。後半7分、日本代表はWTB長田智希が右タッチライン際でタックラーをかわしながら前に出て、内側にサポートしたFB中楠一期にパス。中楠がトライラインを駆け抜ける。

これで33-17とすると、LOワーナー・ディアンズの激しいタックルで反則を誘うなど、フィジーにプレッシャーをかけ、20分にはラインアウトからのモールで江良がこの日2本目のトライ。33-24とすると、25分には李が約40mのPGを決めて33-27と1トライ1ゴールで逆転可能な点差に迫った。なおも攻め続けたが、フィジーの懸命のディフェンスの前に追加点は奪えなかった。それでも、スクラムは健闘し、速いテンポの攻撃でフィジーのディフェンスを慌てさせた。昨年の17-41の点差、内容と比べて日本代表の地力アップを感じる戦いだった。交代出場で池田悠希が初キャップを獲得している。

歓喜のフィジーは今大会3連覇を達成。世界ランキング9位の実力を示した。プレーヤー・オブ・ザ・マッチは2トライをあげたWTBチョチ・ナソヴァが受賞している。日本代表を全力プレーで引っ張ったキャプテンのワーナー・ディアンズは、「残念です。前半、トライをとられすぎました」と悔しそうに話した。手ごたえを感じる内容だったからこその表情だろう。

堅実なプレーでボールを繋いだ長田は淡々と試合を振り返った。「点は取られていましたが、戦えている感覚はありました。超速ラグビーにチャレンジし続けることが、ある程度はできました。1トライで追いつくところまで行きましたが、どんな相手ともこれくらいの差で戦うことが、成長につながると思います。ディフェンス面では、前に出ることと、コネクトのバランスは課題です。もちろん、一人一人のタックルスキルは磨かないといけないと思います」

 

2トライをあげた江良颯は報道陣の質問に次のように答えた。「日本代表としての誇りを持ってハードな練習をしてきました。自信もあった。勝てなかったのは悔しいです。(心がけたのは)自信を持ってプレーすること。恐れていたら100%の力は出ません。エディさんからも、フィジカルで勝ち続けろ!と言われました。そういうマインドセットだったから前に出られたと思います。桜のジャージーに恥じないプレー、子供達に夢を与えるようなプレーしないといけないと思っています」。力強い言葉だった。これからも世界の強豪を追い詰め、勝利し、子供たちに夢を与える日本代表であり続けてほしい。

文: 村上晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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