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日本代表にとって確実に勝たなければならない大切な一戦だ。アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ2024は、プール戦の最終節に入る。初戦でカナダ代表を下した日本代表は、9月7日(土)、埼玉県の熊谷ラグビー場で同じくカナダ代表を下したアメリカ代表とプールB1位の座をかけて戦う。同大会は参加6チームがA(フィジー、サモア、トンガ)、B(日本、アメリカ、カナダ)2つのプールに分かれて総当たり戦を行い、プール1,2位が準決勝。3位が5・6位決定戦に進出する方式だ。
エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、この試合に向けて次のように語った。「アメリカ代表戦に向けて、とてもよい準備ができています。とくにディフェンス面を精査しました。自信を持って戦います。アメリカはタフなチームで、キックを多用し、ブレイクダウンにも激しくプレッシャーをかけてくるでしょう」。そして、選手のパフォーマンスで見てみたいポイントについて、次の3点をあげた。1=カナダ戦では出し切れなかったフィジカル面の強さを出す、2=ディフェンス面でのハードワーク、3=厳しい局面でのチームとしての対応力。これはそのままカナダ代表戦で出た課題でもある。アタック時にハンドリングエラーが多発した点については、「若い選手は自らの感情に左右されることがあり、それは課題だが、試合で学ぶしかないもの」と成長中であることを強調した。
戦い方については、「日本代表が世界と差をつけることができるのは、集団的なスピードであると信じています」と、ぶれない姿勢を見せ、アメリカ代表戦でもスピーディーにボールを動かし続けたいと語った。ただし、「蒸し暑く汗をかきやすい環境で、ときにはスローに、パスミスを減らす攻撃選択も必要になる」と、テンポアップだけに固執しない姿勢も見せた。
日本代表の試合登録メンバーはカナダ代表戦から先発で1名の変更。FBは矢崎由高に代わって山沢拓也が入る。スピードあるランが魅力の矢崎に対して、山沢はキック、パスのスキルの高さに加えて、ディフェンスのいないスペースを巧みにつく戦術眼にも長けており、攻撃のバリエーションは増えるだろう。アメリカ代表の大きなFW選手を敗走させるには、山沢の正確なキックが奏功するはずだ。
日本代表とアメリカ代表の対戦成績は過去24戦して10勝13敗1分けと日本が負け越しているが、直近の10試合では日本が7勝3敗と大きく勝ち越している。今大会の両チームのカナダ代表戦での比較では、日本代表は55-28、アメリカ代表は28-15で勝利。攻撃のラックスピードは、日本代表が平均2.42秒に対して、アメリカ代表は3.67秒で、早いテンポという意味では日本代表が圧倒している。
インプレー中のキック数はアメリカ代表が27回で日本代表が23回。アメリカ代表がキックを多用するチームであることが裏付けられている。アメリカ代表のメンバーでは、キャプテンのLOグレッグ・ピーターソンが身長206cm、体重125kgとサイズがあり、両PRのジャック・イスカロー、アレックス・モーガンはともに122kgと重いFW陣だ。ゴール前のパワープレーは要注意で、いかに日本のゴール前でプレーさせないかが勝つためには重要になる。SHルーベン・ダハースは南アフリカ生まれで、同国のチーターズ、イングランドのサラセンズでのプレー経験があり、SOルーク・カーティーはアイルランド出身で2021年にアメリカ代表デビューしている。このHB団の判断力、高いスキルは要注目だろう。
「ローマは一日にしてならず」。エディー・ジョーンズヘッドコーチは2027年のラグビーワールドカップに向けて、時間をかけて「世界で一番の超速ラグビーを目指す」と言った。しかし、テストマッチは結果がすべてでもある。チームを成長させながら、勝利を積み重ねる。難しい強化だが、パシフィックネーションズカップは優勝を争うチャンピオンシップだ。日本ラグビー全体をひっぱる代表チームとして、応援し続けるファンを喜ばせてもらいたい。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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