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ラグビー コラム 2025年9月15日

【ハイライト動画あり】天理大、チャレンジャーとしての80分完遂! 春に敗れた関大をゼロ封の快勝

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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2025年9月14日、東大阪市花園ラグビー場で「2025ムロオ関西大学ラグビーAリーグ」が開幕した。今季の関西リーグが混戦になると言われるのは、昨季の王者・天理大が春季トーナメントで昨季8位の関大に敗れたからだ。その後、天理大は部員2人が麻薬取締法違反の疑いで逮捕され、7月末までチームとしての活動停止となった。活動を再開した8月夏合宿では関東の上位チームにスクラムで押し込まれ、謹慎処分の小松節夫監督もリーグ開幕直前まで不在となり、準備不足が懸念されていた。

そして、迎えた開幕戦。相手は春に敗れた関大である。午後2時、関大FB堂免遙生(1年)のキックオフで試合は始まった。立ち上がりから天理大が猛攻を仕掛けるが、堅守速攻が持ち味の関大も粘り強いディフェンでピンチを脱し、SH嘉悦滉太(3年)の好タッチキックで天理大陣深く攻め込む。先制トライを奪おうと、連続攻撃を仕掛ける関大に対して、天理大はFL川越功喜(3年)らが激しいタックルを浴びせ続けた。王者の冠は脱ぎ捨て、ひたむきに前に出続けるチャレンジャーとしての戦いだった。

開始6分、トライラインまで10mを切ったあたりで天理大FLアリスター・サウララ(2年)がタックル。関大が落球すると、WTB平松麟太郎(4年)が素早く拾ってSO上ノ坊駿介(4年)にパスを送る。上ノ坊はしなやかなステップワークで、1人、2人とディフェンダーをかわして前進し、ハーフウェイライン付近で平松にボールをつなぎ、さらに平松は前に出ながらCTB山田晟大(2年)にパス。山田が先制トライをあげた。上ノ坊の個人技、平松の献身的な仕事が光るトライだった。

2つ目のトライは前半21分のことだ。FWの波状攻撃でトライラインに迫ると、1年生のWTBフコフカ・ルカスがタックルをものともせずトライエリアに飛び込んだ。前半27分、そのルカスがディフェンスで魅せた。関大FB堂免が関大陣10mライン付近で上ノ坊のロングパスをインターセプトして独走する。いったんは引き離されたように見えたルカスだが、あきらめずに追いかけ、トライライン直前で追いつき、堂免の右手を叩きノックフォワードを誘った。値千金のトライセービングタックルだった。

ラグビー 関西大学リーグ2025(9月14日)

【ハイライト動画】関西大学 vs. 天理大学

会心のタックルに思わず雄叫びをあげるルカスに、観客席のメンバー外の部員たちが応えた。この日のメンバー外の部員たちは比較的静かだった。いつもの組織だったスクラムの応援コールも封印。「謙虚に戦いたかった」と小松監督は言った。「一人一人が応援すればいいことですから」と、イベント的な応援はなく、自然な声援に抑えていたのだ。しかし、このときばかりは大歓声をあげた。

3つ目のトライは前半33分、SH朝倉達弥(4年)の技が光った。自陣10m付近のラックサイドでタックルをかわしながら、LO藤岡洸雅(4年)にパス、前に出た藤岡をすぐにサポートして抜け出し、大幅ゲインしたあとは2人のタックラーを引き付けながら、上ノ坊にバックフリップパス。卓越した個人技でトライをアシストした。前半は17-0というリードで折り返した天理大は、課題だったスクラムで圧力をかけ、素早く押し上げるディフェンスでスキのない戦いを続けた。

後半に入ると、天理大はボール争奪戦でさらに圧力をかけ、3分に朝倉がトライすると、10分には上ノ坊が自らあげたショートパントをキャッチして右コーナーにトライ。29-0と一気に突き放した。その後は上ノ坊のキックパスで、CTB山田、WTB平松らがトライを重ね、終わってみれば62-0という完勝。プレーヤー・オブ・ザ・マッチは、パス、キック、ラン、タックルと八面六臂の活躍だった上ノ坊駿介が受賞した。

試合後の記者会見。小松監督は改めて不祥事に関するお詫びをしたあと、「春のトーナメントで負けたこともあり、どこが相手であろうとチャレンジャーとしてディフェンスでプレッシャーをかけ続ける。そういう気持ちで臨みました」と話した。上ノ坊キャプテンも謙虚に語った。「春シーズンは不安しかなかったです。再スタートを切らせてもらえることになり、一試合一試合天理らしいラグビーをしようと言ってきました。相手にプレッシャーをかけ続けることができましたし、試合後、観客の皆さんに拍手をしてもらって嬉しく思いました」。

会見後、上ノ坊キャプテンは椅子から立ち上がれなかった。両足が痙攣したからだ。じっとしていても汗の出る蒸し暑さの中で、リーダーとして全力で戦い抜いた証だった。チャレンジャーとしての姿勢をシーズン最後まで貫けば、昨季よりもさらに強いチームになる可能性がある。そんなポテンシャルを感じさせる戦いだった。

一方、関大の佐藤監督は天理大のパフォーマンスを称えた。「8回はスコアできるところに入ったが、スコアできなかったことが敗因になった」と冷静に話した。昨年のリーグ戦で膝の靭帯断裂の重傷を負い、今季復帰の奥平一麿呂キャプテンは後半22分に登場。懸命にプレーしたが、流れは変えられなかった。「天理大は春からフィジカル、スピード感、すべて上がっていました。ディフェンスで力を出し切れていなかったのが敗因です。一人一人の責任を見直して、次からの試合に臨みたいです」。関大の今季の目標はリーグ5勝。その挑戦はまだ始まったばかりだ。

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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