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ラグビー コラム 2025年7月7日

【ハイライト動画あり】日本代表、ウェールズ代表から12年ぶり2度目の勝利。 リーチキャプテン、オールアウトの奮闘で若いチームをけん引。

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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試合終了まであと10秒。13,487人の観衆を飲み込んだスタジアムでカウントダウンが始まった。ファン、関係者の祈るような視線のなかで、日本代表は大切にボールをキープし、最後はSO李承信がボールをタッチラインの外に蹴り出した。ノーサイドのホイッスルが鳴った瞬間、キャプテンのリーチ マイケルは芝生に倒れ込んだまま両拳を天に突き上げた。それほどまでに、どうしても欲しい勝利だったのだ。

7月5日(土)、ミクニワールドスタジアム北九州で、リポビタンDチャレンジカップ2025 ラグビー日本代表テストマッチが開催された。ウェールズ国歌「ランド・オブ・マイ・ファーザーズ」、「君が代」ともに、合唱団の歌声に合わせて観客が大合唱。北九州市では2019年のラグビーワールドカップ日本大会の際、ウェールズが事前合宿をした縁があり、観客が両国国歌を斉唱するという和やかな空気が会場を包み込んだ。

テストマッチ(国代表同士の試合)17連敗中のウェールズは世界ランキングで過去最低の12位まで落ちている。13位の日本代表に勝って連敗を止めたい。一方、昨年からエディ・ジョーンズヘッドコーチが率いる日本代表はテストマッチの戦績が振るわず苦しい戦いが続いている。互いに負けられない試合は、午後2時、ウェールズのキックオフで始まった。フィールドには強い日差しが照り付け、猛暑のなかで死力を尽くす戦いになった。

先手を取ったのはウェールズだった。前半4分、日本がディフェンスラインのオフサイドを犯し、そのPKのタッチキックで得たラインアウトからの攻撃だった。モールを組むと見せかけて左サイドをNO8タウルペ・ファレタウが走り、CTBベン・トーマスがトライゾーンへ。モールを警戒していた日本の裏をかいて先制トライをあげた。その後、何度かウェールズに攻め込まれた日本だが、前半15分、CTBディラン・ライリーの好キックで陣地を進め、マイボールのラインアウトから準備していたサインプレーを披露する。

リポビタンDチャレンジカップ2025 ラグビー日本代表強化試合(7月5日)

【ハイライト動画】日本 vs. ウェールズ

HO原田衛がラインアウト後方にボールを投げ入れると、FLジャック・コーネルセンがキャッチし、LOワーナー・ディアンズが前列から後ろに回り込み、ボールを受けたワーナーは左に開いて立っていたSH藤原忍にパスを送る。藤原が少し前に出てディフェンスを引き付け、ダミーで走り込んだCTB中野将伍、ライリーの後ろを通して李にパス。李の内側に走り込んだWTB石田吉平が抜け出して外側に走り込んだFB松永拓朗がパスを受けて左中間にトライをあげた。ものの見事に決まったサインプレーに客席は大いに沸いた。

しかし、20分、日本は松永の負傷交代で入ったFB中楠一期がイエローカードを受ける。ウェールズのWTBジョシュ・アダムズがキックを追ってトライゾーンに走り込んだ際、競り合って手で故意にボールを外に叩き出したと判定されたのだ。これがペナルティートライとなって、スコアは7-14。22分には、スクラムから簡単なパス回しでトライを奪われ、7-19とリードを広げられた。しかし、日本がウェールズにスコアされたのは、ここまでだった。

中楠一期

後半に入ると、日本は粘り強いディフェンスでウェールズの猛攻に耐え、19分、連続攻撃から中楠がトライ。李が難しいゴールを決めて、14-19と迫る。24分、李がPGを追加して、17-19とし、30分には、ウェールズのトライライン直前のラインアウトでモールを組み、BKも参加して、最後は交代出場のWTBハラトア・ヴァイレアがトライ。李がこの日100%の成功率でゴールを決め、24-19と逆転した。

今季のチーム作りについて、ジョーンズHCは「昨季は容赦のないディフェンスができなかった。モンスターのようなメンタリティーでディフェンスしたい」と話していた。残り10分、日本代表はその言葉通りのディフェンスを続けた。何度も立ち上がってタックルにつぐタックルを繰り出す。先頭に立って前に出続けるリーチキャプテンの奮闘に涙腺が緩んだ人は多かっただろう。

李承信

残り2分はボールをキープ。コーネルセン、交代出場のFLベン・ガンター、そしてリーチらが何度もボールを持って相手にぶつかり、それをみんなでサポートしてボールを守った。観客席からのカウントダウンの声が響く中で、交代出場のSH北村瞬太郎からパスを受けた李がメインスタンドにボールを蹴り込んでノーサイド。12年ぶりのウェールズ戦勝利を成し遂げた。それは、1973年の初対戦から15試合目にして2度目の勝利だった。

 

試合後、インタビューに答えるのも難しいほどオールアウトしたリーチは言った。「勝ちました!皆さんの声援のおかげだと思います。このチーム、選手を誇りに思います」。ジョーンズHCは「後半、しっかり仕留めることができた」と安堵の表情で語った。「若いチームです。50キャップ以下の選手、初めてテストマッチに出た選手には自信のつくゲームになりました。この勝利で自信をもって、さらにハードワークを重ねることができる。そうすることによって、さらにチームは成長していきます」

PR紙森陽太、HO原田衛、PR竹内柊平のFW第一列はフル出場でセットプレーの軸になり、勝利に貢献した。交代出場の選手も機能した。しかし、前半はハンドリングエラーが多く、ボールキャリアが簡単にスティール(ジャッカル)でボールを奪われるシーンも多かった。ハイパントキャッチの精度の低さなど課題は多い。さらなる自信をつけるためには、これらの課題を修正し、次週の神戸での第2戦も勝利しなくてはいけない。ただ、北九州の地での勝利が世界のラグビー史に永遠に刻まれたことは紛れもない事実だ。日本代表チームの奮闘、それを支えたスタッフ、関係者、ファンの皆さんを改めて称え、祝福したい。

文: 村上晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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