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立川理道
実力差を見せつけられる敗戦だった。アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ2024決勝戦は、9月21日(土)、東大阪市花園ラグビー場で行われ、フィジー代表が41-17という快勝で同大会6度目の優勝を飾った。日本代表は、カナダ、アメリカ、サモアに3連勝で決勝に進出したが、世界ランキング10位の壁に跳ね返された。エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ(HC)は、試合後の会見で「セットピース(スクラム、ラインアウト)、ブレイクダウンでのコンテスト、空中戦、いずれもフィジーに勝ることができませんでした」と力不足を認めた。
ディラン・ライリー
花園に集った観客は、14,437人。準決勝でサモア代表を破った日本代表の好パフォーマンスを見て、観戦を決めた人も多かっただろう。午後7時9分、世界のトップレフリーの一人、ニック・ベリーの笛で試合は始まった。そのボールを日本代表FB李承信がフェアキャッチ。キックオフのボールをフェアキャッチできるルールは、パシフィックネーションズカップ(PNC)で試験的に導入されているものだ。3連勝の戦いと同様に日本代表は序盤からスピーディーにボールを動かし、ディフェンスで圧力をかけた。前半7分、フィジーの反則を誘い、李が先制PGに成功。3分後にフィジーSOケレブ・マンツにPGを返されたが、その後もボールを素早く動かし、20分にはCTBディラン・ライリーが圧巻の個人技を披露した。
今大会絶好調のライリーは、フィジー陣に数メートル入った右中間のスクラムからの攻撃でパスを受けると、ハーフウェイライン付近から右に左にステップを切りながらタックラーをかわし、防御背後にショートパントを蹴って追いかけ、そのボールを確保してトライをあげた。フィジー代表をも翻弄する個人技にスタンドは大いに沸いた。今大会100%のゴール成功率を誇る李がゴールを決めて、10-3。その後は、ほんの少しでもタックルが甘くなれば、スピードランナー揃いのフィジーにトライを奪われる緊張感のなかで我慢のディフェンスが続いた。
アサヒスーパードライ ラグビーパシフィックネーションズカップ 2024 決勝戦
【ハイライト動画】フィジー vs. 日本
痛恨のトライを奪われたのは前半32分だ。相手のパスをWTBマロ・ツイタマがインターセプトして前進し、フィジー陣中盤でチャンスを得る。一気にフィジー陣深く入ろうと、SO立川理道が防御裏へ地面を這うキックを蹴ったところ、タックラーの足に当たってボールは日本代表陣方向へ。転々とするボールをWTBヴアテ・カラワレヴが確保してそのままトライ。マンツのゴールも決まって10-10の同点となる。37分、HO原田衛が相手の顔に肩がヒットする危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場)となり、さらに我慢の展開が続く。ここは、PR竹内柊平が急きょスローイングの代役を務めるなどしてしのぎハーフタイムを迎えた。
ワーナー・ディアンズ
前半の日本代表は、フィジー代表の強力スクラムに対して低く結束した姿勢で耐え、ラインアウトもワーナー・ディアンズが2度のスチールに成功するなど健闘していたが、後半はフィジカルバトルでフィジーに圧力を受け、徐々に体力を削られた。後半16分、マンツにPGを決められて13-10でリードされると、自陣からの攻撃中にハンドリングエラー。19分、フィジー代表の交代出場のWTBポニパテ・ロンガニマシにトライを奪われる。その後もフィジー代表の出足鋭いディフェンスに圧力を受け、パスを後逸するようなミスが続いた。強いランナーが次々に走り込んでくるフィジー代表の攻撃にディフェンスを集められて、外のスペースを攻略されるなど、次第に足がついていかなくなり、次々にトライを奪われる。あっというまにスコアは、41-10になった。
ケレブ・マンツ
大差になって席を立つ観客も多かったが、後半38分、ツイタマがトライし、最後まで見守ってくれた観客を喜ばせた。プレーヤー・オブ・ザ・マッチは、陣地を大きく返すロングタッチキックほか、卓越したスキルで日本代表を苦しめたケレブ・マンツが受賞した。
試合終了の笛が鳴り響くと、フィジー代表の多くの選手が芝生にあおむけに倒れ込んだ。その姿は、国の誇りを背負って戦うテストマッチのタフさを示していた。フィジカルも個々のスキルも高いフィジーの選手たちが、まさに「ぶっ倒れるまで」走り続けて日本代表に勝ったのである。彼らを上回るために日本代表は途方もない努力を続けなければならない。それを選手が体感したことは大きな価値があった。唯一のトライをあげたライリーは言った。「残念ですが、力不足です。(強くなるためには)年間を通じて強い相手と戦っていくしかない」。秋には、ニュージーランド、フランス、ウルグアイ、イングランドとの戦いが待っている。ジョーンズHCは「次はいかにニュージーランドに勝つかを考えたい。戦術もスマートに戦う。史上初めてニュージーランドに勝つ日本代表になりたい」と一戦一戦全力で戦うことを誓った。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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