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ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズの起源である1888年の遠征にちなんで名づけられた「1888カップ」は、4年に一度のツアー前の壮行試合として4年前の日本代表戦から始まった。6月20日(現地時間)、アイルランド共和国ダブリンのアビバ・スタジアムにて、2度目の1888カップが開催された。
世界ランキング5位のアルゼンチン代表ロス・プーマスのメンバーは、フランスのトップ14でプレーするCTBサンティアゴ・チョコバレス、WTBマテウス・カレーラスなど数名の主力を欠いていたが、勝利への執念を感じさせる気迫でライオンズに立ち向かった。日本時間の21日午前4時、試合はアルゼンチンのキックオフで始まった。立ち上がりからボールを大きく動かしながら攻めるアルゼンチンは、前半4分にSOトマス・アルボルノスのPGで先制する。
直後にライオンズは、トライライン直前のラインアウトからHOルーク・カーワン=ディッキーがボールをトライエリアに持ち込んだかに見えたが、映像判定でノックフォワードがあったとしてトライキャンセル。その後も攻勢に出たライオンズは、9分、SOフィン・スミスがPGを決めて、3-3とする。
前半11分、アルゼンチンはライオンズのディフェンスをブレイクダウンに集めて、BKに素早く展開してWTBイグナシオ・メンディがトライ。8-3とリードした。スクラムで優位に立つライオンズも反撃。19分、トライライン前のスクラムから連続攻撃を仕掛け、CTBバンディー・アキが右中間にトライ。フィン・スミスのゴールも決まって8-10と逆転した。
ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ2025 1888 Cup
【ハイライト動画】B&Iライオンズ vs. アルゼンチン
ライオンズはまだチームの完成度が低く、ミスも多い。アルゼンチンのアルボルノスが、25分、38分と2本のPGを決めて、14-10とする。1つめのセンセーショナルなトライは前半終了間際だった。ライオンズに攻め込まれたブレイクダウンでボールがこぼれ、これをFLファンマルティン・ゴンザレスが足で蹴ってターンオーバーに成功し、右タッチライン際でパスをつなぎ、最後はアルボルノスがトライエリアで待ち受けるリザーブの選手たちの方向にダイブ。トライ後のゴールも決めて、21-10とリードを広げた。
後半の序盤はアルゼンチンがボール争奪戦で反則を犯し、ライオンズがアルゼンチンのトライライン直前でのラインアウトを得る。ここからモールを形成して押し込むと、アルゼンチンのPRマイコ・ビバスがモールを崩したとして、ペナルティートライとなり、ビバスにはイエローカード(10分間の一時退場)が提示された。これでスコアは21-17。俄然盛り上がるアビバ・スタジアムの観客席。一人少ないロス・プーマスをライオンズが攻め立てる。13分、ライオンズはPRエリス・ゲンジの突破でチャンスを作り、交代したSHのトモス・ウィリアムズからLOタイグ・バーンへ抜群のタイミングでパスが通り、左中間にトライ。21-24と逆転に成功した。
やや疲れの見えるアルゼンチンは、少しずつディフェンスが甘くなり、ライオンズのWTBトミー・フリーマンの突破を許すなど、苦しい時間が続く。しかし、後半19分、2つ目のセンセーショナルなトライが飛び出した。自陣22mライン内からSHゴンサロ・ガルシアがハイパントを蹴り上げ、これを追ったWTBロドリゴ・イスグロがスーパーキャッチ。これを起点に展開すると、SOアルボルノスが相手のプレッシャーのなかで、キックを蹴ると見せて一気に抜け出し、パスをつないで相手陣に入ると、交代出場のCTBマティアス・モローニがインゴールへキック。こちらも交代出場のWTBサンティアゴ・コルデロが相手に競り勝ってボールを押さえ、逆転トライをあげた。
その後は疲れもあってか、互いに不用意な反則でチャンスをつぶし、そのまま試合終了。2005年の引き分けから20年、28-24でアルゼンチンが歴史的な勝利をあげた。プレーヤー・オブ・ザ・マッチは、1トライ、2ゴール、3PGの計18点をあげたSOトマス・アルボルノス。キャプテンのHOフリアン・モントーヤは、「未来のアルゼンチンラグビーにとって大きな勝利」とコメント。アルゼンチンラグビー協会の公式ホームページは、「28-24というスコアは、アルゼンチンのスポーツの記憶に永遠に刻まれるだろう」と記した。敗れたイングランドのLOマロ・イトジェキャプテンは厳しい表情だったが、「ここから学んで、前進したい」と前向きに話した。ライオンズは連合軍であり、遠征を通じてコンビネーションを高めていく。オーストラリア代表との第1テストマッチは、7月19日、どんなチームに仕上がっていくのか楽しみだ。
文: 村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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