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ディラン・ライリー
ハードワークを続けてきた選手たちにとって、厳しい現実を突きつけられる戦いだった。リポビタンDチャレンジカップ2024の日本代表対イタリア代表は、7月21日、札幌ドームに17,411人の観衆を集めて行われた。観客席には、FLリーチ マイケルの母校・札幌山の手高校の生徒たち、北海道芦別市出身のSH小山大輝の家族も含まれていた。外気温は30度を超えていたが、札幌ドームは21度に設定され、好コンディションの中での戦いとなった。
パオロ・ガルビージ
午後2時5分、イタリアSOパオロ・ガルビージのキックオフで試合は始まった。序盤戦はキックによる地域獲得でイタリアが優位に立つ。前半3分、イタリアSHマルティン・パジェレロが直線距離で約50mのロングPGを決めて先制。直後のキックオフでは、バジェレロがラックの後ろからハーフェウイラインを越えるロングタッチキックで陣地を進めた。開始5分の攻防でイタリアのキック力が際立ち、キックでの地域獲得に関してはその後も日本代表は劣勢となる。
攻撃に関してイタリアの成熟度を見せつけられたのが前半8分のトライだ。日本代表陣中盤右のラインアウトからのアタックだった。まずはフィールド中央にFWの選手を2度縦に走り込ませる。そこでできたラックの右側に3人を走り込ませるが、これは囮で、同時に左方向に6人が一気に回り込んだ。数的優位を作って左タッチライン際をWTBヤコポ・トゥルッラが大きくゲイン。ここから右オープンに展開し、パスは乱れたものの、ラックを作った後、フロントラインの後ろの選手にパスをまわし、最後は決定力あるFBアンジェ・カプオッツォがワンステップでタックラーを抜き去ってインゴールに駆け込んだ。15人がそれぞれの役割を遂行する見事なトライだった。
序盤でチームの完成度の差を見せつけられたわけだが、日本代表も連続攻撃を仕掛ける。しかし、イタリアのディフェンスの圧力がすさまじく、日本代表はテンポよくボールが出せない。13分には自ら持ち込んだラックのこぼれ球をイタリアFLロス・ヴィンセントに拾われ、最後はSHパジェレロにトライを奪われる。その後、ラインアウトからのモールで2度、3度とトライを狙ったが、最後はハンドリングエラーでチャンスを逸した。前半35分、カプオッツォのカウンターアタックでディフェンスを崩され、LOアンドレア・ザンボニンにインゴールに飛び込まれ、24-0となる。
リポビタンDチャレンジカップ2024 ラグビー日本代表テストマッチ
【ハイライト動画】日本 vs. イタリア
ようやくスタジアムが総立ちになったのは前半終了間際だった。ゴールラインを背に守っていた日本代表は、相手のミスボールをFB矢崎由高が拾ってすぐに左へロングパス。CTBサミソニ・トゥアが自陣22mラインを越え、サポートしたCTBディラン・ライリーにつなぐと、ライリーはバッキングアップのディフェンダーを置き去りにして約60mを駆け抜けてトライ。観客を沸かせた。
藤原忍
後半に入ると、日本代表はLOサナイラ・ワクァ、SH藤原忍というアグレッシブに前に出る選手を投入。前半2分、ライリーが相手のパスをインターセプトして独走トライして24-12と点差を詰めると、ベテランのHO坂手淳史、インパクトプレーヤーのNO8テビタ・タタフらを次々に投入して流れをつかもうとした。しかし、ここでもSHパジェレロにハーフウェイライン付近から2本のPGを決められ、スコアは、30-14。反撃ムードはしぼみ、その後も2トライを追加されて敗れた。
後半35分、日本代表FLファウルア・マキシがトライしたかに見えたが、ボールを押さえる瞬間にイタリアのCTBトンマーゾ・メノンチェッロに手を叩かれてノックオン。スコアを詰めることはできなかった。「選手たちは、けっしてあきらめなかった」(イタリア代表ゴンサロ・ケサダヘッドコーチ)。ニュージーランド、サモア、トンガ、日本とタフなツアーの最終戦である。疲れているはずの選手たちが懸命に戦う姿に指揮官は感無量の表情だった。準備された攻撃の精度、キック戦略、ディフェンスの圧力ほか、さまざまな面でイタリアから学ぶべき点が多かったが、最後まであきらめずに責任を果たす姿勢はもっとも学ぶべきところだったのかもしれない。
エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、「これが実力です」と、穏やかな表情で話した。経験の浅い選手を思い切って起用しているのだから、現実を受け止めるしかない。毎試合経験を積み上げ、必ず這い上がって見せるという気持ちも強いだろう。つかの間の休息の後、日本代表は、カナダ、アメリカ、トンガ、サモア、フィジーが参加するパシフィックネーションズカップに臨む。初戦は8月26日(日本時間朝6時)のカナダ戦だ。与えられたことを遂行するだけではなく、相手のいないスペースを思い切って攻め、トライして喜ぶ元気一杯の日本代表選手たちの姿が見たいものだ。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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