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ディラン・ライリー
汗がしたたり落ちる蒸し暑さのなかで、日本代表が大切な勝利をものにした。9月7日(土)、アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ2024プールB、日本代表対アメリカ代表は埼玉県の熊谷ラグビー場で行われた。勝てば1位通過が決まり、準決勝でプールA2位のサモア代表と対戦。負ければ2位通過となりプールA1位のフィジーと対戦することが決まる。スタジアムには、10,677人の観客が集った。
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午後7時5分、日本代表のテストマッチでは初となる女性レフリー、ホリー・デイビッドソン(スコットランド協会)の笛で試合は始まった。日本代表SO李承信のキックオをアメリカ代表がキャッチミス。日本代表ボールのスクラムとなるが、そこからの攻撃で日本代表もノックオン。全身から滴り落ちる汗が試合を難しいものにすることを感じさせる立ち上がりだった。
藤原忍
前半5分、李のPGで日本代表が先制する。その後も、SH藤原忍を軸に速いテンポでボールを動かすが、タッチライン際で待つ選手へのロングパスがスローフォワードになるなど決定機を作り出すことができない。胸のすくトライが決まったのは、前半15分のことだ。アメリカ代表陣10m付近左のラインアウトから「ラインアウトもスピード勝負」とワーナー・ディアンズが話していた通り、並ぶやいなや投げ入れ、右オープンに展開する。李が防御背後にショートパントを上げ、これをCTBディラン・ライリーが両手を頭上に目いっぱいに伸ばしてキャッチし、すぐに左へパス。サポートしたCTBニコラス・マクカランがインゴールに駆け込む。これぞ「超速」のトライだった。
直後のキックオフでは自陣から日本代表が攻めるも、LOサナイラ・ワクァがノックオン。そのスクラムで反則を取られると、アイルランド育ちのアメリカ代表SOルーク・カーティーにPGを決められる。スコアは、10-3。その後はディフェンスで圧力をかけ、FB山沢拓也がアメリカ代表陣深くに好キックを蹴り込み、WTBジョネ・ナイカブラが追いかけて相手キックをチャージするなど地域獲得でも優位に立った。23分、相手ゴール前でスクラムを得ると、密集近くを何度も攻め、最後はワクァが力強くボールをインゴールに持ち込み、李のゴールも決まって、17-3とした。
アサヒスーパードライ ラグビーパシフィックネーションズカップ 2024
【ハイライト動画】日本 vs. アメリカ
この得点後は日本代表の反則が続いた。得点した後に自陣でミス、反則から失点するパターンは早急に修正しなくてはいけない。30分、日本代表ゴール前にラインアウトからのモールでアメリカ代表NO8ジェイムセン・ファナーナ・ショルツにトライを奪われる。スコアは、17-10。しかし、日本代表は流れを完全には渡さなかった。前半38分、負傷のHO坂手淳史に代わって原田衛が出場。SH藤原忍がPKからの速攻でチャンスを作ると、原田が右コーナーにボールを押さえた。「ごっつぁんトライでした。あの時間帯の出場は初めてで緊張しましたが、トライで緊張がほぐれました」。
立川理道
原田のトライで24-10とリードを広げると、後半5分、ライリーがスピードの緩急とステップで自陣からインゴールまで走り抜け、31-10と突き放す。11分、アメリカ代表WTBネイト・オウグスバーガーにトライを許した後、日本代表は山沢との入替えでベテランの立川理道を投入。立川は冷静に声をかけて流れの悪くなったチームを落ち着かせた。オウグスバーガーの好走からもう1トライ追加されたが、22分、李がPGを決めて34-24とすると、相手陣22m付近のラインアウトからSOに入った立川がディフェンスラインを突破。ライリー、WTBマロ・ツイタマとつないでダメ押しトライをあげる。その後は粘り強いディフェンスと、防御背後へのキックを巧みに使いながら確実に勝利をものにした。
「フィジカルの強いアメリカに対して、自分たちから仕掛けるメンタリティーで80分戦いました。ホームのテストマッチで勝つことには意義があり、嬉しく思います」(立川理道)。エディー・ジョーンズヘッドコーチは、アメリカ代表を称賛した上で、「きょうの日本代表は簡単にボールを渡しすぎていた。汗でボールが滑りやすい環境では、ハードなボールキャリーなどシンプルにプレーしなくてはいけない。課題はあるが、選手たちは試合の中で環境に適応していった」と一定の評価をした。
カナダ代表、アメリカ代表に連勝し、準決勝に進出した日本代表は、9月15日、サモア代表と対戦する。サモアはカナダ、アメリカよりもスピードがあり、スキルフルで得点力がある。さらにプレーの精度を上げなければ勝つことは難しい。このまま上昇曲線を描き、3連勝となるのか。その戦いぶりに注目したい。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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